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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

すり替わった恋人

すり替わった恋人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ヘレン・ブルックス(Helen Brooks)
 イングランド中部ノーサンプトンシャー在住。敬虔なクリスチャンであり、家事や育児にいそしみ、三人の子供を育てた。書くことは長年の夢だったが、実際に執筆に取り組んだのは四十代に手の届く頃。現在は次々に作品を発表している。

解説

朝早く、玄関をどんどんと叩く音がした。ドアを開けると、見知らぬ男性が険しい顔で家に押し入り、甥の心を弄んで捨てた女だと、リアをなじった。突然のいわれのない非難に面食らったが、どうやら男はリアを、奔放な従姉ポピーと勘違いしているらしい。実業家だという、デミトリオス・クウツウピスと名乗った彼は、端整な容貌を蔑みに歪め、甥の婚約者として、いますぐギリシアに戻るよう、ポピーに――リアに迫った。リアは人違いだと説明する暇も与えられないまま連れ去られた。

抄録

「あなた、何様のつもり?」リアは必死に言い返した。
 デミトリオスは不敵な笑みを浮かべた。「僕が何者なのかは、もう話したはずだ。君が何者なのかもわかっている」リアがいら立たしげに息を吸うと、彼はさらに続けた。「モデルなんだって? ニコスの話だと、かなりの売れっ子だそうだな。だったら、急な旅支度も慣れたものだろう。僕は君の仕事なんか知ったことじゃない。大切なのは姉の健康だ。君に会わせて、姉を安心させたいんだ。それまでは、甥の愛すべきフィアンセとして振る舞ってもらう」
 リアは硬い岩を素手でたたいているような無力感に襲われた。「あなたは勘違いしているのよ」
「そう?」ためらうリアを前にして、デミトリオスはブルーの瞳に軽蔑の色を浮かべた。「僕が旅費はすべてこっち持ちで、留守中のギャラの分も補償すると言ったら? いくらぐらい払えばいいのかな?」彼が提示した金額に、リアは目をみはり、頬を真っ赤にした。
「私を買収しようっていうの? あなた、いったいどういう人たちとつき合ってるの?」
 デミトリオスの表情がこわばった。「あまり僕を怒らせないほうが身のためだ、ミス・クィントン。僕は心強い味方にもなれるし、恐ろしい敵にもなれる」そう言いつつ、リアの方に歩み寄ってくる。
 リアはあとずさろうとした。だが、追い詰められたねずみのように足がすくんで動けない。「そばに来ないで。近づかないでよ」
「君が命令できる立場だと思うか?」デミトリオスの顔にはかすかに残酷さが感じられた。
 リアはきっと彼をにらみ返した。「もし私が言うことをきかなかったら、どうするつもり? 殴るの? あなた、そういう傲慢で乱暴な人なの?」
「人の性格をあれこれ言う資格があるのか?」デミトリオスの瞳が冷たく光った。「君みたいな女に……」彼は乱暴にリアを引き寄せ、向きを変えて壁に押しつけた。「君みたいな野良猫に礼儀を教える方法はいろいろあるんだよ」そう言いながら、デミトリオスは頭を下げてきた。温かい息がリアの青ざめた顔にかかる。鉄のような手を振りほどこうと、彼女は必死にもがいた。デミトリオスは低く笑った。「自分の意のままになる従順な男が好きってわけか。ニコスがふられたのも当然だな」
 喉に熱い唇を押しつけられ、動転したリアはやみくもに足で蹴飛ばし、鋼のような腕から逃れようとした。デミトリオスは煩わしげにうなると、強引に彼女をのけぞらせた。
 二人の唇が重なり、彼の舌が巧みにリアの唇を割って入ってきた。その衝撃に脅え、リアの心臓の鼓動が激しくなる。彼女は今までこれほど濃厚なキスがあることを知らなかった。昔つき合っていたボーイフレンドとおやすみのキスをしたことはあるが、それはこんな心をかき乱すものではなかった。
 デミトリオスの唇が喉を這い下りていく。リアは半狂乱で彼の背中をたたき、泣きそうな声で訴えた。「やめて。お願いだからやめて」
 デミトリオスは不思議そうな表情で、ゆっくりと顔を上げた。「まるで本気で言ってるみたいに聞こえるな」
「本気よ、本気で言ってるのよ!」
 彼は少し身を引き、リアの脅えた瞳を考え深げにのぞき込んだ。「君は大人だと思ったんだが」その声は優しく、顔には言い知れない表情が浮かんでいた。「うっかりすると、君がこういうことに慣れていないと思い込んでしまいそうだ」
「痛かったわ」リアは弱々しくつぶやき、震える手でシルバーブロンドの髪をかき上げた。
「痛かった?」デミトリオスは不審そうに繰り返し、彼女の火照った顔を見まわしてから口調を和らげた。「どうも勘が狂ったらしい。キスした女性からそんなことを言われたのは初めてだ」
 リアにはわかっていた。彼の腕に抱かれていた間、自分が初めて女の喜びを感じたことを。彼女の肌はまだ慣れない興奮でぞくぞくしていた。リアが身をよじると、彼は両腕をだらりと垂らした。ブルーの瞳の奥には、とらえどころのない感情の炎が揺らめいている。
「どうする? 僕が代わりに荷造りをしようか、それとも君が自分でするか?」彼は容赦なく話をもとに戻した。
 リアは顔を真っ赤にして肩をすくめた。気がつくと、初めて彼のとんでもない要求について真剣に考えていた。恐れることはないわ。私はポピーじゃないんだもの。いざとなったら、そのことを打ち明ければいい。とにかく、ポピーのために時間を稼がなくちゃ。この人から守ってあげなくては。
「有給休暇もたまっていたところだし」リアは静かにつぶやいた。
 それは嘘ではなかった。昨年は一週間しか休みを取っておらず、残りを消化できる暇もなさそうだった。ポピーには彼女の所属するモデル・エージェンシーを通じてメッセージを残せばいいし、アメリカ出張のおかげでパスポートもあり、当面差し迫った仕事もない。一時的な解決にしかならないだろうが、いとこをこんな狼の前にほうり出すよりはましだ。
 リアはのろのろと視線を上げ、デミトリオスの鋭い目を見返しながらうなずいた。「一緒に行くわ。ただし、あとで悔やむことになっても知らないわよ」
 デミトリオスの冷たい顔に一瞬、勝ち誇ったような表情がよぎった。これでよかったのかしら? リアは自分自身に問いかけた。本当にこんなことをしていいの?


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