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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ スペシャル

あなたが見えなくて

あなたが見えなくて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツスペシャル
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・パーマー(Diana Palmer)
 シリーズロマンスの世界で今もっとも売れている作家の一人。総発行部数は4200万部を超え、ニューヨークタイムズを含む各紙のベストセラーリストにもたびたび登場。かつて新聞記者として締め切りに追われる多忙な毎日を経験したことから、今も精力的に執筆を続けている。ジョージア州在住。大の親日家で、日本の言葉と文化を学んでいる。家族は夫と息子の三人。

解説

年上紳士に恋した寄る辺のない娘。でも、彼の心は難攻不落で……。

1900年アトランタ。二十歳のクレアは自動車整備工の叔父を手伝い、全身すすだらけになりながらも、毎日楽しく暮らしていた。だがある日、最愛の叔父が急死し、彼女は天涯孤独になってしまった。生きるよすがを失った不安と悲しみに押し潰されそうになっていると、かねてより慕う裕福な銀行家のジョンから結婚を申し込まれた。突然の申し出に驚くとともに胸を高鳴らせるクレアだったが、ほどなく、ジョンのひどい仕打ちに打ちのめされる――この結婚は、今は彼の上司の妻である元婚約者との噂を避けるための見せかけにすぎないことを、露骨に冷淡な態度で示されたのだ。しかも彼は、美しき元婚約者にいまだに想いを寄せているようで……。

■北米ロマンス界の最重鎮がつづる、19世紀末のアメリカが舞台の“ライトヒストリカル”をお贈りいたします。好感度・共感度の高いヒロインを筆頭に、個性豊かな脇役たちが物語に彩りを添えます。当時の上流社会も垣間見ることができ、読み応え充分の秀作です!

抄録

 背後でドアが開いて閉じる音がした。応接間のざわめきが遠のき、足音が近づいてくる。鋼のような手がぐいと腕をつかんで彼女を振り向かせ、つぎの瞬間、彼女はちくちくする服の生地にぎゅっと押しつけられていた。力強く温かな腕がしっかりと体を抱きしめる。耳もとで響く、規則的なたのもしい鼓動は、安らぎを与えてくれた。彼女はエキゾチックなコロンの香りを吸いこみ、なぐさめを受け入れた。父母が亡くなったときも、ちょうどこんなふうに叔父が抱きしめてくれた。でもそれは、もうずいぶん昔のことだ。これまでの人生で、クレアが人からなぐさめをもらったことはほとんどない。
「かわいそうに」ジョンは耳もとでそっとささやいた。彼の手がそっとうなじをなで、彼女の心を静めていく。「そう、それでいい。悲しみが和らぐまで泣くんだ。もっとこっちへおいで」彼の腕に力が加わり、彼女をぴったり抱き寄せた。
 こんなにも優しい彼の声は、これまで聞いたことがなかった。それはなぐさめを与えると同時に、心をときめかせた。クレアはさらに身を寄せて、愛する男の腕のなかで悲しみと恐れと孤独を解き放ち、心の赴くままに涙を流しつづけた。彼を駆り立てたものが単なる哀れみであったとしても、その腕にこんなふうにしっかり抱かれるのはたまらなく心地よかった。
 ハンカチが目もとにあてがわれた。彼女はそれを受け取って、涙をぬぐい、はなをかんだ。ジョンとこうしていると、自分が小さくたよりなく思えた。背が高くたくましい彼の体が自分の体に寄せられているその感じが、クレアは好きだった。
 彼女はゆっくりと、顔を上げずに、彼から体を離した。「ありがとう」彼女は鼻をぐずつかせながら言った。「どうして敵になぐさめを与える気になったのか教えてもらえる?」
「罪の意識のせいかな」彼はかすかな笑みを浮かべた。「それにぼくは敵じゃない。きみにあんな口のききかたをすべきじゃなかった。それでなくても、きょうはきみにとってつらい一日だったんだから」
 クレアはジョンを見あげ、「その点は確かよ」と腹立たしげに言った。
 彼女の険しい目と青白い顔を、ジョンはしげしげと見つめた。「きみは疲れている。よく眠れるよう医者に薬をもらおう」
「あなたの助言は必要ないわ。これまで身近な人を失った経験なんて、あなたにはないんでしょうし」クレアは切なげに言った。
 ジョンの目が暗く燃えあがった。彼は弟たちのことを思い出していた。冷たい海で必死で遺体をさがしたこと、彼らの死を父親に告げたときの苦悶を。「それはきみのまちがいだな」彼はぶっきらぼうにそう言って、つらい記憶を振り払った。「でも喪失は人生の一部だからね。誰もがそれに耐えることを学ばなくてはならないんだよ」
 クレアはハンカチを握りしめた。「叔父はわたしにとってすべてだったの」彼女は彼の目を見あげた。「叔父がいなかったら、わたしは孤児院へ送られていたのよ。州の施設へ」彼女は肩をすくめた。「なのに、ちゃんとさよならを言うこともできなかった。あっという間のことだったから」ふたたび涙があふれてきた。それは熱く、肌をちくちくさせた。
 ジョンは、彼女の顎をそっと上へ持ちあげた。「死は終わりではない、始まりなんだ。自分を苦しめてはいけない。まだ先は長いんだからね」
「悲しみを乗り越えるには、時間が必要よ」クレアは言った。
「もちろんそうだね」ジョンは、彼女の額からほつれ毛をかきあげた。そして、顔についていたグリースの汚れにふと目を留め、彼女の手からハンカチを取りあげると、その汚れをぬぐった。「グリースの汚れに、泥だらけのスカートか。きみにはお守りが必要だな、クレア」
「やめて」クレアはそうつぶやいて、ハンカチをひったくった。
 口もとにからかうような笑みを浮かべて、ジョンは首を振った。「きみはちっとも成長していないね。ウィルは自動車のエンジンのことを教えるより、きみを若い男に紹介するなりパーティーに連れていくなりすべきだったんだ。このままだといまに、グリースまみれのオールドミスになってしまうぞ」
「男の奴隷になるよりましよ!」クレアはすばやくやり返した。「わたし、結婚する気はさらさらありませんから」
 ジョンはおかしそうに眉を上げた。「ぼくとでもだめかい?」そう言って、大仰に憤慨してみせ、真っ赤になったクレアを見て笑みを浮かべた。
「ええ」彼女は堅苦しく答えた。「あなたとでも」そして、いつもの茶目っ気を発揮して付け加えた。「こんなうぬぼれ屋はまっぴらよ。それに、わたしはあなたにはもったいないもの」
 ジョンは静かに笑った。「その舌はまるでナイフだな」彼はゆっくり息を吸いこむと、彼女の頬を軽くたたいた。「きみは大丈夫だ、クレア。すぐにしおれるスミレの花とはちがうからね。でも助けが必要なときは、ぼくのところへおいで。ウィルは友達だった。きみもそうだ。きみが助けてくれる人もなくひとりぼっちでいると思うとたまらないよ。特に家が売られるとなるとね」
 クレアの顔に漠たる恐怖の色が浮かんだ。その理由はジョンにもすぐにわかった。
「わたし、本当に無一文になるのね?」彼女は唐突にそう訊ねた。「ウィル叔父さんが、またお金を借りたとか言っていたし……」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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