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皇帝陛下の溺愛政策

皇帝陛下の溺愛政策


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫皇帝陛下の溺愛政策
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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解説

【100号記念◇サンプル増量♪】

きみは私の仔猫だ
皇帝陛下の膝の上で、トロトロに甘やかされて……。

過保護に育てられた侯爵家令嬢ラヴィーナは、幼馴染みの皇帝テオドールからいつまでも子ども扱いで、猫可愛がりに溺愛されるばかり。「きみがかわいすぎるからいけない」彼にもう子どもではないと訴えた日から、蕩けるような甘い愛撫を与えられ、初めての快楽に戸惑いながらも抗えないラヴィーナ。そんな彼女に、予想外な求婚者が現れて──!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 自分はもう、子どもではないのだ。
「……そうよ、変でしょう。ぜったいに変だわ」
「変なのはきみじゃないか」
 テオドールは惜しみもなく破顔する。ふたたび甘く目を細め、口元さえゆるめて、ツンとラヴィーナの頬をつついてくる。
「やっぱり今日のきみはご機嫌ななめなのだね。あれかな、最近私が忙しかったせいで、昔のように毎日こうして午後のお茶を一緒にできないから拗ねているのかな? そういえば昨日は本当にすまなかった。急に大臣どもが裁可を求めてきて、仕方がなかったんだ。ああ、それとも、もしかしたら今日のドレスは新作かい? ならば気づかなくて悪かった、なにしろきみはどんな色のドレスをまとおうとも、かわいい私のラヴィーナなのだからね、たとえ尼僧院の暗い僧服をまとおうとも、その愛らしさは変わらな……」
「そうじゃなくて!」
 見当違いな言い分にむっとする。思わず声を荒げたラヴィーナは、じたばたともがいてテオドールの膝の上から強引に降りた。真剣に訴えたくて、きりっと真正面から向き合った相手は、意外そうに目を見開いている。
「違うのよ。もう、こういうことのすべてが変だって言ってるの。たかが一回や二回、一緒にお茶が飲めなかったからって、私、拗ねたりしないわ。ええ、この際、一日おきでも週に一度でも結構。いくら近いとはいえ、毎日家からこの宮殿まで通うのだって、本当は大変なんだから」
「ラヴィーナ」
 ラヴィーナが知るかぎり、テオドールの表情は豊かだ。まったく、いったい誰が鉄面皮などと言ったのだろう。現に今も彼は眉尻を下げて、らしくもない弱り顔など見せているではないか。途方に暮れた子ども、とまでは言わないものの、なにやらまるで懐かないペットに困惑しているようではある。
「いいこと、テオドール。確かにあなたは皇帝位という重責を担う立場になったわ。幼なじみとしては誇らしく思うし、同時に同情もします。国ひとつ背負う立場なんて、さぞかし疲れもするでしょう。だから、せめて休憩の時間くらいは、気を張らなくてもいい私がお茶の相手をしてさしあげるという案には同意したわ。いくら皇帝陛下だからといって、たまには息を抜かないとやっていられないものね」
 ここでラヴィーナは、ふぅ、と一呼吸はさんだ。
「でも、だからって、まるっきり昔のままでいいという話ではないでしょう。私だってもう、……こ、子どもじゃないのだから!」
 口にするには少し勇気のいる一言だった。生意気と怒られるかもしれないし、背伸びと笑われるかもしれない。ラヴィーナは羞恥に染まる頬を隠したくて、ふたたびぷいっと顔をそらした。
「とにかく、これからはもっと普通にしてほしいの」
「普通とは?」
 わずかにトーンの下がった声が聞こえてどきっとする。ちらりと相手を窺えば、テオドールは人も悪そうににやりと口角を持ち上げていた。
 ここのところ、たまに目にするようになった顔だ。どうもその表情は落ち着かない。ラヴィーナの心臓が騒ぎだす。頬はさらに赤くなった気がする。
「普通って……、だからその……普通は普通よ」
「私たちにとっての普通はこうだ」
「きゃあっ!」
 突然ぐいっと腰を抱き寄せられて、ラヴィーナはまたもやテオドールの膝上に持っていかれた。せっかく一度は降りたというのに、近くに立ちすぎていたのが失敗だった。薄黄色のドレスが揺れて、皇帝陛下の最上級の服地をふわりと覆う。
「だいたいこれは、きみから申し出てくれたことだろう」
「……え? わ、私……?」
 なんの話だろうと目を丸くするラヴィーナの前で、テオドールが懐かしげに微笑んだ。
「小さかったから覚えていない? ほら、アルルがいなくなった日のことだ」
「アルル……?」
「仔猫の」
 ラヴィーナは小首を傾げて必死に記憶をたどる。仔猫のアルル。覚えているような、いないような……。
 テオドールが言った。
「忘れたかな? 確かきみが七つか八つのときだ。庭の片隅で拾った仔猫を私とふたりでしばらく面倒見ていたじゃないか。それがいつのまにかいなくなってしまって、きみはずいぶんと泣いていた。もちろん私だって悲しかったけれど、たぶん親猫が連れ戻したのだろうと、実は密かに安心もしていた。なのにきみときたら……」
 ふっと短い笑いが挟まれた。
「私のほうが沈んでいるように見えたのか、涙でぐしょぐしょの顔でしがみついてきて、大丈夫、今日から自分が猫になるからかわりに私をかわいがって──と訴えてきたんだよ。だからあの日からきみは私の仔猫だ」
「そんな……」
 完全に忘れ果てていた話に、ラヴィーナは青くなればいいのか赤くなればいいのかわからなかった。
 ならば今日という日のこの有様は、自分が招いたことなのか。
 優しい幼なじみの笑顔には「そうだよ」という答えが浮かんでいるようだった。
「ちょっと待って、テオドール」
「待たない」
 テオドールは抱え寄せたラヴィーナの肩先にそっと額を寄せた。

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