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ホワイト・ヴァレンタイン
著: 剛しいら発行: フロンティアワークス
レーベル: ダリア文庫e シリーズ: ビター・ヴァレンタイン
価格:578円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
解説
最愛のショコラティエ・永田冷人との同棲ももうじき三年目の天野克彦。だが永田は相変わらず仕事第一。特に最近はコンテストのアイデアがまとまらずイライラしっぱなし。克彦は、もう少し自分の事もかまって欲しいという気持ちが抑えきれず永田とケンカしてしまう。そんな中、昔克彦を好きだったという松山と永田に迫る新人・新堀が現れ――人生はチョコレートのように甘くない!?
※ イラストは含まれていません
※ イラストは含まれていません
目次
ガトーショコラ
チョコレートタルト
チョコレートシフォンケーキ
おまけ チョコレートクリーム
あとがき
チョコレートタルト
チョコレートシフォンケーキ
おまけ チョコレートクリーム
あとがき
抄録
「どうしてあいつまで連れて来るんだよ」
深夜になって、やっと家に帰れたものの、なぜか潤まで着いてきてしまった。酔ったのか、飲んでいる間もさんざん永田にまつわりついていて、そのまま家まで着いてきてしまったのだ。
「新入社員なら遠慮しろっての」
二階にある狭いゲストルームに布団を敷いて、どうにか潤を寝かせたものの、克彦は困惑している。
大崎や雨宮は二人の関係を知っているが、他の社員はよく分かっていない。誰も永田のプライベート部分まで知らないから、単に克彦が永田の家に住み込んで手伝っていると思われているようだ。
変に興味を持たれたり、反感を抱かれるのが嫌で、これまでは二人の関係をひたすら隠していた。それがこんなことでばれるのも面倒だ。 「永田さん……じゃなくて、真人、どうすんだよ」
さすがに克彦も、今夜は我慢も限界だった。
「うーん、どうするって」
永田もかなり酔っている。おかまバーでみんなで大騒ぎして、大量に飲まされたのだ。
コンテストまで二週間を切っている。なのにケーキがまだ決まっていない。それともあれから永田の脳内では、完璧な設計図が出来上がったのだろうか。
「まぁ、いいや。ともかく寝よう」
永田はシャワーも浴びずに、ジーンズだけ脱いだ姿でベッドに潜り込んでしまった。
「寝ようって、歯も磨いてないし、せめてシャワー浴びたら」
「うるさいなぁ。明日だ、明日」
「分かったよ……」
克彦はほとんど酔っていない。そのままバスルームに行こうとしたら、永田の眠そうな声が聞こえた。
「克彦……悪いけど、明日っからはしばらくホテルにでも泊まってくれ」
「えっ?」
聞き間違いかと克彦は、自分の耳を疑った。
なぜホテルになど泊まらないといけないのだ。ここ以外に、克彦の帰る場所はないというのに。
「どういうこと?」
「……おまえがいると、どうしても気が散る。集中したいんだ」
「何、それ」
そんなにコンテストが大切なのか。
ここで克彦が機嫌を悪くして、永遠の別れになってしまう可能性を、永田は考えてもいない。確かにこんなことで別れようなどと思う克彦ではないが、内心、深く傷ついていた。
「僕がいると、そんなに邪魔なの…。食事とか、掃除とか、そういうの永田さん、自分でやらないじゃないか」
「そんなことするために、克彦はここにいるんじゃないだろ」
では何のためにいるのだろう。
自分に何が求められているのか、克彦は自信のある答えを見つけられなかった。
「……そう、分かった。じゃオーナー、申し訳ないですが、出社時間を一時間遅くしていただくか、工房にはタッチしないですむようにしていただけますか」
悔し紛れに克彦は即座に言ったが、内心は泣きたい気分だ。
いったい永田の中で、何がどう変わってしまったというのだろう。考えたくはないが、潤のせいかとつい疑ってしまう。
「勝手にしろ」
けれど怒りもせずに永田はそのまま、布団にくるまって眠ってしまった。
克彦もベッドに入ったが、眠ろうとしても眠れるものではない。
苛立ちとも違う。怒りでもない。悲しみが深くて、眠れなかった。
これまで永田のために一生懸命頑張ってきたつもりだ。自分に出来る最大限の努力をしたのに、少し若くて可愛い男が現れたら、それで目移りしてしまうのか。
そんな男じゃないと思いたい。
でもそれ以外に、克彦には永田が急に冷たくなった理由が分からないのだ。
コンテストだけが原因とは考えられなかった。去年だって、二人で考えて出品した。それでチョコレート部門では優勝したではないか。
『ドゥ・イクニ』の村岡シェフを意識しているようだが、私生活では何度か飲みにいったこともある。友人というより、知り合い程度の付き合いしかしない永田にしては珍しく、村岡と伊国、二人とは友達付き合いをしていた。
