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見えない求愛者

見えない求愛者


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

話題沸騰の〈ケンドラ・マイケルズ〉シリーズ最新作――何者かのおぞましき執着愛が、ケンドラを追い詰めていく……!

生まれつき目が見えず、手術の末に20歳で初めて視力を獲得したケンドラ。盲目の日々のなかで驚異的な洞察力を培い、FBIに協力して数々の難事件を解決してきたが、1年前の事件で元恋人を亡くして心に傷を負った後は、捜査から離れた日常を送っている。そんなある日、1年前にケンドラを事件に巻きこんだ張本人、その冷徹さで恐れられる敏腕犯罪コンサルタントのアダムが再び現れ、連続殺人の捜査に協力するよう迫る。事件の共通点はただひとつ――どの殺人のやり口にも、ケンドラが捕らえた殺人鬼の手口が模倣されていて……。

抄録

「まいったな」リンチは両手を持ちあげた。「連邦議会の事務局の人間が、機密情報を漏らしているんだ」
「漏らすって、誰に?」
「おそらく、誰でもいちばん高い値をつけた相手に。活動家、国防企業、ジャーナリスト……情報の内容によって変わる。ぼくの任務は、穴を見つけてそれを埋めることだ」
「“埋める《プラグ》”って、三〇年代のギャング映画で使う意味じゃないわよね」
 リンチはにやりとした。「誰かに銃弾をぶちこむ《プラグ》ってことか? ぼくがそんな危険でロマンティックなことをすると思ってくれていたとは光栄だ」
 実のところ、リンチはタフで大胆には見えるが、ロマンティックな点を想像するのは難しい――セックスに関することをのぞいては。彼の性的な魅力や嗜好ははっきりしている。「わたしは見たままの印象しか持ってないわ」
「いや、銃弾をぶちこむわけじゃない。ぼくが言っているのは、純粋に情報漏れを食い止めるということだ。この数週間、偽の情報をばらまいていたんだが、けさになって進展があった。だが、あいにく容疑者が口を割らないそうだ。戻ってきて尋問をしてほしいと頼まれた」
「拷問じゃないの?」
「正確にはそうだろうな。だが、彼らは肉体的にではなく、心理的に責めたいようだ」
「それであなたの技が必要なのね。あなたの特技は、人を半狂乱にさせることだもの」
「きらいじゃないよ、そうやってぼくの才能をねじ曲げてあてこするきみのやり方は」
「あら、あなた一流の、人を操るその技を“才能”と呼ぶことにしたの?」
「きみならなんと呼ぶんだ?」
 ケンドラは首を傾げ、考えた。「災い。害毒。癪の種。好きなのを選んで」
 リンチはエンジンをかけ、駐車場から車を出した。「とにかく、しばらくはぼくの才能なしでがんばってもらわなくてはならない。ついに若きメトカーフがきみのパートナーになるチャンスをつかむことになりそうだな」
「お供なんていらない」
「いやなら、ぼくが戻るまで待っていてもらうしかない。二日ほどだと思うが」
 ケンドラは顔をそむけた。「二日なんて長すぎる。あなたは気づいていないかもしれないけれど、野放しの異常者がまた人を殺すかもしれないのよ」
「この事件の捜査をしているのはきみだけじゃない。ぼくが留守のあいだ、過去のケースファイルを読みこむのはどうだ」
 ケンドラは信じられない思いでリンチを見た。「冗談でしょう。わたしが何もしないでただあなたの帰りを待っていると思う? 好きなだけワシントンにいてちょうだい。わたしはずっとひとりでうまくやってきたんだから」
「それはわかっている」リンチは言った。「だが、この事件はいつもとちがう。犯人が狙っていたのは被害者たちだけじゃない、きみのことも狙っていたんだ。きみを念頭に置いて殺人を計画している。次に何が起こるかわからない」
 ケンドラはしばらく黙っていた。ケンドラ自身も同じことを考えていた。
「次に何が起こるかは、わたしたち全員よくわかってるわ」ケンドラは静かに言った。「FBI支局のボードに張り出されている事件のどれかが起こるのよ」
 ふたりは黙りこんだまま、ケンドラのコンドミニアムまで戻った。
 なぜリンチがいなくなることがこんなに不安なのだろう。リンチなんて必要ないのに。誰も必要ないのに。
 二十四時間前までは、リンチはわたしの心からいちばん遠いところにいた。それなのに、ほんの数時間パートナーとして過ごしただけで、これがなくなることにこんなにも動揺している。
 リンチの言うとおりだからだ。この事件はほかとはちがう。そして、認めたくはないけれども、大型ハンマーがそばにいてくれるのは心強かった。
 リンチはコンドミニアムの前で車を停め、エンジンをかけたまましばらく黙っていたが、やがて口を開いた。「ぼくの電話番号は知っているな。連絡を絶やさないようにしてくれ、いいな?」
「わかったわ」
「それから、ケンドラ……」
「何?」
 リンチは身をかがめ、ケンドラの唇にキスをした。
 ケンドラは凍りついた。いったい何が起こったの? 最初に頭に浮かんだのは、体を引くことだった。けれども次の瞬間、体を押しつけたくなった。二番めの本能が勝利をおさめ、気づくとケンドラはキスを返していた。
 力強さ。ぬくもり。安心感。
 これまでは、リンチから接触や誘いがあるとしたら、セックスや情熱に関するものだろうと無意識に想像していた。守られている、大切にされているという感覚を味わうとは思ってもいなかった。これはいったい……。
 やがて、リンチが体を離した。「何を考えている? 言ってくれ」慎重な声だった。
「質問責めにしてあなたを困らせる気はないわ」ケンドラは息をつき、心臓を落ち着かせようとした。「これはあなたにとって、一時的な衝動にすぎないとわかってる。わたしにひとりで捜査をさせることを申し訳なく思って、その気持ちが行動に表れただけなのよ。とても……親切なことだけど、そんな必要はまったくない」
「ぼくの心理と行動を分析してくれてありがとう」リンチは皮肉っぽい声で言った。「きみの分析が正しいのかどうか、きみにはわからないのが残念だな。さぞかし苛立たしいだろう」そして、ケンドラの鼻の頭にもう一度軽くキスをした。「気をつけて」低くささやく。
 ケンドラはすばやく車から降り、逃げるように建物に入った。後ろを見ることなく。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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