マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

逃げだした愛人【ハーレクイン・セレクト版】

逃げだした愛人【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ジュリア・ジェイムズ(Julia James)
 十代のころに初めてミルズ・アンド・ブーンのロマンスを読み、それ以来の大ファン。ロマンスの舞台として理想的な地中海地方、そしてイギリスの田園が大好きで、とくに歴史ある城やコテージに惹かれるという。趣味はウォーキング、ガーデニング、刺繍、お菓子作りなど。現在は家族とイギリスに在住。

解説

ロンドンの玩具店で、アンは驚きのあまり言葉を失った。4年前に手放した、唯一の肉親である幼い甥とでくわしたのだ。甥は姉とギリシア財閥の次男との間に生まれた子で、生後まもなく両親が事故死したため、アンが引き取った。ところがある日突然、財閥の長男ニコスが訪ねてきて、百万ポンドの小切手を置くと、強引に甥を連れ去ったのだった。二度と会わない約束だったけれど、こんな形で再会するなんて。数日後、またしてもニコスが突然やってきて、厳めしい顔でアンに告げた。「一緒にギリシアへ来てくれ」甥だけでなく、今度は私まで強引に連れ去ろうというの?

■ハーレクイン・ロマンスの王道である、純粋ヒロインと傲慢ヒーローのロマンス。J・ジェイムズはそこに自身の個性を巧みに織り込んで、独特の作風を編みだしました。まさに癖になる1作です!
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 女性の体なら無数に見てきているはずなのに、どうやらニコスはひとりひとりを入念に観察するのが好きらしい。今も彼は、両腕を首の後ろに組んで顔をわずかに上げ、アンを観察していた。
 アンはニコスの視線を無視しようとしたが、できなかった。彼と目を合わせないよう努めながら、アリの浮き輪を外し、小さな体をタオルでふいた。アリはギリシア語でニコスに話しかけながら、砂の城の制作に戻った。アンは自分の体をふきながら、かがんでビーチバッグから櫛を取りだし、濡れた髪をとかした。
 ニコスは体を起こして、アンをじっと見ている。無視しようとしたが、できなかった。彼は脚さえ美しい、とアンはうっとりした。美しい曲線を描く、しなやかな脚。アンは視線をそらそうとしたが、ニコスには気づかれていた。彼はいきなり立ちあがってアンに歩み寄ると、アンが抵抗する間もなく櫛を奪い取り、髪をとかし始めた。
 反射的に身を引こうとしたアンに、ニコスはぴしゃりと言った。
「じっとしていたまえ」彼女の腕をつかんだ瞬間、アンがびくっとした。ニコスは眉をひそめて、アンの髪を持ちあげ、その下にあるあざを見た。
「どうしたんだ?」
「運転手のせいよ。ジープの手すりにぶつけたの」アンはそっけなく答えた。
 ニコスはギリシア語で、あまり上品でないらしい言葉を吐いた。「すまない。気づかなかった」ニコスは英語に戻して言った。
 アンは肩をすくめた。「もう大丈夫よ。櫛を返して」
 彼女の言葉を無視して、ニコスはアンの肩を指先でそっと撫でた。
「シルクのような肌だ」ニコスの低い声には親密な響きがこもっていた。
 彼に触れられ、アンは身を震わせた。もちろん、寒いわけではない。むしろ体は熱を帯びていた。
 二人はじっと見つめ合った。探るような黒い目と、問いかけるような灰色の目がぶつかる。それからニコスはゆっくりと顔を下げていった。
 肩に触れた彼の唇はベルベットのように柔らかく、アンの心臓は今にも止まりそうだった。頭のどこかでは、ニコスから離れ、悲鳴をあげるべきだとわかっていた。彼の分別のない行為を今すぐやめさせるべきだ。
 しかし、アンにはできなかった。彼女にできるのは、そこにじっとしていることだけだった。手からも脚からも力が抜け、ただ肩に触れる柔らかなニコスの唇を感じていた。彼が唇を開き、口の中のぬくもりが肌に伝わってくる。彼の唇は愛撫さながらにゆっくりと動いた。アンの胸に喜びがあふれだす。ニコスはおもむろに顔を上げ、背後から両膝で挟むようにしてアンを抱き寄せた。それから再び彼女の髪を櫛ですき始めた。
 アンは、周囲の空気が熱く、濃密になった気がした。腰まである長い髪を丹念にとかしてもらううちに、彼女は眠気を覚えた。ぼんやりした意識の中で、アリが城をつくるのに飽きて、岩場に向かうのが見える。海の生きものでも捕りに行くのだろう。アンの背後では、もうひとりのセアキス家の男性が彼女を誘惑していた。
 紛れもなく、ニコスのしているのはそういうことだった。髪がきれいになったあとも、彼はギリシア語で低くつぶやきながら、一定のリズムで髪をとかしている。何を言っているのかはわからない。どんなにアンが欲しいか、体がどんなに彼女を欲しているかを熱心に語っているのかもしれない。
 もしアリが岩場で遊んでいなければ、今すぐにでもニコスはアンを押し倒して邪魔な水着をはぎ取り、肌と肌をじかに触れ合わせていただろう。柔らかな胸のふくらみを手のひらで包みこみ、その頂を硬くさせて、アンが泣き声をもらすまで愛撫したに違いない。さらに手を下腹部へと移動させ、脚の付け根を探り、至福の喜びへと通じる道を発見する。アンは興奮して身を反らし、首筋にキスを受けて、身も心も彼のものに……。
 あらぬ想像にアンは体の奥が熱くなるのを感じた。胸が張りつめ、濡れた水着の下で頂が硬くなる。櫛の動きに加え、ニコスのささやき声を聞いているうちに、アンは体が溶けてしまいそうな感覚に襲われた。
 視野の隅で、アリが岩場のてっぺんまで登り、うれしそうに手を振るのが見えた。次の瞬間、アリがよろめき、両手をばたばたさせて岩場から落ちそうになった。
 アンははっと目を見開いた。無我夢中でニコスの脚の間から飛びだし、岩場へ駆け寄る。そしてアリに向かって手を差しだし、あえぎながら小さな体を抱きしめた。
「よかった。大丈夫よ」
 アンは安堵のあまり腕から力が抜け、アリが滑り落ちそうになったが、ニコスの力強い腕がアリを受け止めた。アリはおびえ、おじの胸にしがみついた。ニコスは早口のギリシア語で甥をなだめた。
 泣いているアリをニコスはそっと敷物に下ろした。アンはアリにけががないか調べたが、ふくらはぎにすり傷が見られた程度だった。アンとニコスになだめられたアリは、ポテトチップのおやつをもらうと、すっかり機嫌を直した。
「ティナが絆創膏を貼ってくれるよね?」アリはすり傷を見て言った。
「その必要はないわ。血は出ていないもの」アンは答えた。
「でも、こすると血が出るよ」アリは言い返し、実際にやってみせた。
 アンは顔をそむけた。その拍子にニコスと目が合い、二人は同じように苦笑した。
「いけない子だ」
 ニコスにたしなめられると、アリはいかにもうれしそうに笑った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。