そんな村岡に負けることが、それほどのプレッシャーになるのだろうか。
集中出来ないなんて言い訳だ。
ただ単に、克彦が邪魔になっただけなんだと、邪推はどんどん深くなっていく。
昨夜も寝ていない。疲れているのに眠れないのは、かなり厳しいものがあった。
うとうとしては目が覚める。
悲しくて泣きそうになったが、ぎゅっと目を瞑って別のことを考えてやり過ごした。
*この続きは製品版でお楽しみください。
深夜になって、やっと家に帰れたものの、なぜか潤まで着いてきてしまった。酔ったのか、飲んでいる間もさんざん永田にまつわりついていて、そのまま家まで着いてきてしまったのだ。
「新入社員なら遠慮しろっての」
二階にある狭いゲストルームに布団を敷いて、どうにか潤を寝かせたものの、克彦は困惑している。
大崎や雨宮は二人の関係を知っているが、他の社員はよく分かっていない。誰も永田のプライベート部分まで知らないから、単に克彦が永田の家に住み込んで手伝っていると思われているようだ。
変に興味を持たれたり、反感を抱かれるのが嫌で、これまでは二人の関係をひたすら隠していた。それがこんなことでばれるのも面倒だ。 「永田さん……じゃなくて、真人、どうすんだよ」
さすがに克彦も、今夜は我慢も限界だった。
「うーん、どうするって」
永田もかなり酔っている。おかまバーでみんなで大騒ぎして、大量に飲まされたのだ。
コンテストまで二週間を切っている。なのにケーキがまだ決まっていない。それともあれから永田の脳内では、完璧な設計図が出来上がったのだろうか。
「まぁ、いいや。ともかく寝よう」
永田はシャワーも浴びずに、ジーンズだけ脱いだ姿でベッドに潜り込んでしまった。
「寝ようって、歯も磨いてないし、せめてシャワー浴びたら」
「うるさいなぁ。明日だ、明日」
「分かったよ……」
克彦はほとんど酔っていない。そのままバスルームに行こうとしたら、永田の眠そうな声が聞こえた。
「克彦……悪いけど、明日っからはしばらくホテルにでも泊まってくれ」
「えっ?」
聞き間違いかと克彦は、自分の耳を疑った。
なぜホテルになど泊まらないといけないのだ。ここ以外に、克彦の帰る場所はないというのに。
「どういうこと?」
「……おまえがいると、どうしても気が散る。集中したいんだ」
「何、それ」
そんなにコンテストが大切なのか。
ここで克彦が機嫌を悪くして、永遠の別れになってしまう可能性を、永田は考えてもいない。確かにこんなことで別れようなどと思う克彦ではないが、内心、深く傷ついていた。
「僕がいると、そんなに邪魔なの…。食事とか、掃除とか、そういうの永田さん、自分でやらないじゃないか」
「そんなことするために、克彦はここにいるんじゃないだろ」
では何のためにいるのだろう。
自分に何が求められているのか、克彦は自信のある答えを見つけられなかった。
「……そう、分かった。じゃオーナー、申し訳ないですが、出社時間を一時間遅くしていただくか、工房にはタッチしないですむようにしていただけますか」
悔し紛れに克彦は即座に言ったが、内心は泣きたい気分だ。
いったい永田の中で、何がどう変わってしまったというのだろう。考えたくはないが、潤のせいかとつい疑ってしまう。
「勝手にしろ」
けれど怒りもせずに永田はそのまま、布団にくるまって眠ってしまった。
克彦もベッドに入ったが、眠ろうとしても眠れるものではない。
苛立ちとも違う。怒りでもない。悲しみが深くて、眠れなかった。
これまで永田のために一生懸命頑張ってきたつもりだ。自分に出来る最大限の努力をしたのに、少し若くて可愛い男が現れたら、それで目移りしてしまうのか。
そんな男じゃないと思いたい。
でもそれ以外に、克彦には永田が急に冷たくなった理由が分からないのだ。
コンテストだけが原因とは考えられなかった。去年だって、二人で考えて出品した。それでチョコレート部門では優勝したではないか。
『ドゥ・イクニ』の村岡シェフを意識しているようだが、私生活では何度か飲みにいったこともある。友人というより、知り合い程度の付き合いしかしない永田にしては珍しく、村岡と伊国、二人とは友達付き合いをしていた。
そんな村岡に負けることが、それほどのプレッシャーになるのだろうか。
集中出来ないなんて言い訳だ。
ただ単に、克彦が邪魔になっただけなんだと、邪推はどんどん深くなっていく。
昨夜も寝ていない。疲れているのに眠れないのは、かなり厳しいものがあった。
うとうとしては目が覚める。
悲しくて泣きそうになったが、ぎゅっと目を瞑って別のことを考えてやり過ごした。
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