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愛は序曲に始まって

愛は序曲に始まって


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェシカ・スティール(Jessica Steele)
 イングランド中部に、七人兄妹の六番目に生まれた。現在はウースターシャーの風光明媚で文化財に富んだ村に夫とともに住んでいる。公務員として働きながら夜の時間を執筆にあてていたが、夫の励ましを得てフルタイムの作家となった。一番の趣味は旅行で、メキシコ、中国、香港……と、取材をかねてさまざまな国を訪れている。

解説

身支度を整えたソレルは、鏡に映る自分の姿を点検した。一分の隙もなく、流行のドレスを美しく着こなした女性がいる。かつて、若き実業家エリスに恋慕の情を抱き、一心に結婚を願った、無垢な少女の面影はそこにはない。17歳のあの日。信じていた人に憎悪に満ちた目で拒絶され、辛い失恋を経験したソレルは、今も心の傷を引きずっている。あれから生きる意味を失って、ひどい神経衰弱を患ったのだ。冷ややかな表情で、高級車に向かった彼女は夢にも思わなかった。このあとパーティでエリスに再会し、胸を引き裂かれようとは。

抄録

 よくは眠れなかったし、ベッドに入って数時間しかたっていないので、いつもより寝過ごしたと知っても別に驚きはせず、ソレルはだるそうにベッドからおりてローブをはおった。
 ビジネススーツに身を固めたエリス・ガルブレイスの姿を戸口に見たとき、それも、彼女の起き抜けのばら色に輝く頬や肩に波打つ豊かな明るい茶色の髪を目のあたりにして、口もとに笑みまで浮かべられては、顔に冷水を浴びせられたも同然だった。
「いったい……」ソレルは息をのんだ。しかも、エリスは彼女をついと片方に押しのけ、平然と敷居をまたいでドアを閉めた。「いったい、なんの……」彼女は再び口を開いた。「どうやって建物の中に入ったの?」興奮のあまり、取りすましたイメージなどもうどこにもなかった。「それに、寝ているところを起こすなんてどういうつもり?」
 ローブを無造作にはおり、目を怒りで燃えたたせた自分の魅力に気づかないソレルを、エリスは充分ながめてから答えた。
「アパートの住人のひとりが外に出るときに中に入ったのさ」エリスはなおも見つめながら、仕事熱心なソレルが昔は七時半のバスに乗っていたことを無理に思いださせた。「君は鳥と一緒に起きてたじゃないか」
「そんなことは……」ソレルは反論しかけたが、急に相手の目にわけのわからない憤怒が表れるのを見て言葉を切った。戸惑っていると、エリスは殺意のこもった表情で、唖然としている彼女の横をすり抜けた。
「それとも、ベッドに誰かいるのか?」
 ソレルは目をみはった。寝室にさがしに飛びこんでいくなんて! こんな不作法なことがあるだろうか。あの人はわたしがひとりで寝ていたか、自分の目で確かめようというのだ!
 エリスのあまりの厚かましさにソレルもやっとわれに返り、やはり激しい怒りに身を震わせて彼のあとを追った。「いったいなんのまねなの?」彼女はからのベッドを見ているエリスに向かって叫んだ。
 彼の怒りはわきあがるのも早かったが、おさまるのもあっという間だった。「知るもんか」うなるように言うと、エリスはまだショックが足りないとでもいうように、ソレルに近づき、腕の中に抱き寄せた。
 エリスの腕に抱かれて幸せにひたるなどおよそ考えられないことだ。ソレルは怒りの炎を消さないように努めた。彼はキスをしようとはしていないが、最後まで試みないともかぎらないからだ。
 ソレルは体を動かして自由になろうとしたが、エリスはきつく抱いたまま動かず、結局、言葉でショックを与えて腕を放すよう仕向けるしかなかった。
「もしわたしに乱暴するつもりなら、さっさとしてしまうことね、エリス・ガルブレイス! そうでないなら放して!」
 彼女が言い終わらないうちに、エリスは笑いだしていた。意外だった。ただ、もっと意外だったのは、ソレル自身までが笑いを誘われたことだ。
 エリスの腕の中で、こみあげるおかしさをこらえきれずに、ソレルは満面に笑みをたたえた彼を見あげた。笑いを、それも自然にわき起こる笑いをどうしても抑えることはできなかった。彼女はこらえきれずに笑いだし、笑顔を彼に向けた。
 不意に心臓が大きく鳴りだし、突然、不安を感じて笑みが消えた。ソレルの目をのぞきこむエリスは、見てほしくないことまで見抜いてしまうかもしれない。あわててソレルはうつむいた。けれども、笑ったせいで気力は萎え、エリスから離れようとする力など見つかりそうにない。それでも離れなければ、という心の中の必死の声に促されて、彼女は相手を押しのけようとした。
 エリスの腕に少し力が加わった。「もう少し君を抱かせていてくれないか」つぶやく声の穏やかさに、ソレルの体から力が抜けた。
 彼女は萎えた全身をエリスにあずけた。彼の唇が髪に触れ、その息づかいを感じると、ますます力が抜けていく気がした。
「君の髪はあのころとにおいが同じだね」まるでその香りを忘れたことはないとでもいうようだ。ローブを通してエリスの手のぬくもりが伝わってくる。
 どれほど彼の腕の中で立っていただろうか。何も考えず、手痛い拒絶から回復するまでのつらい苦闘も頭に浮かばなかった。しかし、「君はぼくが知っていた女の子のままだね、ソレル?」という言葉を聞いたとたんに、失恋の苦い思い出がよみがえり、ソレルは誘惑の夢から急にさめた。
 彼女の体はこわばり、硬い表情で見あげると、エリスの抱擁がゆるんだ。
 ソレルはすばやく一歩さがった。「それはあなたの思い違いだわ、エリス」彼女は冷たく答えたが、言い終わらないうちに、エリスが首を横に振った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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