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あなたの吐息が聞こえる

あなたの吐息が聞こえる


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 マヤ・バンクス(Maya Banks)
 幼いころからロマンスを愛読し、作家になることを夢見ていた。十代になると毎日ノートを持ち歩き、想像のふくらむまま過激な愛と情熱の物語を書き続けるようになる。現在の話はそのときのものほど過激ではないが、ロマンティックという点では引けを取らない。現在は夫と三人の子供とともにテキサスで暮らしている。狩猟や釣り、ポーカーを好む。

解説

愛する人を守るためなら、この命さえいらない。絶対的人気のマヤ・バンクス、涙の最新作!

里親のもとを転々としながら、孤独で壮絶な少女時代を過ごしたイライザ。心の傷はまだ癒えていないが、信頼できる仲間もでき、今は警備会社で唯一の女性スタッフとして働いている。目下の悩みの種と言えばある事件を通し知り合ったウェイド。尊大な彼とは顔を合わせれば喧嘩ばかり。それなのに突然、ウェイドからパーティの招待を受けたうえにすてきなドレスまで贈られ、思いがけない出来事にイライザは胸をときめかせる。だがその背後には危険が忍び寄っていた――10年前の忌まわしい悪夢が、今また彼女を地獄へ連れ戻すため。

■USAトゥデイ、NYタイムズのベストセラー作家、マヤ・バンクスの最新作です。前作では脇役ながらも圧倒的な存在感だったイライザ。ウェイドとは初対面のときからうまが合わず、喧嘩ばかり。しかし、快活なキャラクターのイライザにまさかこんな壮絶な過去があったとは……担当編集も驚きました。イライザの異変に気づき、彼女のあとを追って守ろうとするウェイド。シリーズに出てくるほかのヒーロー同様、強烈な庇護欲を発揮します♪ハラハラドキドキ、そしてとっても甘い極上ロマサスに仕上がっています。

抄録

 ウェイドは驚きのあまりイライザの震える体をさらに引き寄せ、ふたりで床に崩れ落ちないように足を踏ん張ることしかできなかった。姿を消したイライザに向かって口をきわめて罵ってやろうという思いが瞬時に消えたのは、彼女がいまにも自分を見失ってしまいそうに見えたからだ。
 いや、すでに見失っているのかもしれない。そして、いま目のあたりにしているイライザは、自分を見失うという表現を超えていた。崩壊している。なにか痛みをともなう激しいものが腹部でよじれ、激しい怒りが高波のようにうねりながら広がり、胸が締めつけられる。腹を立てている相手はイライザではない。いったいなにがあって、これまで出会ったことがないほど強くて腹立たしくて堅実で献身的な女性がこんなふうになってしまったのだろうと思うと、怒りがこみあげてどうしようもなかった。
 突然、イライザに非難の言葉を浴びせたことを思いだして、なじみのない感情であるひどい罪悪感に襲われる。“自分勝手”“性悪女”“恩知らず”“グレーシーから距離を置いて傷つけている”イライザはそんな女性でないことを知っているべきだった――実際は知っていた。彼女らしくない行動に出るのは、なにかとんでもないことが起こっているからだと気づくべきだった。
 ウェイドに抱きすくめられたイライザは、できるだけ小さく体を丸めてそのまま消えてしまいたがっているように見えた。ウェイドがなにより混乱させられたのは、イライザが激しく体を震わせ、声を殺して涙を流していることだった。震えは恐ろしいほど激しく、思いきり力をこめて抱きしめていないと、体から腕がはずれてしまいそうだ。
 ウェイドは今回、心の準備をしたつもりだった。最後に会ったとき、パニックと弱々しさ、ついには恐怖がイライザの目をよぎるのを見てショックを受けてから、それ以上悪くなることはないだろうと思っていた。しかし腕のなかで身を縮めているイライザは弱さをこれでもかというほどあらわにし、とめどなく涙を流してウェイドのシャツを濡らしている。おかげでウェイドはまともにものが考えられなかった。強く美しい女性の深い絶望に砕け散った、目を覆わんばかりの姿を見て、脈が不規則になり、胸が鋭く痛んだ。
 ウェイドは怒りに目を細め、鼻孔をふくらませて顔を上げた。扉を蹴って閉め、イライザを抱いたままなかに入る。ひとつだけの部屋には窓もない。いますぐイライザを安全な場所に連れていかなければならないが、その前にまず……。
 くそっ! こんなに自分が無能に思えるのははじめてだ。彼女をついに腕に抱いて、そのやわらかく溶けていくような感触を味わえたらどんなふうだろうと考えたり、想像をふくらませたりしたことは否定できないが、こんな代償を支払うとは思ってもいなかった。こんな形ではない。
 イライザは崩壊している。ばらばらに崩壊して、もとどおりになるかどうかもわからない。くそっ。
 彼女の目はうつろで、希望の光のかけらもない。ウェイドはこんなイライザの顔を見るとは想像していなかった。
 イライザが望んで腕のなかに入ってきてほしいと思っていた。ふたりのあいだに激しい舌戦が勃発して、互いに感じていた欲望に火がついた結果、そうなるのを期待していた。イライザにほかに行くところがなく、彼女がぼろぼろになったときに、たまたまそばにいたからということではなく。
 知らん顔をしたりわざと敵意をあおったりして、この数カ月のように振る舞うわけにはいかなかった。壁に沿って置かれた小さなソファに座って、イライザを改めてそっと胸に抱きかかえたが、逃げられないよう体はしっかりつかんだままだった。
「しいっ、イライザ」小声で言って、彼女の髪に唇を押しつける。「もうだいじょうぶだ。危険はない。僕がいる。きみが傷つくようなことはぜったいにさせない。ほかは信じられなくてもこれだけは信じてほしい。だれにもきみを傷つけさせたりしない」
 イライザはウェイドのシャツを両手で握りしめ、肩に顔をうずめた。熱い涙がシャツにしみこみ、ウェイドの肌を濡らす。数カ月、数年、いや、一生分の恐怖と緊張とプレッシャーを必死でこらえていたのが、いっきに解き放たれたかのようだ。イライザは声を殺して泣きじゃくりながら、激しく体を震わせている。彼女がなにも言わないのが不吉で、ウェイドはますます気が焦った。イライザはなおも顔を押しつけて泣きつづけ、ウェイドの首を涙で濡らしながら、さらに力をこめてしがみついてきた。
 イライザがある程度は自分を抑えて、慎重に築きあげた心の壁の奥をのぞかせまいとしているのはまちがいない。苦悩の波にのみこまれてもなお、意志の力で必死に声を出すまいとしている。チームメイトにさえ彼女が自分をさらけだしている姿は想像できず、頼れる人がいなかったのかもしれないと思うと、ウェイドは胸が痛んだ。彼らのことは信頼しているはずなのに。デーンにさえ本当の自分は見せていないにちがいない。デーンはイライザを心配しているだけで、状況の深刻さをまったく理解していないのがその証拠だ。
 ウェイドは髪に押しつけた唇をそのまま動かしてひんやりと冷たい額に触れ、こめかみに鼻をすり寄せてなだめるような声を出した。きみはひとりではないと伝える以外、なにをすればいいのかわからなかった。イライザはまだ涙を流しつづけている。その涙がナイフのようにウェイドを切り裂き、これまでに味わったことのない感覚で胸をえぐった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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