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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

貴公子と壁の花

貴公子と壁の花


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リン・ストーン(Lyn Stone)
 文章を書くのも、絵を描くのも大好きで、一時期はイラストレーターとして働いていた。小説を執筆するきっかけとなったのは、表紙のイラストの仕事を探していたとき。昔からロマンス小説の愛読者だったため、自分にも物語が書けるのではと思い立った。現在は夫のアレンとともにアラバマ州に住む。近くには子や孫も住んでおり、若い登場人物の性格を考える際に一役買ってくれているという。

解説

伯爵となるべき彼が必要としたのは、不器量で貧しい、舞踏会の“壁の花”

グレイスは16歳のときに流行り病で両親を亡くしたあと、将来を誓った婚約者までも海戦で失い、叔父の家に身を寄せた。最初こそ良好だった叔父との関係は、しかしある晩を境に一変し、いっそ死んでしまいたくなるような虐待を受ける日々が始まった。やっと出席を許された舞踏会で、グレイスは凛とした気品を保つが、相続財産も持参金もないとあっては、見向きもされない“壁の花”。ところが、一人の男性が近づいてきた――よからぬ噂のある伯爵位継承者ケイン・モーリーは、満座のなかいきなり彼女に結婚を申し込んだ。こんなみすぼらしいドレスをまとった私を花嫁にしたいというの?求婚の衝撃と空腹のつらさが重なり、グレイスは気を失った……。

■ドラマティックなストーリー展開が持ち味の作家リン・ストーンによる、読み応え満点のリージェンシー・ロマンスをお贈りします。悲運の乙女グレイスの幸せを願わずにいられません!

抄録

「ばかげたことを!」ウォードフェルトンはなおも味方を求めて、周囲の貴族の顔を見回した。
「反対の理由はなんです?」ケインは、自分たちのいる階段の端へ馬車が大通りからやってくるのを見た。「ぼくは金が目的で結婚するのではない。彼女が無一文なのは本人もあなたも断言している。ぼくは彼女を熱烈に崇拝し、魅力的だと感じている」
 ケインが人だかりに訴えると、女性はみんな夢見るような目でため息をついた。
「本当の美人とは、行いの美しい人だ。ぼくに言わせれば、彼女はまさにそういう女性だ」
 馬車はすでに扉を開けて待っていた。ケインは羽根のように軽い婚約者を抱えて横向きになり、彼女の頭を自分の胸にもたせかけたまま乗りこんだ。
 グレイスは外の階段で意識を取り戻していた。ケインはウォードフェルトンを睨みつけたとき、腕のなかのやせた体に緊張が走ったのを感じた。彼女は気を失ったふりを続けたが、それを責めるつもりはない。見物人の同情を保つには、そのほうがいい。
「まだ、そのままで」ケインは従者が扉を閉めるのを待ちつつ彼女にささやいた。「きみの女友達はみんな、ロマンチックだとため息をもらしている。ぼくが花嫁を探す市場から手を引いたことで彼女たちにさらなる安堵を与え、ふたりで語り草になろう」
「一生忘れられない瞬間をくださってありがとう」グレイスも小声で応じた。「そばの排水溝に捨てられたとしても、あなたのご親切に感謝するわ。叔父のあの表情だけでも、千金の値打ちがあったもの」
 ケインは低く返事をして、彼女がより楽になれるよう起こしてやった。「あの一瞬以上のものを約束するよ。きみは耐えられるか? それとも、ぼくの前でしょっちゅう気を失うつもりか?」
 グレイスは首を横に振った。「あれは単に体を動かしたせいよ。ダンスなんて久しぶりだったし、最近は食事もしていないの。これから行く場所には食べ物があるかしら?」
 彼は緊張を解いた。「たぶん、何かあるだろう」
 馬車はすでに人だかりから遠く離れていた。グレイスは上体を起こしてケインの膝から下り、向かいの席に座った。前屈みになり、両手を自分の膝の上で組み合わせる。「あなたのお屋敷に行くの?」
「メイフェアにある伯父のタウンハウスだ。先ほど約束したように、ちゃんとシャペロンをつける」
 彼女はうなずいた。「承知しました。でも冗談じゃないわよね? 本当に共謀などしていないの?」
「ウォードフェルトンと? ぼくたちの言い合いをきみも聞いていたはずだ」
 心からの安堵とともに、グレイスは背もたれに体を預けて目を閉じた。「ああ、よかった」
「明日、きみの身の回りの品を取ってこさせよう」ケインは眼帯を外そうとした手を途中で止めた。
「どうぞお外しになって。そんなもの、ひどく不快でしょうね」グレイスは片手をさっと振った。「父が医師だったので、治療の手伝いをしていたんです。空っぽの眼窩を見ても、私は平気よ」
 ケインは眼帯を外さず、馬車の明かりで彼女の様子を窺った。「きみは、ぼくの知っている女性たちとはずいぶん違うな」
「まったくそのとおりよ」グレイスは片手で口を押さえてあくびをした。
「きみは病気なのか、グレイス?」ケインは自分の不躾さに気づいた。「すまない。ふたりでいるときはグレイスと呼んでも構わないか?」
「どうぞお好きなように。あなたのお名前は?」
「ケインだ」大尉は少し居心地が悪そうに答えた。
 強い意志を感じさせる顔。傷跡のないところはとてもなめらかな皮膚をしている。髪はやや長めだが、すてきな茶色で少しウェーブがかかっている。
 負傷する前はハンサムすぎたに違いない、とグレイスは思った。そんなことを言っても彼は信じないだろうけれど、今だってじゅうぶんハンサムだ。「そのけがはどうしてできたの?」
 しばらく沈黙が続いたので、答えることを拒否されたと思ったが、大尉はようやく口を開いた。「砲兵射撃で」そして額のあたりを指差す。「近くで爆発した砲弾の破片が当たった。ぼくの馬は死んだ」
「でも、あなたは生き延びた」興味をそそられ、もっと話してほしくなる。「それが大切よ」
「当時はぼくもそう思った。横になりたくないか? コートを枕代わりにするといい」ケインが外套を脱ごうとする。
「いいえ、大丈夫よ。まだ遠いの?」
 彼が窓の外をちらと見る。「もうすぐだ。気分は?」
「疲れ果てているわ。でも、医者に診せる必要はありません。ひと晩ぐっすり眠れば元気になるはずよ。あとは食事ね。とてもおなかが空いているの」
「やつは、きみを餓死させようとしたのか?」
 グレイスはやや軽薄な笑い声をあげた。「いいえ、自分でそうしたの」
 ケインは口にこそ出さなかったが不安を覚えた。頭がおかしいのは彼女のほうだ。今の状態を見れば、彼がそう思うのも無理はなかった。


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