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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ 別冊

愛の取り引き

愛の取り引き


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マドレイン・カー(Madeleine Ker)
 南アフリカ生まれ。大学に入るために初めてイギリスの地を踏み、以来イタリア、スペインなどさまざまな国に住んだ経験がある。十日間で書き上げたというデビュー作“Aquamarine”(原題)が出版社に採用され、初めてロンドンを訪れた。現在は、夫と三人の子供と共に、再び南アフリカで暮らしている。

解説

シチリアの男爵ザビエル・デ・ルカは並外れた才能をもつ実業家だ。彼とは子供の頃から面識があるが、背が高くハンサムな彼は、いつもロミーの心を乱した。12年も年が離れているせいか、なんだか怖いような気がするのだ。その彼が、19歳になったロミーに結婚を申し込んできた。しかも、経営の危機に瀕するロミーの父の会社を救うことを条件にして。まるで取り引きだわ。でも、いま大事なのは、パパの会社を救うこと。父が友人と信じていた男爵の冷酷なやり口に、ロミーは怒りを覚えるが、愛なき結婚を受けいれるほかなく……。

■〈ロマンス・タイムマシン〉と題してその年の名作をお贈りする企画、1990年の今回は、尊大なイタリア人男爵がヒーロー。父の会社を救うため便宜結婚を承諾したヒロインでしたが……。1990年に話題をさらったマドレイン・カーの作品をお楽しみください。

抄録

「長い一日だったわ。そろそろやすめないかしら?」
「もうすぐだ。僕たちの寝室で、スーツケースの荷物を片づけているから」
 ロミーはすばやく彼を見あげた。「‘私たち’の寝室?」彼女の目が大きく見開かれた。
「もう一人で眠る日々は終わったんだ、ロミー。忘れたかい?」彼はかすれた、嘲るような声で答えた。
「いいえ」ロミーは唇が震えるのを止めるため、きつく噛まなければならなかった。この果てしのない一日が終わるまでには、あと一つ、試練を越えなければならないのだ。いちばん難しく、ロミーがただ一つ本当に恐れていた試練を。
「君は今日一日をあまり楽しまなかったんだね」
 ロミーは彼を見あげた。「楽しむですって? 何を楽しむというの?」
「式。披露宴」彼はロミーの座っているアームチェアーの腕木に衣擦れの音をさせて腰を下ろし、彼女のこめかみに触った。彼の温かい指の感触にロミーは身をすくませた。「普通、女性は自分の結婚式を楽しむものだと思うが」
「結婚については権威でいらっしゃるから」ロミーは言い返しながら、彼の手を避けるため飲み物の方へ顔を背けた。「私の態度がお気に召さなかった?」
「君はわがままな子供のようだった。あれが君の日常的な態度でないことを期待しているよ」
「私は私らしく振る舞っただけですわ。それ以上のことを期待していただきたくないと申しあげなかった?」
 彼はちらと笑みを浮かべた。「とにかく君は美しい花嫁だった」
「その点だけでも満足していただけてうれしいわ」彼女はグラスを干した。「あなたは? 楽しんだ?」
「これからよくなることを期待しているんだが」彼は低い声で答えた。
 ロミーは目を落とし、グラスをしおれた花のように指の間にはさんだ。グラスの縁にワインの滴がついている。彼女の視線を追ったザビエルは手を伸ばし、指でその滴をすくってロミーの口もとに持ってきた。彼の指が唇に優しく触れた時、ロミーは目をつぶった。「君はもう初夜のベッドが怖いなどとは思わないんだろう」
「ええ」彼女の声はようやく聞き取れるくらいだった。唇の上のワインが甘い。「怖くはないわ」しかし彼女は震え始めた。自分の心臓の鼓動が聞こえた。恋人を持った経験があることなど、なんの支えにもならない。空になったグラスを置いて、ロミーは手をよじった。「早くすませましょう」
 彼は立ちあがり、腕を差し出した。「ああ、そうしよう」
 ロミーは彼に支えられて立ちあがり、大きな暗い階段に案内された。
 寝室にも火が燃えていて、揺れる炎が支柱付きのベッドを浮かびあがらせていた。それ以外、照明はない。薄暗がりの中、あらゆるところに花がいけられているのが見え、部屋には甘い香りが立ちこめている。
 召し使いの誰かがロミーの荷物を解いて、飾り気のない木綿のネグリジェをベッドの左側に置いていた。スリッパや化粧道具もしかるべきところにきちんと並べられていた。
 ザビエルはコートを椅子の上に放り投げるとロミーに近づいた。その腕がロミーを抱いたが、彼女は動かなかった。彼の引きしまった体の温かさが彼女を包む。
 しばらくの間、彼はただ抱いたまま、ロミーの体から緊張を解きほぐすように指をゆっくりと這わせた。「君は僕の妻だ、ロミー」彼はかすれた声でささやいた。「とうとう僕のものになった。この時をどんなに長い間待っていたか」
 唇がロミーの唇を求めた。彼の唇は温かくむさぼるようだった。しかしロミーはその情熱的なキスに応えようとしなかった。何も感じていないのにどうして情熱的なふりをしなければならないの? 彼女は目を閉じ、両脇に手を垂らしたまま、抱き返そうともせずにいた。ロミーからの反応がないので彼のキスはますます残酷で凶暴になったが、途中で彼は突然動きを止めた。
「どういうことだ? 君は石でできているのか?」
「どうすればよかったの? 尻尾を振って、召し使いがするようにご主人様の手にキスでもすればよかったかしら」
「普通の女のように振る舞うくらいはできるはずだ」
「つまらない幻想を抱いたりしないよう、あなたに警告しておいたはずよ。あの時ホテルで話し合ってよくわかっていたと思ったけど」
 彼はぎらぎら光る目でロミーをにらんだ。「そうだった。たぶんやり方がまずかったんだろう」
 ザビエルがまた近づいた。彼は手をロミーの髪に差し入れ、頭をつかんで荒々しく自分の方に引き寄せた。突然の荒々しさにロミーはショックを受けて息を乱したが、彼の唇がすぐに唇をふさいだ。
 その荒々しさには何かロミーをかき乱すものがあった。体の中の火が目覚め、彼女は自分から体を押しつけた。先ほどまでの疲労感は消え、体がかっと熱くなった。
 しばらくして理性が戻ってきた。ロミーは彼に対してというより、自分自身に対して腹が立った。いきなり激しい勢いで身を振りほどいたので、髪に彼の指がからまった。
「やめて」ロミーは強く言ったが、彼の口もとには微笑の影が漂っている。
「君は楽しんでいた」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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