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若奥様は逃亡中〜侯爵夫妻のすれ違い婚〜

若奥様は逃亡中〜侯爵夫妻のすれ違い婚〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫若奥様は逃亡中〜侯爵夫妻のすれ違い婚〜
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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解説

【100号記念◇サンプル増量♪】

君は本当に、男というものをまるでわかっていない
溺愛侯爵×箱入りの幼妻 両片思いの逃避行LOVE

「ほら、後から後から蜜が溢れてくる……」幼くして嫁いだ夫・アルノルトから一度も身体を求められることなく、結婚から5年経った今も「処女」のコルネリア。妻として大事にされているのはわかるけれど、なぜ夫は自分を抱いてくれないのか。不安を抱えるコルネリアだが、ある日アルノルトに好きな人がいることを知ってしまい、家を飛び出して……!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 いくつかの棟からなるバッハシュタイン侯爵邸は、金銭的に余裕のない時期が長く、調度品の類も必要最低限しか置かれていない。そのため、廊下を歩いていてもどこか薄暗く、未だに両親の喪が明けていないような静寂に満ちている。
 ──何かしら? 頭がぼうっとするわ……。
 コルネリアは軽いめまいを覚えつつ、先を行くアルノルトの背を追う。
 アルノルトは、コルネリアに対して一言詫びるためだけに城から戻ってくるような、誠実な性格だ。しかし、二人で歩いている時も、一定の距離を保ち、腰を抱くことすらしない。その様が、コルネリアには他人行儀に感じられる。気がつくと、もうずっと考え続けていることが、頭をしめる。
 ──やっぱり、わたしに魅力がないことが問題なのかしら? それとも、アルノルトさまもお家のご命令で仕方なくわたしと結婚して、本当は他に想う方がいるのではないかしら……?
 アルノルトの想い人が、城に出仕していたり、もしくは彼より身分の高い令嬢だったりした場合、相手の令嬢の家もうるさいだろうし、何よりコルネリアと別れたら相手の家への心証がよくない。だから、彼がなかなかコルネリアに別れを言いだせない理由も頷ける。
 ──わたしなんかには、もったいないくらいの方だものね……。
 コルネリアは、そこまで考えて、ずきんと胸が痛むのを感じた。その胸の痛みは、ここ最近アルノルトのことを想うと、必ず伴うものだった。
 アルノルトはコルネリアの体調を慮ってか、ゆっくり歩いてくれている。やがて主寝室がある本邸の、大きな階段に差しかかった。
「コルネリア、足元に気をつけて」
 コルネリアはアルノルトの言葉に頷いたが、外にいた時に感じた寒気が、ぶり返してきたような感覚がした。
 ──あ、この感じ。いつも、熱を出す時の……。
 ふいに、ひどい虚脱感を覚えて、コルネリアの足から力が抜けた時だった。
「っ、コルネリア!」
 珍しく余裕のないアルノルトの声がして、片手を掴まれたと思ったら、次の瞬間には、ひどく温かな、何かに包まれていた。少し遅れて、どこかにぶつかったような衝撃と、アルノルトの呻き声がした。
 ──えっ、……何!?
 コルネリアは少しして、どうやらアルノルトの胸に抱き込まれているらしいと気づいた。アルノルトの胸からは、ほのかに日なたの匂いがして、屋敷にこもりがちなコルネリアは、彼が自分の知らない世界で生きる人間だと、あらためて思い知らされた気がした。と同時に、初めてまともに彼に抱かれていることに、熱のせいだけでなく体温が上がっていくのを感じる。
 ──わたしったら、どうかしているわ。こんな時に、彼のことを意識するなんて……!
 コルネリアは首を振ると、アルノルトの様子を窺う。彼女を抱いている腕の力は強いが、ぴくりとも動かない。
「……アルノルトさま?」
 幾度か呼びかけても反応がないことが、余計に不安を煽る。どうやら、階段から足を踏み外したコルネリアを庇って、そのままいく段か転げ落ちてしまったようだ。
 ──意識を失っていらっしゃるの? どうしよう!? もし、アルノルトさまに何かあったら……!?
 コルネリアが、最悪の結果を考えて蒼白になった時だった。もし音をつけるなら、木の皮を剥ぐようなそれがぴったりという勢いで、アルノルトが自分の身体からコルネリアを引き剥がした。
「っ! コルネリア! すまないがっ、私から今すぐ離れてくれ!!」
 気がついた直後にアルノルトが発したのは、コルネリアを拒絶する言葉だった。その拒絶に胸の痛みを覚えつつも、コルネリアはほっと息を吐く。
「……っ。アルノルトさま。ご無事でよかった……!」
 コルネリアはアルノルトから身を離し、彼がどこも痛めていない様子なのを見て、うっすらと涙を浮かべた。それを見たアルノルトが、まるでやり場に困っているように、手をさまよわせる。
 アルノルトのその反応が、どういう心境からくるものかは、コルネリアにはわからなかった。ただ、すぐに離れるように言われたり、触れることさえ躊躇われていたりする事実が、二人の関係の全てだと思った。
 ──アルノルトさまがご無事でよかった! けれど今さら、どうしてわたしは、こんなに傷ついているのかしら? アルノルトさまが、わたしに興味をお持ちでないことなんて、始めからわかりきっていたことじゃない……。
 コルネリアはそこまで考えて、きゅっと唇を噛んだ。アルノルトに期待して勝手に傷つくこと自体が、何かの罪悪のようにも感じられ、せめて少しでも勇気が出るように、胸元のペンダントに触れる。
 ──いつまでも、こんなことではいけないわね。
 コルネリアは自分を叱咤して、こぼれ落ちそうな涙を指で拭う。
「アルノルトさま。助けていただき、ありがとうございます。主寝室へは階段を上がってすぐですから、あとはわたし一人でも大丈夫です」
 コルネリアは努めて明るい声を出したが、アルノルトは首を縦に振らなかった。
「いや、君は今、熱があるんだ。さっき触れた時にわかった。頼むから私に送らせてくれ」
 コルネリアは、アルノルトの言葉を聞いて、そっと肩を落とした。
 ──アルノルトさまがこんな風にお優しくなかったら、もっと楽だったかもしれない。
 誠実にされるより、冷たく突き放してくれた方が、まだ気持ちも揺れずにすんだだろう。そんな風に思いなから、コルネリアは先ほどまでより慎重に、一歩一歩、階段を上っていった。

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