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嘘つき天使

嘘つき天使


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

17歳まで修道院で過ごした天涯孤独のアレクサンドラ。父亡き後、共同事業者だったジェイスンに引き取られるが、生まれて初めて優しくされて、彼に恋心を募らせていく。だが、20も年の差があるジェイスンにははなから相手にされず、アレクサンドラの小さな胸は締めつけられるのだった。ある夜、アレクサンドラは彼の寝室へ行き、嵐が怖いと嘘をついて、添い寝をしてほしいと懇願した。するとジェイスンは低く押し殺した声で、少女を厳しく叱った。「自分が何を望んでいるのか、知るには早すぎるんだ」

抄録

「アレクサンドラ」ジェイスンの声は穏やかになっていた。
 振り返ったアレクサンドラの瞳は、涙をためてきらきらしている。まつげには雨のしずくのような小さな涙の粒が光っている。なぜかジェイスンは動揺した。そして、そのことが再びジェイスンをいらだたせた。彼は硬い声で言った。
「決めた」ジェイスンは、そう言いながらズボンのポケットに両手をつっこみ、手を握りしめた。「ロンドンに家を借りるのだ。君とミス・ホランドのために……」
「ミス・ホランド?」
「そうだ。少し前にここにいたご婦人だ。ミス・ホランドは仕事を欲しがっているにちがいない。頼めば君の面倒を見てくれるのではないかと……」
「いや!」
「いや、とはどういうことだ? アレクサンドラ、君が十八歳の誕生日を迎えるまではわたしが君の後見人なんだよ。言ったとおりにしてほしい」
「そんなこと、無理だわ」アレクサンドラはそう言うなり、ジェイスンと向き合った。「あなたがここにいる間は、わたしを無理やりミス・ホランドといさせることはできるでしょうよ。だけどあなたがいなくなったら、わたしを部屋に閉じこめておくわけにはいかないんだから。外に出ることだってあるわ。そしたら誰が帰ってきなさいって言えるの?」
 ジェイスンの顔はだんだんこわばってきた。「わたしを脅迫するつもりかね」
「わたしが? まあ、脅迫だなんて」アレクサンドラは涙声になって、再びハンカチをさがし始めた。アレクサンドラは下唇をかみ、その目に哀訴の色をうかべてジェイスンを見あげた。「ジェイスンお願い、そんなこと言わないで一緒に連れてって。いい子にしてるって約束するわ。なんでもあなたの言うとおりにする。わたしお料理もできるし、掃除もできるし、ベッドメーキングだって……」
「だめだ、アレクサンドラ!」
「なぜ、なぜだめなの?」
 アレクサンドラはかみつくように言いながら、ジェイスンに近づいていった。ジェイスンは両手をポケットから出して、アレクサンドラがあまり近づくのを防いだ。
「ジェイスン、パパはあなたをとても尊敬していたわ。パパはわたしたちに友達になってほしいと思っていたのよ。わたしを好きになるように努力してくださらない?」
 ジェイスンはアレクサンドラの肩に手を置いた。その肩は、あまりにも頼りなく弱々しかった。
「そんな問題ではないんだ、アレクサンドラ」
「じゃあ、なぜ?」
 ジェイスンはアレクサンドラの瞳の中にあどけなさを見た。アレクサンドラを傷つけることは、手負いの鹿をさらに痛めつけるようなものだ。アレクサンドラは父親に見捨てられたも同然だった。だとしたら、自分もその父親と同じようなことをしようとしていることになる。そうしたら、アレクサンドラはいったいどうなるのだろう? ロンドンのような都会ではどんな危険な目に遭うかわからないではないか。
 ジェイスンは指にぐっと力をこめた。骨がくだけてしまうような気さえしたが、アレクサンドラはたじろがなかった。ジェイスンの心には同情と自己嫌悪とが渦巻いた。
「わかった、わかった。しかたない。わたしとサンタヴィットリアに来なさい。ミス・ホランドも一緒だ」
「ほんとう?」
 信じられないというように見あげるアレクサンドラの目には涙があふれていた。ジェイスンは反動のようにアレクサンドラをつき離した。こう決めてしまったことで、やがて何か面倒がもちあがるという予感を、ジェイスンはぬぐいさることができなかったのだ。
 ジェイスンは、たった今言ったことを打ち消したいという衝動にかられたが、それはすでに遅かった。アレクサンドラの目にうかんだ深い安堵に水を差すのは今さらできることではない。
 ジェイスンの後悔とは逆に、アレクサンドラはよろこびのあまり口もきけないほどだった。
「ああ、ジェイスン!」
 アレクサンドラはいきなりジェイスンの首に腕を巻きつけ、顔じゅうにキスの雨を降らした。ジェイスンに拒むすきすら与えないほどのすばやさで。
「優しい優しいジェイスン!」
 アレクサンドラは泣きじゃくり始めた。その間ジェイスンは、なんとか早く解放されたいとばかり思っていた。アレクサンドラのまだ硬い胸がチョッキに押しつけられたり、首にからめられた腕のあたたかみを感じたりしているのは、ひどく居心地が悪い。
 サンガブリエルに一緒に行くのなら、アレクサンドラのこんな衝動的な自己表現を改めるよう話さなくてはならない、とジェイスンは冷静に考えた。アレクサンドラは自分のことをいったいどう考えているのだろう? たぶん、口うるさいおじさんか、あるいは父親のようなイメージかもしれない。なんであれ、若い女性はどんなに感激しても、よく知らない男の腕の中に身を投げ出すものではない。ただ、自分の願いを聞き入れてくれた、という理由だけでは――。
 しかし、こうしてアレクサンドラに抱きつかれてみて、初めてジェイスンはアレクサンドラと真剣に話せるような気がした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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