マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ 別冊

カリブの白い砂

カリブの白い砂


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

看護師のエリザベスは、年配の入院患者のプロポーズを受け、彼の所有するカリブ海に浮かぶ島へと赴いた。彼の健康が回復次第、結婚することになっている。ところが、憧れの南の島での生活を夢見て、期待に胸躍らせていたエリザベスは、婚約者の高圧的な態度や異常なほどの嫉妬深さにショックを受け、結婚にためらいを感じ始める。そんなとき、危険な男だと思い警戒していた有力者、深緑色の瞳をもつラウールと何度も顔を合わせるようになり、彼の男性的な魅力に惹かれていき……。

■〈ロマンス・タイムマシン〉と題してその年の名作をお贈りする企画、1991年の今回は、ハーレクインの伝説的な作家アン・メイザー。この結婚は正しいはずと何度自分に言い聞かせても、出会ったばかりのラウールに惹かれてしまう。堅実な婚約者と、野性味あふれる男性との間で揺れ動く女心は……。

抄録

 スニーカーを脱ぎ、素足に砂の熱さを感じながら、波打ち際へ走っていく。泡立った波が足についた砂を洗い流し、足跡を消し去るのを見て、ベスの顔から笑みがこぼれた。
 振りかえって、屋敷を見上げる。どれが彼女の部屋の窓か見分けがついた。隣の窓に目を移し、ウィラードが目を覚まして捜しているのではないかとも思ったが、すぐに打ち消した。彼はおそらく夕方まで眠りつづけるだろうし、それまでじっと部屋で待っていろとは言わないだろう。
 しばらく海辺を散歩することに決めた。暑いけれど、少しぐらいならどうということはないはずだ。少なくとも足だけは海の水で冷やされているのだから。
 海岸はカーブしていて、だいぶ先に岬が見える。岬のまわりの水はもっと濃い緑で、たぶん深くて泳ぐには危ないのだろう。ベスは、小さな‘かに’があわてて逃げていくのを息を殺して見つめながら、飽きもせずに水際を歩きつづけた。
 気がついたときには、ずいぶん離れたところまで来ていた。屋敷の建っている崖はまわりの景色に溶けこんでしまったし、建物そのものは木に隠れて見えない。その代わり、海岸から少し上がったところの緑の斜面に別の建物が見えている。これもウィラードのものだろうか? ビーチハウスかボートハウスか……。
 ベスは好奇心にかられて、片手にスニーカーをぶら下げたまま歩みよった。ベランダから数メートルのところまで近づいたとき、中から黒人の男が出てきた。彼は手すりのわきに立って、じっとこちらを見ている。他人の地所に勝手に入ってしまったらしいと気づいて、ベスはあせった。急いでもどろうと向きを変えたとたん、温かでしめった人間の体にぶつかった。
「ごめんな……まあ、あなたでしたの!」ベスは大きな声を上げ、まるで彼の体に触れたら病気がうつると言わんばかりに、ぱっと飛びのいた。裸足で音がしなかったせいか、ラウール・ヴァリーリアンが近づいてきたのに、ぜんぜん気がつかなかった。髪は濡れ、上半身にしずくがしたたり、ズボンも濡れた体の上にはいたらしく、ぴたっと張りついている。ベスは目のやり場に困って、片手で髪の毛を後ろに払い、反対の手にぶら下げているスニーカーをぼんやりと見下ろした。「わ、わたし……気がつかなくて……」
 彼の口もとに皮肉な笑みが浮かんだ。「真剣になってぼくの家を見てたようだからね」
「えっ? あなたの家?」
「そうだよ」ラウールは額にかかった濡れた髪をかき上げた。「中を見たい?」
「いえ、そんなんじゃないわ。ただ通りかかって……」
「わかってるよ。見てたんだ」
「見てらしたの?」ベスはばつが悪そうに、もう一方の手に靴を持ちかえた。「じゃ、泳いでたのね?」
「そうでもなきゃ、濡れた体で歩きまわったりしないよ。どうやらぼくは、心の準備ができていないときに女性客の訪問を受ける運命にあるらしい」
「えっ? もう一度おっしゃって」
 ベスは彼の言う意味が理解できなかったが、彼は肩をすくめただけだった。「なんでもないんだ。なにか飲みものでもごちそうするよ」
「いえ」ベスは一歩わきへどいた。「もう帰らなくてはいけませんから」
「どうして?」眉がきゅっとつり上がる。「きみの‘フィアンセ’がお待ちかねなのかな?」
 それまでの会話は形だけのものだったが、ここでラウールの口調が変わり、“フィアンセ”という言葉がとげとげしく響いた。
「ええ、そうですわ」ベスが敵意をあらわに答えると、ラウールはにやりと笑った。
「そのうちに彼がいやになるよ」
「あなたにわかるわけないわ」ベスは上気した顔で冷たく言って立ち去ろうとしたが、突然二の腕をきつくつかまれた。
「ミス・リヴァーズ、どうして彼と結婚するんだ?」ベスはかちんと来た。ベランダに目を走らせたが、さっきの黒人はあいかわらず涼しい顔でこちらを見ている。
「放してよ! ミスター・ピートリに言いつけるわよ!」ベスがあえぐように言うのを聞いて、ラウールは短く笑った。
「ミスター・ピートリにねえ。で、ウィリーがぼくをどうすると思ってるんだい?」
「くびにするでしょうね!」腕にくいこんでいる彼の手をにらみつける。ラウールも彼女の腕に目を落とし、赤くなっているのに気づいた。
「なんて柔らかな肌なんだ」その言葉を聞いて、ベスの胸が騒ぎはじめた。
「放してちょうだい!」必死の声にラウールは視線をもどした。
「どうしても、と言うのなら」ようやく手を離す。
 ベスは急いで身をずらした。
「トマスに会っていかないかい?」ベスはばかにしたようなラウールの声を無視し、踵を返して歩きだした。
 二人の距離が十分離れ、彼が追いかけてこないとわかると、ベスは気持をおちつけるために一、二度深呼吸をした。どんなことにも対処できるはずだったのに、自信がなくなってしまった。これまでにも侮辱されたことはあるが、手を出すような男はひとりもいなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。