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惑愛の騎士〜いとしき王女への誓い〜

惑愛の騎士〜いとしき王女への誓い〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫惑愛の騎士〜いとしき王女への誓い〜
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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解説

言っただろう……、妻との閨ではわたしは紳士をやめると
堅物な騎士とじれったいほどに狂おしい恋のおとぎ話

流浪の民に育てられたアネッテは、17歳の誕生日の夜に野営地を襲われ、家族と離ればなれに。騎士である身分を隠したエドと出会い、二人きりで旅をするうちに惹かれ合うが、大義を捨てられないエドとは結ばれず別れるしかなかった。しかし、再会したエドは「生涯かけて守る」と宣言し、蕩けるような愛撫でアネッテへの愛をあらわにしてきて……。

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 翌朝。
 ほとんど夜明けと同時に目覚めたアネッテは、エドを起こさないようにそっと納屋を出た。
「寒いっ。でも今日もいい天気になりそう」
 春も終わりだが、日が昇りきらないうちはまだまだ冷える。馬に食事をさせるために柵から放して森へ行かせると、アネッテは水場で顔を洗って納屋へ戻った。
「あらエド、もう起きたの?」
 流浪の民並に早起きのエドに目を丸くする。エドはほほ笑んで答えた。
「おはよう、アネッテ。きみが出て行く気配がしたから」
「あ、ごめんなさい、起こしちゃったのね……」
「いや、ちょうどよかった。水場は今空いているのかな」
「あ、うん、まだ村の人たちは起きてないわ」
 アネッテが教えると、エドも水場へ出て行った。その間に昨夜分けてもらった堅パンや干し肉、果物を床に敷いた布の上に並べ、戻ってきたエドに切り分けてもらう。それらでしっかりと朝食をとり、出発の準備をしながらアネッテは言った。
「安全に夜を過ごすことができたのもエドのおかげだわ。どうもありがとう」
「いや、わたしも馬に乗せてもらえて野宿せずにすんだ。こちらこそ礼を言う」
「それならお互い様ね」
 うふふとアネッテが笑う。お世辞抜きで愛らしいその様子に、エドも自然と微笑を返して言った。
「一度野営地へ戻るのだろう? わたしも一緒に行く。もしそこで家族と合流できなかったら、次の村まで同行を許してくれないか」
「本当に一緒に行ってくれるの? そうしてくれるならとても心強いのだけど……」
「本当だ。約束しただろう?」
「ありがとう……」
 まだ一緒にいられる。そう思ったらなぜか嬉しくて、アネッテは頬を赤くした。
 村人たちに丁寧に礼を言って村を離れ、早朝の清々しい森の中をやや早足に馬を進める。当然のように腰に回されたエドの手にアネッテがドキドキしていると、ふいにエドが言った。
「とても美しい髪だな」
「え……?」
「まるで紅玉のような、透きとおる赤い髪だ。とても美しい」
「え、あの、えっと……、あ、ありがとう……」
 たちまちアネッテの顔は髪と同様に真っ赤になった。家族以外の男の人、それもエドのように素敵な人から髪を褒められるなんて初めてのことだ。嬉しいけれど恥ずかしくて、アネッテは顔を伏せて言った。
「あの、わたしね……、本当はノルデン一家の子ではないの……」
「うん?」
「わたし、貰われっ子なの。わたしを産んだお母さんは、病気でわたしを育てられなくなって、それでノルデン一家に預けたってお母さん……育ててくれたお母さんから聞いてるの。わたしが赤ちゃんの頃よ」
「……そうか」
「うん。だから髪の色も目の色も家族とは違うの。家族はみんな、濃茶の髪と濃茶の目なのよ」
「ああ、そういえば流浪の民にも赤髪や黒髪は見るが、アネッテのように透けるような赤色の髪は見ないな……」
「そうなの。わたし一人だけこんな色の髪で……、目立つし、本当は恥ずかしかったの……」
「恥じることはない」
 小声で打ち明けたアネッテの腰を、エドが励ますようにギュッと抱きしめた。
「わたしの故郷では、わたしのような黒髪や黒い瞳はとてもめずらしかったんだ。皆、金や灰色の髪で、瞳も薄い青や緑だった」
「そうなの?」
「ああ。だからわたしもとても目立った。だが、恥だと思ったことはない。わたしの髪や瞳が黒いのは、理由があるに違いないからだ」
「理由って?」
「さあ、まだわからない。生涯を終える時までにわかるだろう。それまでは人と違うことの意味を探しながら、正直に生きるだけでいいとわたしは思っている」
「……すごく元気が出る考え方ね。そういうふうに考えたことがなかったわ。ありがとう、わたしもそう考える」
 真剣な表情でアネッテは言った。赤……、本当は銀色だが、大陸ではおよそ見かけないこの銀髪にも、きっと意味があるに違いないからだ。そう思えば赤く染めて隠すことに引け目も感じない。
(そう。きっと今は、銀髪を見せるべき時じゃないってことよ)
 アネッテはほほ笑んだ。エドのおかげで劣等感が希望に変わったのだ。やっぱりエドは素敵、と思った。
 アネッテが心の中に小さな恋の種を埋めたことも知らず、エドは生真面目で素直なアネッテが可愛いと思って微笑した。無駄な劣等感など抱くことはないのだと思い、言った。
「それにアネッテの髪はとても美しいのだから、恥に思うより自慢に思えばい。本当に、ふれてみたくなるほどだ」
「…っ、あ、ありがと…っ、そ、そう言ってもらうの、初めてだからっ、あの、とても嬉しい……っ」
 ものすごく照れてしまって、アネッテがしどろもどろに言うと、エドは笑った気配で言った。
「髪だけではないさ。青みがかった黄緑色の瞳も、橄欖石のようで綺麗だ。それらも含めて、アネッテ自身が美しい女の子だよ。もっと大人になったら誰もが振り向く美女になるだろう。もっと自分に自信を持てばいい」
「……っ」
 アネッテはとうとう全身を赤くした。からかわれているのならいいが、エドはとても真面目な声で言ってくるので、本気でそう思っていることがわかる。にっこり笑ってありがとうと答えられるほど、アネッテは男の人というものに馴れていない。素直に褒め言葉を受け取るのは、なんだか自慢しているみたいだと思うし、こういう時に大人の女性だったらどう答えるのかもわからないし、恥ずかしすぎて、アネッテはふるえる声で言った。
「う、嬉しいけど、エドは昔は騎士様だったのだから、そ、そういうことは、剣を捧げた姫君に、言うことでしょ…っ」

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