マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

炎の大富豪と氷の乙女 氷の掟

炎の大富豪と氷の乙女 氷の掟


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス氷の掟
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

あなたが黙って消えたあの日から、私の心は凍ったまま。

日々厳しい訓練を積む18歳のバレリーナ、アーニャの前に、初恋の人ローマンが現れた。燃えあがる情熱に身を任せ、純潔を捧げた彼女は、翌朝彼の姿がないことに気づいて絶望する。14年後、今やプリマとなったアーニャは、楽屋を訪ねて来たゴージャスな実業家の正体に気づいて固まった。ローマン!今ごろ私に何の用があるの?だが、冷たい態度とは裏腹にアーニャの心は乱れていた。ローマンが纏う、かつてはなかった秘密の匂いに煽られて。

■恵まれない幼少期を経て、自らの実力だけで巨万の富を築きあげた富豪たちが真の愛とめぐり逢うシリーズ、〈氷の掟〉最終話です。キャロル・マリネッリが描く珠玉のロマンスをお楽しみください。

抄録

 ローマンが眠ってしまうと、アーニャは小さなバスルームに入って床に膝をつき、明日のためにするべきことを実行した。
 ふいにバスルームの明かりがついたときの気まずさが、いままたアーニャの胸によみがえった。そのあとに続いたのは激しい口喧嘩だった。
“なぜ自分の体をいじめるようなことをするんだ?”ローマンが叫んだ。
“オーディションがどんなに厳しいものか、あなたは知らないのよ”
“だからって、そんなまねはするな! アーニャ、きみのお母さんは間違っている”
 なんとかして気まずさから抜けだしたかったアーニャはその言葉に飛びつき、母の擁護を始めた。“母さんはわたしにとって最善のことをしてくれているのよ、ローマン。あなたには家族というものがわからないんだわ”
 ローマンの目から感情が消えたのを見て取り、アーニャはいま口にした言葉を悔やんだ。
 それが、彼と交わした最後の会話になった。
 以後、アーニャは食べたものをわざと吐くのはやめた。代わりに、食事の量を制限し、厳しく体を鍛えた。
「いままでどこにいたの?」
「フランス、コルシカ島……」
「じゃあ、ほんとうに外人部隊に入っていたの?」アーニャは彼の大きな手を見つめ、必死に涙をこらえた。
「そうだ」
 一緒に過ごした貴重な時間のなかで、ローマンはフランス外人部隊に入りたいという話をしていた。傭兵には新しい名前とパスポート、出生証明書が与えられるという。
 過去が清算されるのだ。
 それはつまり、愛する人が傭兵になってしまえば、その生死は永遠にわからなくなることを意味した。
“わたしと一緒にいるより外人部隊のほうがよかったの?”
「そうする必要があったんだよ、アーニャ。ぼくは新しいスタートを切らなくてはならなかった」
「で、新しい名前は?」
 ローマンは答えなかった。きっといまの名前を明かすことは禁じられているのだろう。ひょっとしたらこうして過去を訪ねることも禁じられているのかもしれない。
「ローマンね」アーニャは自分で自分の問いに答えた。そう、彼の外見がどんなに変わろうと、アーニャにとって彼はあくまでローマンだった。「いまも外人部隊にいるの?」
「いや」
「何年くらい入っていたの?」
「十年」
 つまり、二十八歳までということだ。いま彼は三十二歳。じゃあ、この四年間は何をしていたの?
「それで、なぜ今日ここに来たの?」
 どんなに固く決意しても、離れていることができなかったから――ローマンは心のなかでそうつぶやいた。「きみが元気でいることを、自分の目で確かめたかったからだ」
「じゃ、またすぐに行ってしまうのね?」
「ああ」
 行かなくてはならない。アーニャの人生を面倒なものにしないために。
 自分が関わるといつも面倒なことになる、とローマンは自覚していた。それに、アーニャがミカとつき合っているという記事も読んでいた。
「今日ここに来てみて、きみが元気でやっていることがよくわかった」
「じゃあ、もう行って」
 だが、ローマンは動かなかった。
 そこにじっと立ったまま、二人は口ではなく目で会話を交わした。施設の広い食堂で彼の視線をとらえた遠い日々と同じように。
 わたしに会いたかった? アーニャの目がきいた。
 会いたかった、とローマンの目が答えた。石炭のように黒い目が燃えあがり、アーニャの体を熱くしていく。
 ローマンの視線がアーニャの赤い唇に落ちた。キスをするつもりだ、と彼女は察した。彼が化粧台からティッシュを取って口紅を拭き始めたからだ。
 アーニャは抵抗しなかった。
 立ち去るべきだとわかっていても、ローマンは口紅を拭く手を止められなかった。
 やっぱり、来るべきではなかったのだ。アーニャの姿を見たらすぐに帰ろうなどと、そんなできるはずもないことを、どうして考えてしまったのだろう?
 ありえない。
 互いの目をのぞきこむと、呼吸のリズムが重なった。初めてキスをしたときと同じように。
 アーニャはそっとローマンの顔を撫でた。なんてきれいな顔だろう。高い頬骨も黒い目も、彼女の記憶に刻みこまれているものとまったく変わらなかった。
「さよならのキスをするよ」彼が言った。
 キスをしてもいいか、とはきかなかった。きく必要などなかった。
 そのキスの優しさがアーニャを驚かせた。以前のローマンのキスはいつも情熱的で荒々しかったからだ。けれどいま、彼はアーニャの顎に手を添え、そっと唇を押し当てた。
 互いを再発見するキス。アーニャの唇が開き、ローマンの舌が滑りこむ。確かめ合うようなキスは、やがて激しいものへと変わっていった。
 ローマンがぎゅっと彼女を抱き寄せた。バレエ衣装が押しつぶされ、彼の唇がアーニャを蹂躙する。
 彼女の両手がローマンの胸に当てられた。彼を押しのけるためではなく、その胸のたくましさと力強さを感じるために。
 ローマンはさらに強くアーニャを引き寄せた。彼女の背中にまわされた手が腰からヒップへと下がっていく。
 舌が絡み合い、情熱が燃えあがる。もはや“さよならのキス”ではなくなっていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。