マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

尖塔の花嫁【ハーレクイン・セレクト版】

尖塔の花嫁【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ヴァイオレット・ウィンズピア(Violet Winspear)
 ロマンスの草創期に活躍した英国人作家。第二次大戦中、十四歳の頃から労働を強いられ、苦しい生活の中から“現実が厳しければ厳しいほど人は美しい夢を見る”という確信を得て、ロマンス小説を書き始める。三十二歳で作家デビューを果たし、三十余年の作家人生で約七十作を上梓。生涯独身を通し、一九九八年に永眠するも、ロマンスの王道を貫く作風が今もファンに支持されている。

解説

亡くなった娘に顔かたちが似ているという理由で、10歳のグレンダは孤児院から養母のもとに引き取られた。養母はグレンダを大切に育ててくれたが、後ろ暗い秘密を打ち明けたのは、死の床でだった。じつは養母は娘を将来嫁がせる見返りとして、ある大富豪から莫大な援助を受けていたというのだ。わたしを引き取ったのも、娘の死を隠し、贅沢な生活を続けるためだったの?深く傷ついたグレンダは、それでも養母の名誉を守るため、結婚を承諾する──ロワールの城に住む、大富豪マルローとの。

■読み始めれば瞬時に独特の世界に引きこまれる、稀代のストーリーテラー、ヴァイオレット・ウィンズピアの大ヒット作をお贈りします。陰気な城や、顔に傷を持つ謎めいた夫を、はじめは恐れていたグレンダでしたが、次第に彼に惹かれはじめ……。
*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 グレンダはどうせ嘘をつくなら、その子になりきったほうがいいととっさに思った。
「ねえ?」彼女はつぶやいた。「母はあなたのお祖父様にわたしは心臓が弱いってことを伝えていなかったの?」
 マルが息をのむのがわかった。いまの言葉を反芻するように今度は彼が押し黙る。グレンダは彼の頭をよぎっていることがわかるような気がした。彼女は抜けるように肌が白いし、結婚式で祭壇に立ったときはがたがた震えていた。さらに結婚証書にサインしたあと気を失って倒れてしまったのだ。そのとき抱き上げてくれたのはマルだった。マルはおそらく幽霊のように生気のないグレンダの顔を見ただろう。
 マルは黒い眉を寄せ、彼女を見下ろした。「きみのお母さんはそんなことはひと言も言ってなかった。それに心臓に持病があるようにはきみは見えないじゃないか!」
「でもそれがあなたに何の関係があるの?」グレンダは勇気を振り絞って、彼の冷ややかな顔を見返した。「あなたはすでに自分がいちばんほしいものを手に入れたんでしょう。この城を」
「マダム」彼は手を振り上げた。「何も知らない小娘のふりをするのはもうやめるんだ! ぼくはいずれ、会社とこの城を息子に譲りたいと思っている。きみにもそのくらいわかるだろう。それともそれがわからないほど、きみはばかなのか?」
 グレンダはぞっとして、彼を見つめた。目に怒りがくすぶっている――鉄が炉のなかで赤く焼けるように。
「わたしたちは互いをだまし合っていたのね」彼女は声を震わせてそう言った。
「違うな。息子を持つことはぼくにとって大切なことだ……きみはそうは思ってないようだが」
 その言葉は鉄の破片のように胸に突き刺さったが、グレンダはそれでも言い返した。「わたしがあなたにとっていくらかでも価値があるなんて思ってもいなかったわ。けれども、こうやって目の前に立っていると、あなたの本性が透けて見えるようね」
「ぼくの本性とは?」
「鉄のような人。デュバル・マルローと同じ鋳型で成型された人。そもそも彼があなたをそうなるように育てたのかもしれないわね……あなたは何があってもその形を変えることはない」
「そうだな」彼は頬の傷に手で触れた。マルは肩にもひどい火傷を負ったとアーサーが話していたことを彼女は思い出した。
 そう思ったとたん、グレンダの体は震えた。褐色の肌を引き立てる白いスーツとシャツに包まれた体を想像したからだ。マルは冷徹だが、その一方でラテンの血を引いているだけあって、なまめかしくて官能的だ。彼のたくましい体のなかには情熱が駆けめぐっているのだろう。
 彼がバートン・ル・クロスに来なかったのは、おそらく仕事が忙しかったせいだけではない。ほかに女性がいて、その人と記憶のなかの少女は、芳醇な赤ワインとミルクほども違うのだろう。
「ぼくはきみの言いなりになる気はない」彼はグレンダの蒼白な顔を見つめた。「ぼくのものになったからには、会社にもこの城にもデアスの名前が受け継がれるようにするつもりだ。さあ、身支度を調えてくるんだ。それからぼくたちの未来に乾杯して、夕食をとろう」
 マルは彼女の手を引き、椅子から立ち上がらせた。グレンダは背が低いわけではなかったが、頭の先が彼の顎にしか届かなかった。それからマルは強引に彼女を胸に引き寄せた。グレンダは、彼が心臓が悪いという嘘を信じたとしても、自分の計画を変えるつもりはないのだと悟った。そう思うと、体が震えたが、それをおさえようとはしなかった。彼に触れてほしくないことをはっきりと伝えたかったからだ。
 マルは彼女の顎に手をかけて顔を持ち上げ、まつげが影を落とす琥珀色の目をのぞきこんだ。グレンダは典型的な美人ではないが、荒々しい自然の残る神秘的なウェールズ地方の少女の特徴を受け継ぐ、不思議な魅力の持ち主だった。
「きみがぼくを怖がっているんだったら、がっかりだな。臆病な息子はほしくないんだ」
「怖がってなんかいないわ」グレンダは彼の言葉にひるまないように胸を張った。「怖がって、あなたを喜ばせたくないから」
「きみにはべつの喜びをぼくに与えてほしいね」マルは唐突に頭をさげ、すばやく唇を重ねた。彼女の口からもれた悲鳴は、彼の荒々しいキスに封じこめられた。その激しさに圧倒されてグレンダは抗うことができなかった。頭がくらくらし、力なく彼の腕にもたれかかる。彼女が荒く息をつくと、マルはようやく唇を離して頭を上げ、黒いまつげの下から彼女の顔をのぞきこんだ。それから螺旋階段を指さした。ふたりは広々とした居間にいたが、階段の上に寝室があるらしい。
「さあ、支度するんだ。頬紅をさすのを忘れるなよ。幽霊と食事しているような気持ちにはなりたくないからな!」
「わたしひとりで支度するわ」グレンダは階段を上がりかけたが、くるりと振り返って言った。「わたしはこういう性格なんだから、慣れることね」


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。