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涙のバージンロード【ハーレクイン・セレクト版】

涙のバージンロード【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・パーマー(Diana Palmer)
 シリーズロマンスの世界で今もっとも売れている作家の一人。総発行部数は4200万部を超え、ニューヨークタイムズを含む各紙のベストセラーリストにもたびたび登場。かつて新聞記者として締め切りに追われる多忙な毎日を経験したことから、今も精力的に執筆を続けている。ジョージア州在住。大の親日家で、日本の言葉と文化を学んでいる。家族は夫と息子の三人。

解説

キャピーは幼いころに両親を亡くし、今は動物病院で働きながら、怪我で半身不随となった兄とつましい生活を送っている。ある日、車の衝突事故に巻きこまれたキャピーは、その場に偶然居合わせた院長のベントリーに救われて、驚愕した。いつも気難しく、キャピーにはとくにきつく当たっていた彼に、こんな心優しい一面があったなんて……。それ以来、互いの家を行き来するようになった二人は距離を縮め、キャピーはベントリーとの結婚さえ夢見るようになった。ところが翌週、突然別人のように冷淡になったベントリーから、キャピーは耳を疑う言葉を浴びせられる。「君はくびだ。出ていけ」

■ハーレクイン・ディザイアの1500記念号を飾った、重鎮ダイアナ・パーマーの胸を揺さぶる切ないロマンスをお贈りします。キャピーのベントリーへの一途な想いは届くのでしょうか?
*本書は、ハーレクイン・ディザイアから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「これもかけておいてくれ」ドクター・リデルがぶっきらぼうに言った。
「はい、先生」
 キャピーがコートをハンガーにかけ、扉を閉めてふりかえると、彼はまだそこに立っていた。
「ほかに何か?」彼女は儀礼的に尋ねた。
「いや」彼は答えたが、まるで世界中の重荷をひとりで背負っているような顔をしている。
 キャピーは愛する兄の助けになれない自分のつらさを重ねあわせ、柔らかなグレーの目で彼のブルーの目を見あげた。「人生がすっぱいレモンを与えるなら、甘いレモネードを作ればいいって、ことわざにもありますよね?」思いきって話しかける。
 彼のかたい表情が笑み崩れた。「きみの年で人生のすっぱさなんてわかるのかい?」
「年は関係ありません」キャピーは続けた。「年数ではなくて走行距離の問題だわ。もしわたしが車だったら、純金のアクセサリーでぴかぴかにリフォームしないかぎり買い手はつかないでしょうね」
 ドクター・リデルのまなざしが少しだけやわらいだ。「ぼくが車なら即刻廃車にされちまう」
 キャピーは噴きだしたが、すぐに笑いを引っこめた。「すみません」
「なんで謝るんだ?」
「だって、先生って、なんだか話しにくくて」正直に答える。
 彼は深々と息をついた。その一瞬、彼が妙に傷つきやすそうに見えた。「人に慣れていないんだ。病院で人と接していても、うちに帰ればひとりだからね」そこでまた眉を寄せる。「きみはお兄さんと暮らしているんだろう? 彼はなぜ働かないんだ?」
 キャピーは身構えた。「取材で戦地に行った際に負傷したんです。銃弾の破片が脊椎に刺さって手術もできず、下半身不随になってしまったの」
 ドクター・リデルの表情がゆがんだ。「それじゃ、車椅子で生活するしかないのか?」
「ええ」キャピーは静かに言った。「兄は何年も軍にいたんだけど、海外の任地にわたしを連れまわすのがいやになって除隊し、雑誌の仕事をするようになったんです。でも、そのせいであんな怪我をして、いまも痛みに苦しめられている。それをどうすることもできずに見ているのは、ほんとうにつらいわ」
 つかの間、彼の目にもつらそうな感情が揺らめいた。「確かに愛する者が苦しむ姿を見るのは、自分自身が苦しむ以上にこたえるものだ」表情をなごませてキャピーを見かえす。「それできみが彼の世話をしているってことか」
 キャピーはほほえんだ。「ええ。少なくとも兄がさせてくれるかぎりはね。十歳のときに両親が事故死してからは、兄がわたしの面倒をみてくれましたから。兄は施設に入ると言っていますけど、そんなことは絶対させないわ」
 ドクター・リデルは何か考えこんでいるような、悲しげな顔をしていた。誰か話を聞いてくれる人が必要なのに、誰にも話せないのだろう。その気持ちはキャピーにもわかる気がする。
「生きるって、たいへんだわ」彼女はそっと言った。
「最後には死ぬだけだし」ドクター・リデルは続け、笑ってみせた。「仕事に戻りたまえ、ミス・ドレイク」そこで口ごもる。「キャピーという名前はなんの略なんだい?」
 キャピーは言いよどんで唇をかんだ。
「いいじゃないか、教えろよ」彼はせっついた。
 キャピーは深呼吸をした。「カペラの略です」
 彼の眉があがった。「一等星の?」
 キャピーは顔をほころばせた。カペラの意味を知っている人なんてなかなかいないのだ。「ええ」
「きみの親のどっちかが天文ファンだったんだな」
「母は天文学者で、父は天体物理学者だったんです」笑顔で言う。「父は|航空宇宙局《NASA》で働いていたこともあるんですよ」
 彼は口をすぼめた。「頭のいいご両親だったんだな」
「ご心配なく、わたしは全然似ていませんから。両親の頭脳はすべてケルが受け継いだんです。兄はいま冒険小説を書いているんですよ」キャピーは微笑した。「きっと大ベストセラーになるわ。莫大な印税がころがりこんで、薬代や医療費の心配をする必要もなくなるでしょうね」
「医療費か」ドクター・リデルはぼそっとつぶやいた。「おかしな話だ。薬代を捻出するために食べるものも食べられず、生活必需品すら削って生きている人たちがいるのに、どこからも助けの手が差しのべられないなんて」
 キャピーは驚いた。たいていの人はこの国の誰もが必要な医療を受けられるものと思っている。だが、キャピーは経済的な事情から最低限の保険にしか入っていなかった。万一高度な医療が必要な事態になったら、州に補助を申請するしかないだろう。その補助金だって、ほんとうに出るかどうかはわからないのだ。ケルを雇っていた雑誌社も医療費をまったくカバーしてくれなかったではないか。
「わたしたちが暮らしている社会は、決して完璧ではないのよね」
「ああ、完璧とはほど遠いね」
 ドクター・リデルがなぜそこまで手厳しく批判するのか、キャピーは尋ねてみたかった。医療費は彼女にとっては切実な問題なのだ。だが尋ねる勇気を奮いおこせないうちに電話が鳴りだし、そのうえ四つ足の動物が新たに三匹、それぞれ飼い主に連れられてやってきた。そのうちの大きなボクサー犬は、リードにつながれずに来た小さなプードルを目がけて一目散に駆けだした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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