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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

追憶

追憶


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サラ・クレイヴン(Sara Craven)
 イングランド南西部サウス・デボン生まれ。海辺の家で本に囲まれて育った。グラマースクール卒業後は、地元のジャーナリストとして、フラワーショーから殺人事件まで、あらゆる分野の記事を手がける。ロマンス小説を書き始めたのは一九七五年から。執筆のほかには、映画、音楽、料理、おいしいレストランの食べ歩きなどに情熱を傾けている。サマセット在住。

解説

7年前に、忽然と姿を消したライアンが町に戻ったと知り、ジャナの胸に、一瞬にして暗い影が差した。16歳のころ、ジャナは屋敷に住むライアンと愛し合っていた。だが、部屋に踏み込んできた彼のおじに見つかって、思わず、「ライアンに連れ込まれたの」と嘘をついてしまったのだ。その日のうちにライアンは勘当され、翌日には屋敷を去った。そうして、ジャナの初恋は無残な形で終わりを告げた――長い空白の時を経て再会した彼は、いまや別人のように、彼女を嘲笑していた。「復讐を受ける覚悟はできているか?」と。

抄録

「洋服は変わっても、体はちっとも変わっていない」ライアンはジャナの耳もとでささやいた。「悪い思い出ばかりというわけでもなかったんだ」
 ジャナは声にならない叫び声をあげて、ライアンを突き放すと、その頬を打った。しかし、ライアンはまったくひるまず、ジャナの手首をつかんだ。
「君は本当に僕の復讐を受ける覚悟ができてるのか?」
 ライアンは軽蔑したようにジャナの手を放した。ジャナはじっとライアンを見つめたまま、血の気を失った手首をさすった。ライアンの目がきらりと光った。
「すごい指輪じゃないか、ジャナ。そんなダイヤを贈るなんて並大抵の惚れ込みようじゃないな。そいつをやつにつっ返してやりたいよ、かわいいジャナ。やつが君にそいつを贈ったときの何十倍もの威厳を持って」
「いやなやつ!」ジャナは思わず叫んでしまった。
 ライアンは初めて愉快そうに笑った。
「それこそ、僕が知っていたジャナだよ。昔はよくそう言って僕の顔につばをはきかけて、僕を怒らせたりしたじゃないか。頭を垂れて哀れみを請われたときには、昔のジャナはどこへ行ったのかと思ったよ」
 ライアンは、怒ってドアの方へ行きかけたジャナを引き止めた。「今日は驚いたよ。君が来たときには、てっきりフィアンセの代わりにカリスベックハウスをあきらめてくれって言いに来たのかと思ったんだ」
「コリンがそんなこと言ったの? うそでしょう?」
 ライアンは肩をすくめた。
「やつにきいてみればいい。あいつは今までなんでも金で物事の‘かた’がつくとでも思ってたんだな。ところが今度ばかりはそうはいかなかったのさ」
 ライアンは皮肉っぽく眉をつり上げた。「君が現れたとき、一瞬大物を寄こしたなって思ったよ。女の武器ってやつさ」
 ライアンはダブルベッドにちらりと目を走らせて言った。「やつの金の力をもってしても果たしえなかったことをやらせようとしてね。人生ってそんなものさ」
「卑しい人ね! コリンはそんなことする人じゃないわ」
「しないって? そう願いたいよ。ちょっとしか会わなかったけど、あいつは欲しいもののためなら、自分の家族まで売りかねないぜ」
「あなたはコリンのこと、何も知っちゃいないわ」ジャナは震える声で言った。
 ライアンは大きな声をたてて笑った。「それを言うなら、やつだって君のことは何も知っちゃいない」
 ライアンは力強い腕でジャナを引き寄せ、しっかりと抱いた。とても強い力だった。唇が唇に重なると、周りがぐるぐると回っていた。そしてライアンのキスだけが現実のものだった。
 まるで七年の間眠っていた感情の泉が突然吹き出したかのようだった。ジャナの唇は誘惑に負けて少し開き、手はライアンの頭をしっかりと抱いていた。ライアンの唇は執拗にジャナを求めた。
 ジャナがライアンの抱擁に恍惚を感じてぼうっとなっていると、突然ライアンは、よろめくほど強くジャナを突き放した。
 ライアンは乱れた髪を無造作にかき上げ、ジャナの目覚めた本能に冷たい水を浴びせかけるように、顔をゆがめて笑った。まるでわたしの欲望の目を覚まさせることだけが目的だったみたいに。ジャナはぼんやりした頭で思った。
「僕が正しかったようだな、ジャナ」ライアンは顔色も変えずに冷たい声で言った。「君はまったく変わっていない」
 それを聞くと、ジャナはのどからしぼり出すような叫び声をあげ、部屋から逃げ出していた。
 廊下を歩いて行くと、半開きになったドアのすきまから、白く輝くほうろうのバスルームが目に入った。ジャナはこっそりその部屋に入ると、ドアを閉め、錠を下ろした。ライアンがあとをつけて来る様子もなかった。少なくとも今は……ジャナを逃がしてくれた。
 ジャナは部屋の中にある背の高い木の椅子に腰を下ろした。何げなく鏡の中をのぞき込んだジャナの背中に寒気が走った。いつからジャナはこんなに冷たく独りよがりの顔をした人間になってしまったんだろう? 昔はこんな女じゃなかった。でも今は、大きく見開いた目は野蛮な輝きを増し、情熱で汚れた唇は不様にはれていた。
 ジャナは腕を組み、無意識のうちに口に上ってくるうめき声を押し殺そうとした。ああ、神様。わたしはなんてことをしてしまったのでしょう? あんなことになる前に、どうしてなんとかしなかったのでしょう? 自分の弱みを残らずライアンにさらけ出してしまった――あのときまでは気づいていなかった弱み――ジャナは体の震えを止めることができなかった。
 この七年間苦しんできた心を慰めるとしたら、ライアンへの熱い思いは、単に思春期のはしかだったとして片づけてしまうことだった。けれど、今、彼のキスがわたしの体に火をつけてしまった。もう火遊びをする小娘じゃない。わたしは今、自ら火をつけた炎に、焼き尽くされかかっている。
 ジャナはこぶしを強く握りしめた。婚約指輪が強く肉に食い込んだ。コリンと婚約しているのに、どうして心も体も別の男にささげてしまうことができようか? ライアンとベッドを共にしたと同じぐらい、コリンを裏切ってしまったような気がした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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