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完璧令嬢の愛され新婚生活〜貴公子は新妻を甘やかす〜

完璧令嬢の愛され新婚生活〜貴公子は新妻を甘やかす〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

どれくらいはしたない身体になるか楽しみだね
欠点がないのにもてない令嬢の遅い初恋は、まさかの結婚相手!?

バージェス家のアレーナはある日、突然、王妃に結婚するよう命じられるが、なんとその相手は彼女が密かに慕っていた美貌の青年、ローデリックだった。「可愛いな。君は可愛い」何か事情を抱えつつも、アレーナを優しく抱き、夜ごと悦びを教えるローデリック。好きな人に愛される幸せを噛みしめながら彼のことをもっと知りたいと願うアレーナは!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 その溜息には、深い呆れが滲んでいた。
 でも、アレーナにとっては、すごく甘い響きに感じられて、思わず俯き顔に手を当てる。手の甲に触れる頬が熱い。暖炉がぱちぱちと弾ける音と、夜風が窓を揺らす。
 それ以外は音のない部屋で、この心臓の音が伝わってしまう気がして、アレーナは思い切って言った。
「あの。ローデリック様は、私の夫になられた、訳ですけど……」
「ああ」
「その、……どうしましょう?」
 やっと最後に顔を上げて彼を見る。彼は意表を突かれたようにゆっくりと目を瞬いた。
(もっと、もっとなにか……──)
 例えばなんでもないことのように淡々と、事務的に口にできたら格好いいのかもしれなかった。けど、恥ずかしい。
 やっぱり耐えられなくて、視線を逸らしかけた。でもその前に、ローデリックが笑う。堪えきれなかったみたいに。
「いや、失礼……」
 口元を握った拳で隠して、軽く咳き込むように息を整える。
 額を隠す黒い髪で、目元まで影が落ちている。ほんの少しその顔に滲む疲れが、この濃い陰影を描く室内では色気のようにも見えた。
 すらりと伸びる首筋だとか、合わせから少しだけ覗く素肌だとか。
(やっぱり、ローデリック様こそ何もわかってない)
 きっと彼ならその魅力で、世間知らずの純情可憐な気持ちの優しい少女を落とすことなど容易い。そうしてそのまま囲ってしまえばいいのに。
 そんなローデリックを前に、緊張ばかりしてる自分が嫌になる。
 意識しているのはアレーナだけだ。
「どうしよう、ね。君はやはりもっと、危機感を持った方がいい」
「……え?」
「君も聞いていただろう? あの方は俺たちの子が見たいと言った。つまり俺たちは名ばかりの夫婦ではあるが、……そのままで居続けることも許されない。そういうことだよ」
「あ……」
 アレーナの顔が真っ赤に染まる。確かに王妃はそう言っていた。現れたのがローデリックだった、その驚きで聞き流してしまったけれど。
「そう、でした。ね……」
 だから彼はあんなに愕然としていたのか。
 いまさらそれに気づく自分は、確かにローデリックからしたら迂闊にしか見えないのだろう。笑われたって仕方ない。
「まあ、そういうことをしても子供に恵まれない夫婦もあるが」
「それは、でも……──」
 努力したが実らなかった。と、そんな風に謀るなんて。
 それを王妃と親しいのだろうローデリックにさせる、なんて選択はアレーナにはできない。思わず顔を上げ、そう訴えようとして。
(でも、それって……)
「どうしたい……?」
 気がつけば唇が触れる位置で囁かれていた。
 吐息が触れそうで息を詰める。見つめてくる彼の視線に胸が高鳴った。
 もしかしたらアレーナは彼の容姿に弱いのかもしれない。これまで外見ばかり褒めそやす男性を見下していたくせに。
(でも、一番好きなのは……)
 その優しそうなまなざしだ。
 アレーナはただ息を止めてその瞳を見つめた。どうしたいかなんて、そんなこと恥ずかしすぎて口には出せない。
 ゆっくりと重なっていく唇。その感触に心臓が跳ねた。
 恥ずかしくてたまらない。どうしていいかわからない。ただ身を堅くするアレーナに優しく触れた唇が、またゆっくりと去っていく。
「嫌だったろうか」
「……え?」
「緊張してる」
「それは、だって……慣れてない、から」
「そうか」
 彼の指先が頬を滑り親指がアレーナの唇に触れた。その視線だけで動けない。
 また唇が重なった。軽く触れて、離れて、その合間に囁かれる。たぶん同じようなことを、彼のその声は囁いているのだろう。
「……ッ」
 言葉を紡がないと。
 返事をするべきなのに、どうしていいかわからなかった。囁く彼の唇が離れる、と言っても体温がはっきり伝わる距離だ。
 今、ほんの少し顔を上げれば彼の瞳を覗き込めるだろう。
 そう思った瞬間に目を上げていた。思った通り、その黒い瞳がアレーナを見つめている。
(心臓が、痛い……)
 どうにかなってしまいそうだった。
「アレーナ……?」
「あ。……大丈夫、ですから、このまま」
「このまま?」
「──キス、して」
 告げた途端、舌が歯列を割って入り込んでくる。
 唇よりずっと熱い。驚いて上げた小さな声も全部呑み込むみたいに重ね合った唇の間で、くちゅりと音が鳴った。
 恥ずかしい。すごく。息が止まりそうなほど。
 なにか思うより先に身体が逃げようとした。でも、その背中にはとうに彼の腕が回っていて、大きな手のひらが宥めるように背中を撫で上げる。
 ぞくん、と脊椎を駆け上がるのは、あの日覚えた感覚だった。
「ぁ……」
 刺激を追うように、あるいは逃げるように背中が反る。
 同時に滲んだ涙を弾くみたいに、瞼が持ち上がった。恥ずかしさに潤む視界の向こう、ローデリックのその黒い瞳に捕まった途端、全身を甘い痺れが覆う。
 ずっと見ていたのだろうか。ローデリックは、アレーナを。

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