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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ 別冊

大富豪の天使を抱いて

大富豪の天使を抱いて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャスリン・ロス(Kathryn Ross)
 ザンビア生まれのイギリス育ち。現在はランカシャー、アイリッシュ海に面するブラックプール郊外に住んでいる。ビューティー・セラピストとしても活躍する異色の作家。旅行が大好きで、多くの国々を訪れた。社交的で明るい射手座の女性。

解説

4歳になる娘セアラを一人で育てるヘザーは、ある会社の宣伝部長との約束に遅れてしまい、代わりに運よく社長と会えることになった。その社長がライアン・ジェイムソンとは思いもよらなかった――4年半前、あれほど愛しながら妊娠を告げないまま別れた人。もう二度とライアンには会いたくなかったのに。でも、私の企画が採用されれば、また顔を合わせることになる。時間に遅れた理由を話したら、彼はなんと言うだろう?

■〈ロマンス・タイムマシン〉と題してその年の名作をお贈りする企画、1993年の今回は、キャスリン・ロスのシークレットベビーがテーマの物語。恋人の浮気を知って、妊娠を告げぬまま別れたヒロインが思いがけず、彼と再会。娘の存在を隠し通そうとしますが……。

抄録

 振り返って娘の小さな姿を見たとたん、涙がこみ上げてきた。まだこんなに小さいのに、置いていかなければならないなんて。バッグとコートを取り上げたとき涙があふれてきた。ヘザーはそれきりもう振り返らず、寝室をあとにホールに向かった。ライアンに入ってこられたくない。焦るあまり玄関を飛び出し、彼と正面衝突するはめになった。
 ライアンはとっさにウエストに腕をまわしてヘザーを支えた。一瞬、懐かしい腕に抱かれた形になり、たちまち心臓が重く鼓動を打ち始める。
「ごめんなさい」ぼうっとした瞬間が去り、ヘザーは口ごもりながら体を離した。長身でハンサムな彼を見上げた目にはまだ涙が光っていた。
 ライアンはいぶかしげに眉を寄せた。深いブルーの目がシナモン色のスーツを着たきゃしゃな体から青ざめて目をうるませた顔へと滑っていく。この鋭いまなざしが涙を見逃したはずはない。ヘザーはあわてて顔をそむけた。
「支度はいいかい?」ライアンはよそよそしく尋ね、彼女の荷物に手を伸ばした。
 ヘザーはうなずき、振り返ってドアを閉めた。
「テレビがついたままだぞ」ブルーの目は彼女の顔から離れようとしなかった。
 スーザンがつけっぱなしにしているのだ。磁器のようにきめ細かな頬が火照ってくる。どうしよう? テレビを消しに戻ったら、ライアンがついてくるという危険がある。おもちゃが散らかっているかもしれないし、もっと悪いことには足音を聞きつけたセアラ自身が飛び出してこないとも限らない。そう、戻るのはやめておこう。
 ヘザーはけんか腰に顎を突き出した。「留守番を頼んであるんです」
「なるほど」皮肉たっぷりに言うと、彼はそれきり振り向きもせず階段を下り、通りに出た。
 どうしたというのだろう? ヘザーは不審に思いながら足早にあとを追った。
 身を切る寒さから暖かい快適な車内に入るとほっとした。ライアンはシルバーのランボルギーニのエンジンをかけ、車は力強く発進した。
 ヘザーは思わずセアラの寝室の方を振り返った。留守の間、何事もなければいいけれど。もし熱が上がって、ひと晩じゅうわたしを求めて泣き明かしたりしたら? 彼女は喉につかえた涙の塊を必死でのみ下した。
「大げさだな、たかがひと晩彼と離れているだけのことじゃないか」険しい声にヘザーはふっと現実に引き戻され、驚いた目を傍らの男性に向けた。
 アパートに男性がいると思っているんだわ! この嫌悪の表情からすると、どうやら相手はリチャード・クレイヴァンと信じているらしい。あまりにばかげていて、ヘザーは苦笑せずにいられなかった。
「彼と暮らしているのか?」やぶからぼうな質問に、微笑はさっと消えた。
「わたしの私生活はあなたには関係ないと思いますけど」ヘザーは取りつく島もない声で言うと、にぎやかなマンチェスターの通りに目を据えた。
 金曜の夜の込み合った道でも、ライアンはパワフルな車を巧みに走らせていく。その腕前には感心せずにはいられなかった。だが、思い出してみると彼の運転の腕は以前も確かで、いつも安心していられたものだ。ヘザーは横目でちらりと彼を盗み見た。
 どうやらだいぶリラックスしてきたようだ。まだいくぶん眉をひそめているとはいうものの、もうさっきの怒りは影をひそめている。ヘザーの目は真っすぐな鼻筋から厳しい唇の線、そして割れ目の入った顎へとさまよっていった。この数年の間に昔よりさらにハンサムになったように見える。今は三十五歳になるはずだ。戸外で過ごすことが多いのか、肌は健康そうなブロンズ色に日焼けしている。アメリカから戻ってどのくらいになるのだろう?
「どうだい、この数年でずいぶん変わったかい?」ライアンが前の道路に目を据えたまま唐突に言った。
 ヘザーは頬を染め、膝の上の手に目を落とした。彼はずっと見つめられていたのに気づいていたのだ。「あんまり変わっていないわ」それはほとんど聞き取れないほどの小声だった。
「きみは変わったな」視線が道路をはずれ、ちらっとこちらに向けられた。「どこかが違っている」
 そうでしょうね。ヘザーは苦々しく思った。彼の子供を産んだのだから、変わらずにいるほうがおかしいわ。心身ともに成長し、ライアンと初めて出会ったころの屈託ないわたしとは違う。
「ご主人は二、三年前に亡くなったと言ったね」彼は道路に目を戻した。「結婚生活は長くはなかったわけだ。なにしろ、ぼくたちのアバンチュールが終わってから四年半にしかならないんだから」
 この気安い言い方には心がうずいた。なぜこんなふうに感じるのかは自分でもわからない。なんといっても過去の二人の関係はアバンチュールとしか呼べないものだったのだから。ライアンにとってはなんということのない一時的な関係。それなのに、わたしの生活は根底からひっくり返ってしまった。なんて不公平なのだろう。苦い苦悩がわいてくる。だが、セアラを産んだことへの後悔はなかった。セアラこそわたしの生きがいなのだから。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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