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億万長者の隠された絆 ディ・シオーネの宝石たち 4

億万長者の隠された絆 ディ・シオーネの宝石たち 4


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンスディ・シオーネの宝石たち
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

6年前、ひそかに産んだ愛しい我が子を、駆け引きの道具にはしたくない。

ダリオ・ディ・シオーネは自他ともに認める仕事人間だ。その彼が仕事を離れてマウイ島を訪れたのは、祖父のためだった。家宝のイヤリングを取り戻せば、病床の祖父も安堵するはず。ところが交渉相手として現れたのは、あろうことか別居中の妻、アナイスだった。一方、アナイスも動揺を隠しきれなかった。6年前、ダリオは彼女の浮気を疑い、家を出ていった。濡れ衣を着せられても、いまだ彼への想いは変わらない。ダリオは驚くかしら?あなたには息子がいるのよと告げたら……。

■人気作家らの夢の競演で紡ぐミニシリーズ〈ディ・シオーネの宝石たち〉第4話をお贈りします。人気急上昇中のケイトリン・クルーズが描くのは、ひと味違ったシークレットベビー物です。

抄録

 ダリオは助けを求めるかのように自分自身の怒りにしがみついた。今ここで支えてくれるのは、この怒りしかない。
「子供がいるという大事な話なら、その気になればいくらでも伝える方法はあったはずだ。これもまた駆け引きか何かなんだろう? まったく、君という女はよく‘ねた’が尽きないな」
「方法がなかったから今日話したの。あなたが私のもとを去ってからようやく再会できたのが今日だもの」口調は氷のように冷たいが、まなざしはそれとは対照的に熱く燃えたっている。「駆け引きですって?」アナイスはあきれたようにかぶりを振った。「これ以上あなたの暴言に耳を傾ける必要はないわ。逃げ隠れしていなかったら、もっと早くに子供の存在について知っていたでしょうけど、それについてあなたがどんな感情を抱こうと、私には関係のないことよ。あなたに何かしてほしくて話したんじゃない。正しいことだから伝えたまでよ」
「アナイス……」
「それじゃ、これで失礼するわね」ダリオの呼びかけを無視してアナイスが言った。黒い瞳はなんらかの感情を映して輝いている。それが何か、ダリオはわからなかった。いや、そもそもアナイスに感情があるなどと思うほうが間違っている。「このことを知ってあなたがどうしようと、私には関係ないわ。自分で大きくした傷口を、せいぜいなめつづければいいんじゃない? お得意の被害者意識にひたって、大事なことを知らせてもらえなかったって、ずっとすねていればいいのよ」
 ダリオはもう耐えられなかった。彼の中には歴然とした怒りとともに、もっと危険で本能的な何かが渦巻いていた。アナイスは何かを探し求めるかのように彼の顔を見ている。だが次の瞬間、その瞳が鎧戸を下ろしたように光を失った。彼女はまた背を向けようとしている。それこそが、ダリオにとって何よりも耐えがたいことだった。
 彼にできるのは、とっさに頭に浮かんだただ一つの行動をとることだけだった。あるいは、まったく何も考えていなかったのかもしれない。
 ダリオは手を伸ばし、アナイスのほっそりした首に添えると、彼女を引き寄せ、唇を重ねた。
 それは、記憶しているとおりの狂気だった。電流のように体の中を駆けめぐり、ダリオを丸ごとのみこんだあの狂気とまったく同じだった。アナイスの唇は相変わらず、こよなく甘い至福の味がした。最後に口づけしたのがまるで昨日のように、何も変わっていない。
 ダリオは体を近づけ、アナイスの豊かな髪に両手を差し入れると、顔の角度を変えさせてさらにキスを深めた。
 アナイスもキスを返してきた。ダリオの記憶にある限り、彼女がキスに応えなかったことは一度たりともなかった。
 アナイスはダリオを迎え入れ、舌をからませた。二人の間の熱がいっきに燃えあがる。欲望もあらわな飢えたようなキスは、同時に痛みを伴うものでもあった。これが自分にとって最悪の行動であることはダリオにもよくわかっていた。
 それでもキスをやめなかった。渇望を口づけで満たそうとするかのように。アナイスの衝撃の告白を、自分に対する非難を、そして二人を隔てていた六年の月日を遠ざけるかのように。六年間、ダリオは誰にもこんなふうに触れたことはなかった。誰も近づけたくなかった。親密さを感じさせるものはことごとく避けて暮らしていた。
 にもかかわらず、今、ハワイの穏やかな風に吹かれ、アナイスの唇の感触にひたりながら、なぜそうしなければならなかったのか、思い出すのがむずかしくなっていた。
 そのとき、アナイスがダリオを押しのけた。彼女の口から不満げにもれた小さなうめき声は、この午後ずっと浴びせかけられていた敵意と同じように、彼の胸に突き刺さった。よろめくように後ろに一歩下がったアナイスは、壁に背を押しつけてダリオを見あげた。
 ダリオと同じく、アナイスもまたショックを受けているようだった。その状態は彼にとって好ましくなかった。動揺しているアナイスより、計算ずくの彼女のほうがずっと扱いやすいのだから……。
 いや、これも演技に決まっている。彼女にとってはすべて計算ずくなのだ。
 もう何もかもがやりきれなかった。生暖かい風も、手つかずの自然も。何かをはらんだようなこの風に吹かれていると、頭が混乱し、落ち着かない気分になる。六年前に僕を裏切った妻は、相変わらずこの世で最も美しい女だ。情けないことに、彼女とのキスの味は一生忘れられそうにない。あたかもその美しい唇に、二度と消すことのできない焼き印を押されたかのように。それ以前の自分にはもう戻れないかのように……。
「せっかくこうして話ができたんだ。ここではっきりさせよう」ダリオはそう言ったが、その声はいつもの彼らしくなかった。アナイスにはそうさせる力がある。今もなお。「僕は離婚を望んでいる」
 ダリオとしては、自分が傷ついたのと同じくらい深くアナイスの心を傷つけたかった。この痛みも、怒りも、行き場を失って猛り狂う欲望も、そっくりそのまま彼女に感じさせたかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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