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呪いの城の伯爵【MIRA文庫版】

呪いの城の伯爵【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ヘザー・グレアム(Heather Graham)
 新作を出すたびニューヨークタイムズをはじめ数々のベストセラーリストに顔を出す人気作家。作品は15カ国語に訳され、発行部数は世界中で2000万部を超える。フロリダで生まれ育ち、大学では舞台芸術を専攻した。卒業してからは女優やモデルなどの職業を経験し、第三子出産後に執筆を始める。受賞歴も豊富で、テレビのトークショーに出演したり、雑誌で取り上げられたりするなど実力と人気を兼ね備えている。

解説

宵闇はすべて隠してしまう――後ろ暗い秘密も、密かな愛も。全米のベストセラーリストを席巻した、話題作が復刻!

ヴィクトリア朝時代イギリス。カミールはその知らせを聞き、恐怖に凍りついた。愛する養父が盗みを働こうとしてカーライル城に忍びこみ、捕らわれたというのだ。先代の城主夫妻が悲惨な死を遂げて以来、その城には呪いがかかっているともっぱらの噂。さらに現在の城主である伯爵ブライアンは、両親は殺されたのだという妄想のもと世間を恨み、復讐に燃えているらしい。でも……たとえそこが呪いの城だとしても、養父を見殺しにはできないわ。カミールは勇気を振り絞り城に赴く。待っていたのは奇妙な獣の仮面をつけた伯爵だった。

■“ロマサス傑作選フェア”第3弾。トリを飾るのはこの人、押しも押されぬベストセラー作家ヘザー・グレアム。発売するなりベストセラーリストを席巻して話題をさらったヒストリカル・ロマサスを、どうぞお楽しみください!
*本書は、MIRA文庫から既に配信されている作品のカバー替え版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ブライアンは腕組みをしてカミールの周囲を歩き、一周し終えると言った。「座ってくれ。お願いだ」
 カミールは座った。彼に言われたからではない。膝ががくがくして立っていられそうになかったからだ。
 ブライアンは身をかがめてカミールの両側に手を突いた。石鹸とオーデコロンのいい香り、それから革と上質のパイプたばこのにおいがかすかに漂ってくる。彼の青い瞳が鋭い光を放っていることに、そして彼の内側で情熱がたぎっていることに彼女は気づいた。
「なんなの?」カミールは息を殺してなんとか言った。
「ぼくには名前がある」
「カーライル伯スターリング卿でしょう」
「ブライアンだ。これからはその名前で呼んでもらいたい」
 カミールはぐっとつばをのみこんだ。「喜んでそうするわ。もしも……」
「もしも? まだ条件があるのかい? いったいどっちが脅しているんだ?」
「そういう卑劣な態度は今すぐやめて!」
 一瞬ふたりの顔がふれそうなほど近づいた。恐ろしいことに、カミールは体を火照らせて顔を赤く染め、うっとりした気分になっていた。やがてブライアンが身を引いた。
「きみの料理が冷めてしまうよ」彼は言った。
「あなたのお料理も冷めてしまうわ」
「きみがゆっくり食べられるように、ぼくは席を外すとしよう」
「あなたがディナーに誘ったのよ。わたしを残して行ってしまうのは失礼というものだわ」
 ブライアンは声をあげて笑い、テーブルをまわっていって椅子に座った。けれどもすぐにはフォークをとりあげないで、彼女を見つめていた。「ラムをどうぞ」彼はすすめた。
「あなたが召しあがったら、わたしもいただきます」カミールは言った。
「言っておくが、生まれを恥じる必要はまったくないんだよ。親の罪が子にまで振りかかることはないんだから」
 カミールは唇を噛んだ。「母が罪を犯したとは思っていないわ」彼女は小声で言った。「母はただ……あまりにも深く、あまりにも無分別に愛していただけ」
「そうか。どうやらきみの父親はろくでなしだったようだね」
「あら」カミールは言った。「その点では意見が一致するみたい」
 ブライアンは彼女の手に自分の手を重ねた。その手は不思議なほど温かく感じられた。「繰り返すが、恥じることはなにもないんだよ」
 カミールは彼の言葉や、手のぬくもりと力強さに驚くほど心を動かされた。「でも、世間の人たちはそういうふうには見てくれないでしょう。もちろん、あなたはそんなこと、とっくにわかっているわよね。それから、よく覚えておいてちょうだい。あなたのせいで、わたしは生活の糧を失うかもしれないのよ」
「仮にそんなことになったら、ぼくが年金を払ってあげよう」
「わたしは自分の仕事に情熱を持っているの」
「ぼくはあの博物館に対して大きな影響力を持っているんだよ」ブライアンは繰り返した。
 カミールは目を伏せた。ブライアンの手は今も彼女の手に重ねられている。おかしなことに、カミールは彼の手を自分の顔に引き寄せて、てのひらを頬へ押しあてたい誘惑に駆られた。実際、彼女の心臓は早鐘のように打っていた。顔の火照りが胸や手足にまで広がっていく。
 カミールは怖くなって手を引っこめた。向かい側の男性ではなく、彼に対する自分の反応に恐れを抱いたのだ。
「申し訳ないけど、とても疲れているの。ごめんなさい……もう引きとらせていただくわ」
「きみの部屋まで案内するよ」
「ひとりで戻れるんじゃないかしら」
 やさしい一面を垣間見せていたはずの男性が豹変した。「きみを送っていく」ぴしゃりと言うと戸口へ歩いていって、彼女のためにドアを開けた。
 カミールはブライアンの存在を強烈に意識しながらその前を通り過ぎた。彼の息づかいや鼓動の音が聞こえたような気さえした。そして再び、今にも爆発しそうな緊張と暴力が彼の内部にひそんでいるのを感じた。
 カミールが廊下に出ると、ブライアンがあとに従い、やがて彼女の前を歩きだした。エージャックスが起きあがってついてくる。奇妙なことに、犬は主人のそばへ駆けつけようとはせず、カミールの横にぴったりくっついていた。
 彼らは長い廊下を歩いて、ようやくカミールの部屋の前まで来た。ブライアンが彼女のためにドアを開けた。
「ありがとう」カミールはぎこちない口調で言った。
「かまわないさ」
「ほんとにひとりで戻れたのに」
「いいや」彼が険しい声で言った。「それと、夜中に廊下をうろついてはいけない。わかったね? 絶対にだ」
「おやすみなさい、ブライアン」
「おやすみ。エージャックス!」彼に名前を呼ばれた犬は、従順にもカミールより先に室内へ駆けこんだ。ブライアンは青く燃える目で室内を一瞥してからドアを閉めた。
 廊下を歩み去る彼の足音がカミールの耳に届いた。そのとき彼女はふと、長い距離を歩いてきたように感じたけれど、正餐室とこの部屋は、実際には壁ひとつ隔てているだけなのではないだろうかと思った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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