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恋するアテネ【ハーレクイン・セレクト版】

恋するアテネ【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 ジュリア・ジェイムズ(Julia James)
 十代のころに初めてミルズ・アンド・ブーンのロマンスを読み、それ以来の大ファン。ロマンスの舞台として理想的な地中海地方、そしてイギリスの田園が大好きで、とくに歴史ある城やコテージに惹かれるという。趣味はウォーキング、ガーデニング、刺繍、お菓子作りなど。現在は家族とイギリスに在住。

解説

アンドレアのもとに、ある日一通の手紙が届いた。差出人は裕福なギリシア人の祖父──アンドレアの母が身ごもったとき手酷く追い払った冷酷な人だ。今ごろになって呼びだすなんて、どういうつもり?病気の母の看護と借金のせいで1日中働き詰めのアンドレアは、悩んだ末、もし支援をお願いできるならと、ギリシアへ飛んだ。ところが到着するなり、ゴージャスな男性ニコスにでくわし、彼から明らかな蔑みの視線を投げつけられて衝撃を受けた。いったい彼は何者なの?その答えは、ディナーの席でわかった。実業家ニコス・ヴァシリス──アンドレアの“婚約者”だった!

■純粋で健気で、それでいて芯の強いヒロインを描くジュリア・ジェイムズ。今作でもその実力をいかんなく発揮しています。便宜結婚から始まる、胸に迫る切ないロマンスをお楽しみください。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「さあ、気を落ち着けて」ニコスは低く言った。
 時間が止まったようなそのいっとき、アンドレアは、思いがけないやさしさを発揮してくれた知らない男の腕に抱かれたままになっていた。
「ごめんなさい」もそもそと言った。「父が暮らしたこの家に来て、かつては父が現実の存在だったことに気づいたせいだと思いますわ」
 アンドレアは体を引いたが、ニコスがまだひじをつかんでいたので完全に離れることはできなかった。
「お父さんのために泣くのを恥じることはない」ニコスは静かに言った。「あなたが泣くのはお父さんにとっては誇らしいことなんだから」
 アンドレアはニコスの顔を見上げた。星空の下でまつげについた涙がダイヤモンドのように輝いた。やわらかそうな口元が震えている。
 ニコスは我慢できなかった。たとえ地震で足元が崩れたとしても、自分を抑えられなかっただろう。
 ニコスの唇がアンドレアの唇に近づいた。両手をアンドレアの背中にまわし、彼女を引き寄せる。アンドレアは軽くあえいだ。それが十分なきっかけとなった。ニコスはアンドレアの開いた唇の間に舌をすべり込ませ、ゆっくりと官能的に動かした。アンドレアが震えているのがわかり、欲求がわき上がった。アンドレアはまさに自分が望む状態になっている。自分の腕の中で体が熟し、唇が敏感になっている。
 ニコスはキスを深めた。両手が自然に動いてアンドレアの背中をすべり下り、まろやかなおしりのふくらみをたどった。
 アンドレアの中で激しい感覚が渦を巻いた。ニコスに寄り添ったまま、体が溶けていくような感じがした。温かい震えが全身を走った。欲望に引き込まれる感じ以外、何も考えられなかった。
 次の瞬間、ざらざらする現実感とともにアンドレアは正気に戻り、ニコスから体を離した。ショックに襲われ、震えた。
「やめて……」
 だが、ニコスはまだアンドレアの背中を両手で支えて放さなかった。アンドレアは上体をそらせた。そうすることでかえって胸がニコスに向かって突き出され、彼を誘うしぐさになるとはまったく気づかなかった。
「やめて」ふたたびかすれた声で言い、ニコスの腕をはずそうとした。ニコスはそれを察して手を放した。それはさらに強くアンドレアを抱き寄せようとする本能に逆らうことだったが。
 アンドレアがほしかった。エズミやザンシに感じる冷静な性欲とはまったく違って、差し迫った痛いほどの欲求だった。そう気づくとショックだった。この女性がじきに自分の妻になるからだろうか? 原始的な執着心なのだろうか?
 いずれにせよ、激しい独占欲がわき上がった。自分を取り巻く女性に対して所有欲を感じたことは、これまでは一度もなかった。彼女たちにとって、自分は、ほかのたいていの男より見た目がよくて金もある、もうひとりの男にすぎないとつねに悟っていた。これまでの女性とのつきあいでは、自分と相手のどちらも排他的になることはなかった。エズミにとってもザンシにとっても、男は自分ひとりではないと知っている。
 そんなことは気にならなかった――アンドレアがほかの男のことを考えていると感じる場合とはまったく違って。
 独占欲はさらに激しさを増した。それは慣れないうえに酔うような感覚で、ニコスは完全に我を忘れた。
 その一方で、自分はあまりにも速く進みすぎていると気づいてもいた。あまりにも速すぎる。自分にとっても、アンドレアにとっても。
 ニコスはアンドレアにじっと目を注いだ。アンドレアは、まだニコスが手をのばせば届くところに立っていた。だが、彼女の目に浮かんだ表情がニコスの手を押さえた。ショックが目にあふれていた。
 一瞬、ニコスは有頂天になった。アンドレアも自分と同じように感じているのだ、まるで天の啓示が世界をまったく別の目で見るように彼女をしむけたかのように。そう思ったが、次の瞬間、頭が冷えるとともに気がついた――アンドレアの反応は自分よりも複雑なものだ、もっと不安がこもっている。
「アンドレア」静かに言った。「脅えることはない。すまなかった、僕はせっかちすぎた」苦笑いを浮かべて続けた。「君がきれいすぎるせいだ」
 アンドレアは身震いした。ニコスは私に引かれている。そのために、ほんのわずかに知り合っただけで私に飛びかかったのだろうか?
「そんな目で僕を見ないでくれ。君が望まないかぎり、僕はもう君に触らない」ふたたび、形のいい口元に苦笑いが浮かんだ。「だが、君が触られたいと思うように僕が懸命に努力しても、それは僕のせいではない」
 ニコスはアンドレアから一歩引き下がり、手を差し出した。
「さあ、少し話をしよう。何はともあれ、僕たちにはいろいろ話すことがある」
 ふたりはゆっくりとテラスの端に向かった。ほてった顔に夜の風を受けて、アンドレアはつかの間、息がつく余裕ができた。だが、頭の中は胸と同じように激しく駆けめぐっていた。
 いったい私は、かつて経験したことのないようなキスをしたこの人とここで何をしているのかしら?


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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