マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

翳りゆくハート

翳りゆくハート


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

別人のように変わり果てた二人は、愛を取り戻せるのか。涙の作家S・サラが贈る〈ハート〉3部作、感動溢れる最終章!

最愛の恋人サムはアフガニスタンから帰還したが、レイニーのもとへは戻ってこなかった。「もう昔の僕じゃない」と彼女を冷たく捨て、町を去ったのだ。あれから10年――今やレイニーも昔のままの彼女ではなかった。家族を失くし、乳がんを発症した。美しい赤毛と両の乳房を失い、仲のよかったサムの家族とも縁を切った。たった独りでつらい闘病生活に耐えていたレイニーには、知る由もなかったのだ。サムの母親が何者かに殺され、サムがついに町へ帰ってきたことを。そして、レイニー自身が、事件の重要な鍵を握っていることも……。

抄録

「助かったわ。それで、ここに何か用?」
「君と話がしたくて」
 レイニーは手袋を脱ぐと、振り向いて初めてサムをまともに見た。
「ベッツィとトリーナのこと、本当に大変だったわね」そう言うと、いきなりサムの顔を平手で叩いた。「ただのひとこともなく私を捨てたお返しよ」
 そして、踵を返して四輪バギーに乗って納屋に向かった。
 打たれた頬がひりひりしたが、サムには返す言葉がなかった。歓迎されると期待していたわけではない。なんとか仲直りできればと思って来たのだが、寒空の下に突っ立っていてもどうしようもないので、車を家の前に着けることにした。
 家の前に着くと、ちょうどレイニーが納屋から歩いてくるところだった。泣いている。覚悟はしていたものの、今さらながらに彼女を傷つけたことを悔やんだ。
 玄関から迎え入れてくれるはずはないから、後ろについて裏口から家に入った。締め出されなかっただけでも儲けものだ。どんな対応をされるかわからないので、ドアのそばに立って、レイニーがワークブーツを脱ぎ、古いコートをかけるのを見守っていた。
 レイニーは涙に濡れた顔を昂然と上げてサムのそばを通り過ぎた。サムは話を切り出すきっかけを待った。レイニーはカウンターの前で立ち止まると、マグカップを手に取った。次の瞬間、カップがサムの頭めがけて飛んできた。
 かろうじて身をかわすと、カップは後ろの壁に当たって砕けた。もう一度同じことをしようとするのを見て、サムはあとずさりしながら両腕を高く上げた。
「降参だ。それ以上カップを割らないでくれ。謝りに来たんだ。どうか話を聞いてほしい。最後まで聞いてくれたら、二度と君の前に現れない。それで君の気がすむのなら」
「気がすむって? 今さらなんなの? 私がどう思うかなんて、この十年で一度でも考えたことがある?」
 声は震えていたが、怒りに燃える目はまっすぐサムを見つめていた。
 頭が真っ白になって、サムは考えていた言葉を口にすることができなかった。言葉で説明してもだめだ。何があったか、この十年どう過ごしてきたか見せるしかない。身震いして大きく息をつくと、ゆっくりと着ているものを脱ぎ始めた。
 コートを脱いだときは黙って見ていたレイニーも、サムがベルトをはずし、シャツを脱ぎ始めると、あわてて止めた。「やめて! どういうつもり?」
「言葉では説明できないから、見てもらいたいんだ」
 レイニーはこっそり病室に入ったときのことを思い出した。あの日、サムは全身を包帯に包まれ、生命維持装置でかろうじて命をつないでいた。
「やめて、サム! そんなことをしても無駄よ。私がどんなに愛していると言っても、あなたは信用しようとしなかった。今さら何を説明しようというの?」
 身につけているものを脱ぎ捨てながら、サムは頭に血がのぼるのを感じた。こんな姿は医者と看護師にしか見せたことがない。レイニーは身じろぎもせず見つめていた。シャツをカウンターに投げたときも、ジーンズを脱いで下半身に広がるケロイド状の傷痕をあらわにしたときも、声もあげず、目を覆うこともなかった。その様子を見て、サムの中で何かが崩れた。彼女はありのままの僕を見ても取り乱したりしない。ティッシュの箱が飛んでくるまでサムは自分が泣いているのに気づかなかった。
 投げつけられるとは思ってもいなかったが、反射的に箱をつかんだ。
「わかってるわ、いろいろつらいことがあったのは」そう言うと、レイニーはサムには目もくれずニット帽を脱ぎ、身につけているものをはぎ取った。ようやく生えてきた頭頂部のふわふわした赤い巻き毛があらわになり、痛々しいほど痩せた体には乳房を切除した痕が残っている。十字架にかけられたように両腕をまっすぐ伸ばすと、レイニーは涙を流しているサムの顔をまっすぐ見つめた。
「せいぜい自分を哀れむといいわ、サム・ジェイクス。私もそうする」
 サムは射すくめられたようにその場に凍りついた。
 それでも、意を決したように近寄ると、レイニーを抱きしめて、首筋に顔をうずめた。
「悪かった、悪かったよ。本当にすまない」それ以外に言葉が見つからなかった。
 気づいたときにはレイニーは彼の首に手を回して抱き寄せていた。サムの体の震えが伝わってくる。
「あんなに愛していたのに……何があっても私の気持ちは変わらなかったのに……なぜそれに気づかなかったの?」涙で声がつまった。
「あのときは自分で自分を受け入れられなかった。お願いだ、わかってほしい。あの頃は死ぬことばかり考えていた」
 レイニーはその言葉に打ちのめされた。ずっと抑え続けていた嘆きと悲しみがこみ上げてきて、肩を震わせて泣いた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。