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心、止められなくて【ハーレクイン・ディザイア傑作選】

心、止められなくて【ハーレクイン・ディザイア傑作選】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアハーレクイン・ディザイア傑作選
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルーシー・ゴードン(Lucy Gordon)
 雑誌記者として書くことを学び、ウォーレン・ベイティやリチャード・チェンバレン、ロジャー・ムーア、アレック・ギネス、ジョン・ギールグッドなど、世界の著名な男性たちにインタビューした経験を持つ。また、アフリカで野生のライオンがいるそばでキャンプをするなど、多くの貴重な体験をし、作品にもその体験が生かされている。ヴェネチアでの休暇中、街で出会った地元の男性と結婚。会って二日で婚約し、結婚して二十五年になる。二人は三匹の犬とともにイングランド中部に暮らしている。

解説

いつかきっと打ち明けよう。でも、今はまだ……。

メラニーは、若き実業家ジャイルズ・ヘイヴァリルの養子、デイヴィッドのナニーに雇われた。デイヴィッドはメラニー自身が10代のとき未婚のまま産み、やむなく養子に出したが後悔し、一目会いたいと願っていた愛しいわが子。1年ほど前のジャイルズの離婚以来、息子は孤独な日々を送っていた。ジャイルズはメラニーがデイヴィッドの実の母親とは知る由もない。だがやがて、ジャイルズへの情熱的な愛が芽生えたとき、メラニーは自分の中の欲望に戸惑いをおぼえた。秘密を知られたら、わたしはデイヴィッドばかりかジャイルズも永遠に失ってしまうのだわ……。

■様々な時代の選りすぐりのディザイアの話題作をお贈りする“ハーレクイン・ディザイア傑作選”。今作は、大御所ルーシー・ゴードンのナニーがヒロインの物語です。素性が知れればわが子を奪われると怯えながらも、ヒーローへの恋心は抑えきれなくなって……。

抄録

「もっと早くなにか用意するべきだった。最近はうっかりしていることが多くてね」彼は壁際のパーコレーターに近づいて、コーヒーを注いだ。「ミルクと砂糖は?」
「ミルクだけお願いします」
「きみのことを聞かせてほしい」ジャイルズ・ヘイヴァリルはメラニーの前にコーヒーを置くと、椅子に腰かけた。「書類では、たしか十六のときに学校をやめたとか。大学には進学しなかった?」
「姉二人と兄一人はみんな大学に行きましたが、わたしは行きたいと思わなかったので」
「なぜ? 変わり者だったから? つまり、一家の黒い羊だった?」不意に笑みをひらめかせ、からかうような表情を浮かべると、思いがけず彼は人好きのする顔になった。
「そのとおりです。手に負えない子でした」
「それなら、きみはデイヴィッドに似ている――気をつけて! 大丈夫かい?」
「ごめんなさい。のみこみそこなって」メラニーはあえいだ。
「どうかしたのか? デイヴィッドと似ていると言ったのが気に障ったのかな?」
 ヘイヴァリルの射すくめるような視線を浴びて、メラニーはたじろいだ。ほかにも息子と似ているところがどれだけあるのかしら? 「とんでもない。デイヴィッドと似ているなんて、うれしいです。彼に必要なのは理解でしょうし、それならわたしに任せていただいて大丈夫。幸せじゃないから悪さをするんですもの」
「きみは子供のころ、不幸せだった?」
「一家の黒い羊では、楽しいはずがありません」
「だが、すべて昔のことだ。今では、きみもご両親の自慢の娘に違いない」
 メラニーは長いあいだ黙っていたすえに言った。「家は捨てました――もう何年も前に」
 ジャイルズ・ヘイヴァリルはメラニーが先を続けるのを待っていたが、彼女はそれ以上言わなかった。彼はしばらく、しかめっ面で値踏みするようにメラニーを見つめたあと、不意に言った。「そこではきみがよく見えない。こっちに来てくれ」
 ジャイルズ・ヘイヴァリルは立ち上がって、大きな出窓の方に近づいた。メラニーはあとに従い、彼が観察するあいだ、明るい場所に立っていた。彼女からもジャイルズ・ヘイヴァリルがよく見えた。年のころは三十代半ば、権力の座につくために生まれてきたようないかめしい顔をしている。意外なことに、口元は形が美しく表情豊かだ。多くの女性が魅力的だと思うだろう。メラニーを観察する今、彼の口元は先ほどの緊張が解けていた。メラニーはそんな口元や彼の目を見て、彼は不幸な人間に違いないと思った。だが、同情はまったく感じない。相手は、メラニー自身の不幸の種を蒔いた男なのだ。
「髪を下ろしてくれ」
「えっ?」
「いいから、言われたとおりにするんだ」
 メラニーはピンを抜いて髪をほどくと、ジャイルズ・ヘイヴァリルに挑戦的な視線を投げた。彼はメラニーの肩先になだれ落ちた髪に手をすべらせ、絹のような感触を楽しんだ。
「美しい髪だ」
「わたしの容貌と、なんの関係があるんです?」
「関係があるのはきみも承知しているはずだ。美しいのを隠そうとしたから髪をまとめたんだし、化粧をしていないのも、厳格なキャリアウーマンらしく見せたいからだ。だが、それも無駄だ。きれいで魅力的な顔立ち、すばらしい緑色の目。おまけにその体とくれば、男が放っておかないだろう」そう言う彼の口調は冷静な評価者のものだった。「ぼくがきみを雇えないことくらい、百も承知のはずだ」
 メラニーは心臓が止まるかと思った。「いいえ、わかりません」
「デイヴィッドに必要なのは安定した生活だ。つかず離れずの関係で、一緒にいてくれる女性が必要なんだ。独身か、離婚した中年の女性で、子供が大きくなって孫までいるような女性がね。きみは若く美しい。つまり、じきにやめるということだ」
「そんなことは決して――」
「いや、そうに決まっている! きみの年齢なら、だれかと恋をして結婚するのは目に見えている。二、三カ月してデイヴィッドがやっと慣れたころにやめてしまうというのは、ぼくの望むところではない」
「そんな心配はいりません」
「目下フリーだと言いたいのか?」
「恋人はいません」
「信じられないな。生まれつきそれだけの容姿に恵まれていれば、蜜壺に群がる蠅のように男が寄ってくるはずだ。ぼくは女性には免疫があるから、大丈夫だが」
「だれが群がろうと無駄です。わたしもあなたと同じく、異性には免疫がありますから」
「ほう? 女性が恋愛に興味がないと言えば、たいていは失恋の後遺症だ。相手が戻ってきて、きみをさらっていくことはないだろうか?」
「あなたには関係ないでしょ――」
「ぼくが関係あると言えば、関係ある」
「でも、恋愛といえば、思い出すかぎり、九年前に一度あったきりで、あれ以来なにもありません。信じていただいて大丈夫です」
 しばらく沈黙が続いた。彼は口答えされるのに慣れていないのかもしれない、とメラニーは思った。どうか追い返されませんように!
 とうとうジャイルズ・ヘイヴァリルが口を開いた。「きみの言葉を信じるより仕方なさそうだ。ぼくが雇いたいのは、デイヴィッドの気持ちを落ち着かせて、愛されていると感じさせることのできる女性だ。きみはどうだろう?」
「できます、だれよりも上手に」
 ジャイルズ・ヘイヴァリルはメラニーの声のひたむきさに驚き、またしてもこの女性を厄介払いしたいという衝動に駆られた。これは危険な女だ。だが、彼はそんな衝動を抑えこんだ。ばかげた妄想だ! 「そういうことなら、デイヴィッドを捜しに行こう」


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