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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

白鳥になれない妹

白鳥になれない妹


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

富と美貌に恵まれた彼がなぜ、白鳥になれない私を選んだの?

「僕と結婚してほしい」大富豪のラファエルから突然求婚され、彼の経営するホテルで働くコーラは我が耳を疑った。頼みたい新しい仕事があるからとスペインへ連れてこられたけれど、鷲を思わせる、危ういほど美しい彼からまさか妻に指名されるとは……。彼は土地買収の必要条件として便宜的に結婚したいのだと言い、せいぜい数週間で結婚は解消され、莫大な報酬も約束されるらしい。兄や姉と違い、どじで美しくもないコーラは両親に愛されずに育ち、先日も大事な家宝を他人に騙し盗られて叱責されたばかりだった。その損失を補って両親に認めてもらいたい一心で彼女は申し出を受ける。心の隅で、なぜ醜いあひるの子の自分が選ばれたのか、いぶかりながら。

■美しい姉や才能ある兄の陰に隠れるように生きてきたコーラですが、大人になった今なお両親に愛されようとけなげに頑張ります。一方、公爵家の血を引きながら一族の禍根に懊悩するラファエルは、ある目的を胸に彼女に近づいて……。最後に感動が待ち受ける珠玉作!

抄録

「答えはノーよ」コーラは立ち止まらなかった。
「報酬はたっぷり払う」彼はためらいもなく、コーラが唖然とするほどの額を口にした。
 恥ずかしいことに、その金額が頭の中でこだまして誘惑に負けそうだった。それだけあれば両親への負債をほぼ完済できる。けれどすぐにプライドがよみがえり、コーラは姿勢を正した。彼と私が結婚するなんて、どんな世界でも決してありえない。
「それでも答えはノーよ。正気の沙汰じゃないわ」
 愚かな行為なのは言うまでもない。だが、ラファエル・マルティネスは恥知らずで、傲慢で……数えあげたらきりがないが、愚かではない。
「正気だとも。これはチャンスなんだ。僕たち双方にとって」彼は椅子の背にもたれ、立っているコーラをくつろいだ様子で見あげた。「君と結婚すれば、ドン・カルロスは僕が生き方を改めたと思うだろう。しかもレディ・コーラ・ダーウェントの夫になら、喜んで葡萄園を売るはずだ。ダーウェント家の血筋は、彼の家と同じく高貴だから」
 蜜のように甘い声ににじむ苦々しさに、コーラは眉をひそめた。「葡萄園一つのために、結婚までするの? 少しやりすぎだと思わない?」
「いや、何もずっと結婚を続けるとは言ってない。式を挙げしだい、大急ぎで売買契約をまとめる」
「それって、ちょっと奇妙に思われないかしら」
「うまくやれば大丈夫さ。公爵がほかの誰かに売る前に葡萄園を手に入れないと。この結婚はごく短期間の便宜的なものだ。芝居はせいぜい一カ月で終わる。できればもっと早く終わらせたい」
「便宜的というけれど、私にとっては結婚しても便宜なんて何もないわ」
「高額な報酬があるじゃないか。しかも、何週間か贅沢な結婚生活も楽しめる」
 コーラは目を閉じ、誘惑を退けようと木の椅子の背を握りしめた。家宝のダイヤモンドに相当する金額を返済したときの両親の顔が目に浮かぶ。きっと少しは認めてもらえるだろう。ふたたび家族の一員として迎え入れてもらえるかもしれない。
 その代償が短期間の結婚。数週間、せいぜい一カ月間、ラファエル・マルティネスの妻になる。
 コーラは目を開けて彼をじっと見た。勝利を予感した黒い瞳が、からかうように見返してくる。
「それで、私がその贅沢な結婚生活をのんびり楽しむ間、あなたはどこにいるの?」
「君の隣で一緒に楽しむ。この結婚は本物らしく見えないと困る。二人は一瞬で激しい恋に足をすくわれたと、世間が信じる必要がある」
 彼の言葉に、理由は知りたくないけれど、かすかなおののきがコーラの体を駆け抜けた。ばかばかしい。現実を見すえ、足を地につけておかなくては。
「そんなたわごと、誰が信じるものですか」彼女はわざと冷笑と軽蔑を込めた口調で言ってのけた。
 ラファエルは黒い眉を片方上げた。「なぜ信じない? ありそうな話だ。僕らは職場のホテルで出会い、ぱっと火花が散って、恋に落ちたのさ」
 コーラはおよそレディらしからぬ勢いで、鼻で笑った。口から飛び出した言葉はさらにレディらしくなかった。「ありえないわ! ロマンスは得意分野じゃないと自分で認めていたくせに。もっぱらひととき楽しむだけだって」それも私とは全然違う華やかな美人と。私と恋に落ちるなんてお笑い草よ。
「つまり、結婚に楽しみはないというのか?」
 そうきかれて、コーラはぴたりと動きを止めた。両親の結婚は貴族としての義務で、楽しみではなかった。ダーウェント家の地所と家名を守るために尽くすのは当然の使命だ。両親の結婚はその使命を軸にまわっている。楽しみの入る余地はない。
 ラファエルが口角を上げてにっこりほほ笑むと、コーラの頭の中はふわふわの真っ白な綿の塊がつまったようで、何も考えられなくなった。「僕たちの結婚は、君の望みのままに、いくらでも楽しいものになる。約束する」
 ラファエルの笑みについうっとりしてしまい、コーラはいらだった。彼はよくも平然と座ったままでいられるものだ。まるで偽りの便宜結婚が日常茶飯事と言わんばかりだった。「“嵐のような恋に落ちた”なんて話は、正気の人なら誰も信じないわ」
「誰もが信じるさ。僕が請け合う」
 スペインの太陽とは無関係の熱気が不意にコーラを包んだ。ラファエルが立ちあがり、テーブルをまわってきたのだ。体が触れ合いそうなくらいまで近づいてきて足を止める。「僕の目には君しか映らない。君に夢中だ。世界中にそう信じさせてみせる」
 まるでとろけるチョコレートみたいに甘くなめらかな言葉――最高級の、バケツ一杯でも食べたくなるくらい美味な……いいえ、高くても安くてもチョコレートの食べすぎは体に悪い。そしてラファエルは節度を守ることを知らない。一方私は“何事もほどほどに”というタイプだ。
「絶対にうまくいかないわ」
 彼はさらに一歩足を進め、二人の間のごくわずかな距離を詰めた。そしてコーラの顔にじっと視線を注ぐ。心臓が痛いほど胸を打ち、体が熱くてとろけてしまいそうだった。コーラは背筋をしゃんと伸ばし、立ったままでいようと必死で足を踏んばった。
「うまくいくかいかないか、賭けてみるか?」
 彼が近すぎて今は何も考えられない。ライムのようにさわやかな彼の香りに包まれ、完璧に整った唇と欲望に陰る黒い瞳をただ見つめる。コーラは我知らず唇が開き、椅子をつかんでいた両手が彼のほうへ……。その瞬間、現実が押し寄せた。悔しさと屈辱にコーラは後ずさりした。いったい何を考えていたの? 彼は演技をしているだけ。全部お芝居よ。


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