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汚れた顔の天使【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

汚れた顔の天使【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 メグ・アレクサンダー(Meg Alexander)
 イングランド北西部ランカシャー生まれ。プロの料理人、会議場のアシスタント・ディレクターなど様々な職業を経験したあと、無類の読書好きが高じて小説を書くようになった。趣味はガーデニングと料理と旅行で、猫が大好き。ケント州在住。

解説

捨て子のプルーデンス、17歳。出自もわからぬ娘が貴公子に恋して……。

1789年英国。孤児のプルーデンスは、冷たい雨が降りしきるなか、宝物のブローチだけを手に、南を目指して歩いていた。人使いの荒い北部の紡績工場から逃げ出して、もう3日。追ってくるかもしれない監督官の目をあざむくため、かかしの服を拝借し、腰まであった髪も切った。そんな折、ひょんなことからウェントワース卿セバスチャンと出会い、世にも恐ろしげな追いはぎから救われたうえに、食事と服も与えられる。自分が薄汚れた少年のようななりをしていたにもかかわらず、女性だと気づいたと言う彼に、プルーデンスは胸のうずきを覚えた。高貴な身分のセバスチャンに恋する資格など、あるはずもないのに……。

■生まれてまもなく捨てられたプルーデンスは、産着に留めてあった紋章入りのブローチを頼りに出自をたどります。はたして彼女の親は誰なのか、そしてセバスチャンとの身分違いの恋の行方は……?涙なくして読めない究極のシンデレラストーリーをご堪能ください。
*本書は、ハーレクイン・リクエストから既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 彼はスープ入れのふたを開けてなかを見た。
「これは運がいい。においから判断して、ここの女将は料理が得意とみえる。スープはどうだ? じゃまが入らないように、給仕を断ったんだ」
 プルーデンスが疑わしげな表情を投げたが、紳士は気がついてはいないようだった。とまどいを隠すために、プルーデンスは給仕用のおたまを取った。
「わたしが給仕します。どうぞお座りください」
 プルーデンスはいまになって、男の子がこんなにかいがいしいのはおかしいのではと思いながら、湯気の立つスープ皿を彼の前に置いた。それから自分の皿にもよそった。
「ワインはどうだ?」紳士は返事を待たずにプルーデンスのグラスにワインをついだ。「乾杯。感謝をこめて」彼は自分のグラスを掲げた。
 プルーデンスは顔を赤らめた。「大げさすぎます。少しも危なくなんかありませんでした。追いはぎはお供の方が追い払ってくれたでしょうから」
 紳士は白い歯をのぞかせたと思うと、頭をのけぞらせて笑った。
「サムは以前郵便馬車の御者をやっていたんだ。死んでもらっぱ銃を離さないよ」
「あの銃は大砲でも撃ったような音がしましたね」いまもその音が聞こえそうな気がする。
「まったく便利な武器だ! さあ、冷めないうちにスープを飲むとしよう」
 今度ばかりはプルーデンスもおとなしく彼のことばに従った。スープはおいしくて、きれいに平らげた。
「お代わりは?」紳士が眉を片方上げた。
 プルーデンスは首を振った。
「では、ハムを切ってあげよう」彼はサイドボードの料理をプルーデンスの皿に取り分けた。「ワインは好きじゃないのか?」
「飲み慣れていないんです」
「じゃあ、飲んでみることだ!」
 プルーデンスはワインを少し飲んでみた。渇いたのどに冷たいワインはおいしかった。飲めばどうなるかも知らず、グラスの半分以上も飲んでしまった。
「その調子だ!」紳士は素知らぬ顔でワインをつぎ足したが、その目はプルーデンスにそそがれたままだった。
 プルーデンスはそれに気づかなかった。おなかがいっぱいになり、ひどく眠くなった。
 よく考えなければ。この紳士はとても親切にしてくれるけれど、これまでのささやかな人生経験から学んだのは、他人に期待してはいけないということだ。この紳士はこちらがとっさにやったことを、命を救ってくれたと言ってくれている。銃を持ったサムがついていたのだから、それほど危険ではなかったことはわかっているはずなのに。なぜ彼はこんなに親切にしてくれるのだろう? そこがわからない。もう一度きいてみなければ。
 その心を読んだように、紳士が言った。「わたしにどうしてもらいたかった? 道端に放っておいたほうがよかったのかな?」
「いいえ」かなりぶっきらぼうな返事になった。
「なるほど。話してごらん。なにを恐れている?」
「なにも恐れてなどいません! ただ……思いがけないことになってしまって……」
「人生は思いがけないことだらけだよ。たとえばこのわたしだ。のんびりと馬車を走らせていたと思ったら、つぎの瞬間には人殺し呼ばわりをされた」
「それはそうでしょう! あいだに起きたことをお忘れなく」
「忘れてはいない。ささやかながら、その償いをしたくてね」彼はプルーデンスのグラスにさらにワインをついだ。
 プルーデンスは笑いたい衝動に駆られた。「この宿の女将はダンとわたしを泊めたくないんです」
「ところがその反対だ。きみたちふたりにひどく同情している。わたしの親戚の若いのがふたり、長時間馬車に乗ってむくんだ足を散歩でほぐしていたら強盗に遭ったという話を聞いてね」
「さぞかし妙な身なりをしていると思ったでしょうよ!」
「身ぐるみはがされて、置き去りにされたんだ。死んだものと思ってね。そこでわたしが見つけたとき、追いはぎたちの置いていったぼろ服を着せるしかなかった」
「それで話は通じたんですか?」プルーデンスは眠そうに微笑んだ。「あなたとわたしたちが親戚に見えるとはとうてい思えませんが」
「きみたちはわたしの兄の子供ということになっている。即席の伯父が急に現れても迷惑でなければいいが?」
 プルーデンスはいつの間にかうなずいていた。まぶたがひどく重たくて、開けているのがたいへんだった。
「嘘をついたわけですね」
「そのとおり! あとで罰を受けるな。サムがきっと……」
「サムはダンとわたしを信用していません」プルーデンスはすでに半ば眠った状態だった。「サムのほうが正しい。わたしたちは寝ているあいだにあなたを殺すかもしれませんよ」
「用心するさ。わたしはきみたちが窮地に陥っていることが即座にわかったんだ」紳士はテーブルの向かい側に目をやり、プルーデンスが頬杖をついてすやすや眠っているのに気づいても、驚かなかった。
 かすかに微笑むと、彼はプルーデンスを抱え上げて寝室に運んだ。そしてぐっすり眠っているダンの横に寝かせ、ふたりに毛布をかけてやった。
 最後にもう一度ふたりをちらりと眺めてから、彼は部屋をあとにした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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