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ハーレムの花嫁

ハーレムの花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫ヒストリカル
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・ヘリス(Anne Herries)
 イギリスはケンブリッジに住んでいるが、冬のあいだは夫とともにスペインのジブラルタル海峡に面したマラガのリゾート地で過ごすことが多い。青い海の白い波頭を眺めながら、涙あり笑いありのロマンチックな恋物語の構想を練るという。イギリスではすでに三十作以上の著作があり、二〇〇四年には北米ロマンス作家協会が主催するロマンス賞を受賞した。

解説

 地中海を渡る途中、エレナの乗った船が海賊に襲われた。父を失い、弟と生き別れて、彼女はオスマン帝国のハーレムへ売り飛ばされた。ハーレムの主スレイマンは、イングランド貴族を母に持つ男。異教徒など野蛮だと思っていたエレナから見ても、彼は知的で洗練された美丈夫だった。しかし、国へ帰してくれと必死にすがるエレナに、スレイマンは非情にもこう言い放った。「決してここからは出られない。おまえは私のものだ」

抄録

 スレイマンが彼女を見て目を細めた。それは視力のせいだろうか? それとも、思っていた以上に彼女が美しかったからだろうか? 「おまえに友だちができたとカリンが言っていたが、本当か?」
「ええ。ハーレムのなかでお友だちが三人できたの。アナスタシアとエリザベッタとロザムンド」
「友だちとどんな話をするんだ? さあ、こっちへ来て座れ。おまえのためにシャーベットと菓子を持ってくるよう言いつけておいた。食べながら話そう。女たちがどのように日々を過ごしているのか、もっと知りたいのだ」
 エレナは驚いて彼を見た。本当に知らないのだろうか?
「私は親しくなった人たちのことしか知らないけれど。アナスタシアはドンブラを弾くの。私が演奏する音楽とは違うから、最初はずいぶん奇妙な音楽だと思ったわ」
「おまえはどんな楽器を演奏するんだ?」
「家にはハープとヴァージナルがあったわ。母が持っていたの。でもアナスタシアがドンブラの弾き方を教えてくれるんですって」
「習いたいのか?」
「ええ、もちろん」エレナは目を輝かせて言った。「ただ座ってぼんやりしている人たちもいるけれど、私には耐えられない。踊りも習うことになっているのよ。それから、この国の人たちのように歌うことも。一種の詠唱というのかしら。それから、ほかの人たちの故郷のことや、ここに来る前の生活について話を聞くのも楽しいわ」
「おまえの故郷はどうなんだ、エレナ? おまえの家のことを話してくれ。おまえの目を通して私の目にも見えるように、家のことやまわりの風景のことを詳しく話してくれ」
「喜んで」エレナはにっこりした。「父の家は骨組みは木で、上の階が下の階より突き出ているの。外壁は灰色の石造りで、なかは楢《なら》の板張り。屋根は急勾配《こうばい》で藁葺《わらぶ》きなの。大きい家ではないけれど、優美でしっかりした造りよ。でもあなたにはとても小さく思えるでしょうね。あなたのお父さまの宮殿はこんなに大きいし……」
「大きすぎる」スレイマンは顔をしかめた。「どこで何が起きているのかさっぱりわからん。いや、続けてくれ。庭や景色は? 家にいるときはどんなことをしていた?」
 エレナは彼が興味を持ちそうなことは何ひとつもらさず、詳しく故郷について話しはじめた。森や野原、そこに住む生き物たち、霧深い朝とイングランドの田園地帯の美しさ、葉が色づきはじめる秋のこと、そして雪がやってきて道路や道端の堀を埋《うず》め、ときには何日も交通が途絶えてしまう冬のことを語った。父が収集していた書籍、地図、写本や、置いてこなければならなかったそのほかの貴重な品々についても説明した。彼女の言葉は表現力豊かで、美しい音楽のように流れた。
 スレイマンは彼女の声音に魅了されたようにじっと聞き入っていた。彼女の話が永遠に終わらなければいいと願ったが、イングランドを去ることを余儀なくされた部分に差しかかったとき、彼は口をはさんだ。
「おまえたちの女王がスペインに肩入れしたのが不運だったな。あのカトリックの悪魔は慈悲というものがない」スレイマンは渋い顔をした。「おまえは私を野蛮人と言ったが、私たちはあの異端審問の人殺しどもほどひどくはないぞ。われわれの裁判は厳しいが、同時に寛大でもある。おまえたちと習慣は違うが、われわれは野蛮人でも未開人でもない」
「ええ、そのようね」エレナは顔を赤らめた。「よく知りもしないで決めつけて悪かったわ。あなたも父を殺した男たちと同じだと思ったから、あの男たちが大嫌いだったように、あなたも嫌いだったの」
「いまは?」彼の目が輝きと熱を帯びたように見えた。「まだ私が嫌いか?」
「いいえ……その、嫌いではないわ」エレナは大きく息を吸い込んだ。「あなたは船を襲った男たちとは違うということはわかったわ。でも、お願いだから、身の代金を取って私を家族のもとへ帰してちょうだい」
「だめだ!」スレイマンはぱっと立ち上がり、エレナの手を引っ張って自分の前に立たせた。「いいかげんに自分の運命を受け入れるんだ、エレナ。おまえは二度とここからは出られない」
「それなら、あなたなんか嫌いだわ!」ふいにエレナは怒りを爆発させた。「どうして私の言うことを聞いてくれないの? どうしてあなたは――」
 そこまで言ったとき、スレイマンは手を伸ばして彼女を強く抱き寄せた。彼の唇が貪《むさぼ》るように彼女の唇を求め、その激しいキスは彼女を燃え上がらせるかに思えた。一瞬エレナは、スレイマンのなかに感じた欲求に負けそうになったが、ぐいとてのひらで彼の体を押しのけて顔をそむけた。身のすくむような数秒間、彼はエレナを抱いて、すべての自制心を失うかに見えたが、ふいに手を離したのでエレナはよろめいた。勇気を出してスレイマンの顔を見ると、彼の鼻孔はふくらみ、激しい感情と闘っているように息をはずませている。きっと激怒しているのだとエレナは思った。でなければ、こんなようすをしているはずがない。
「なぜ抵抗する?」スレイマンは迫った。「おまえの願いは聞いてやっただろう。ほかに何が欲しい? 宝石か? 絹か? もっと広い住まいか?」
「やめて! そんなもので私を買収できると思っているの?」エレナはなじるような目で言った。体が火がついたように熱くなり、手足がわなわな震える。「私は徳を重んじる女よ。自分の夫でない男となんて……」彼の目がきらりと光ったのを見てエレナは口をつぐんだ。「違うわ! 私はあなたとの結婚なんて望んではいない。ただ自由になりたいの」
「あまり図に乗るな!」スレイマンの体からめらめらと怒りが立ちのぼった。「言ったはずだぞ。おまえは決してここからは出られない。おまえは私のものだ。決して手放すものか」


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