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愛を演じて ベティ・ニールズ選集 15

愛を演じて ベティ・ニールズ選集 15


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュベティ・ニールズ選集
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ベティ・ニールズ(Betty Neels)
 イギリス南西部のデボン州で子供時代と青春時代を過ごした後、看護師および助産師としての教育を受けた。戦争中に従軍看護師として働いていたとき、オランダ人の男性と知り合って結婚。以後十四年間、夫の故郷オランダに住み、ベティは看護師、夫は病院事務と、ともに病院で働いた。イギリスに戻って看護師の仕事を退いた後、よいロマンス小説がないことを嘆く女性の声を地元の図書館で耳にし、自ら執筆を決意した。1969年、「赤毛のアデレイド」を発表して作家活動に入る。穏やかで静かなロマンス、その優しい作風が多くのファンを魅了した。2001年6月、惜しまれつつ永遠の眠りについた。彼女が生みだした作品は百三十以上にも及んでいる。好きな映画は『逢いびき』(英1945年)、尊敬する人物はウィンストン・チャーチルだったという。

解説

恋にめざめた乙女に求められたのは、愛を感じるのではなく、演じること。

ロンドンの病院で働く二十歳の見習い看護師ベネチアは、近くの店の爆弾騒ぎで腕を負傷し、かの著名なオランダ人脳外科医デュアルト・ター・ラーン‐ルティンガ教授に処置してもらうことに。かすかな意識のなか見上げた教授のハンサムな顔――そのとき、乙女の小さな恋は始まったのかもしれなかった。やがて、唯一の家族だった祖母が急死し一人残されたベネチアに、彼女の気持ちを知ってか知らずか、教授が突然プロポーズをしてきた。オランダで後見することになった孤児の少女が手に余り、模範的な家庭生活を示すために、妻役を演じてほしいというのだ。愛のない結婚は本望ではないと、泣く泣く拒むベネチアだったが……。

■唯一無二の作風で愛されるベティ・ニールズの選集をお贈りします。年上の教授に淡い恋心を抱いたのもつかのま、愛の介在しない結婚を提案されたベネチア。祖母亡き今、寂しい身の上を思うと家族は欲しいけれど、形ばかりの偽りとは哀しい……。切ない葛藤の物語。

抄録

 その時、玄関ドアがノックされて、教授は立ち上がった。「僕が出よう。非番なんだね? で、ここで寝泊まりしてるのかい?」
「月末まで住んでいい、と言われているんです。家具とか食器とか、荷造りしなくてはならないので」
 教授はうなずいて玄関に出ていき、まもなくブリーフケースを携えたきびきびした様子の男性を案内して戻ってきた。「どうぞ、こちらへ。僕は相談役ってことで同席させてもらいます」
 相談役? ベネチアは驚いて目をぱちぱちさせた。心細い思いをしている時、なんてうれしい申し出だろう。ベネチアは入ってきた男にあいさつしてから、差し出された書類に目を通した。それから教授に渡し、目を通してもらった。書類はきちんと整っていて、もしもその家が祖母の死後、ベネチアに譲られていたら、祖母が受け取った額の三倍で売ることができたはずだなどと指摘しても、むだだったろう。
 ベネチアはため息をつき、教授が男を玄関へ送って出るのを見つめていた。戻ってきた時、彼女は椅子から体を起こした。
「ありがとうございました、教授。お忙しいのに同席してくださって。あとは荷造りして、どこか家具を預けるところを探すだけです」ベネチアは無意識に心細そうに言い足した。「お帰りになる前に、お茶をいかがですか?」
「いや、けっこう。今夜必要なものを用意したまえ。君は僕と一緒に来るんだ」
 ベネチアの青ざめたほおがかすかに赤らんだ。「とんでもありませんわ、教授。ご親切は感謝しますが……」
「親切心で言っているんじゃない、良識で判断しているだけだ。こんなところに君をひとりで置いておくわけにはいかないからね。僕の家政婦が君の世話をしてくれるさ。君は明日の朝ここへ戻って、やらなきゃならないことをしたらいい」
 教授は心底私心のない口調だ。
「でも、ご迷惑じゃありません?」
「どうして? 僕は今夜夕食に出かけて、帰宅するのは深夜だ。明日は朝から手術だし。そう、君は二晩とも僕のところに泊まるんだ。さあ、早く用意したまえ」
 そんなふうに言われると、ベネチアは返す言葉に詰まった。実際、彼女はまだいつもの独立心を回復していなかった。二、三枚の着替えを小ぶりの旅行かばんに突っ込みコートを着ると、ベネチアは近所の人々が興味津々で見守る中を教授にせかされながらベントレーに乗り込んだ。
 霧の深い夕べだった。夜更けには霜が降りるだろう。ベネチアは大きな車の中の暖かさにほっとした。そして、空腹だったことに気がついた。あわただしく昼食を詰め込んだあと、お茶の時間になるのを待たずに病院を出てきた。たった今、何年間か自分のうちだったコテージと別れた寂しさに空腹感が加わって、ベネチアは思わず涙ぐんでしまった。涙は次々にあふれて、ほおを伝う。ベネチアは声を忍ばせてすすり泣いた。教授がまっすぐ前方を見つめているのがありがたかった。顔を背けるようにして、ベネチアは窓の外に目を凝らした。何も見てはいなかったが。
 車は広い通りに入った。どの家も大きな庭に囲まれている。教授は通りの端の家の開いた門の中にベントレーを入れ、明かりのともったポーチの前で止めた。エンジンを切ると、静かに言った。「なぜ泣いているんだね、ベネチア?」教授はハンカチを差し出した。
 ベネチアは目をぬぐい、はなをかんでから涙声で答えた。「ほんとに、ご親切に」と言って、ハンカチの縁から上目使いに教授を見る。「ごめんなさい。女に泣かれるほど男にとって腹立たしいことはない――ママはいつもそう言ってました」ベネチアはすすり泣きをぐっとこらえて、顔をこすった。「でも私、いろいろあったので……」
 教授は何も言わずに片腕でベネチアを抱き寄せた。教授の無言の慰めに、ベネチアは彼の肩に顔を埋めて、また泣きじゃくった。ややあって教授は言った。「明日、二人でこれからのことを相談しよう。昼食のあと帰ってくるから待っていてくれないか。ほら、分かち合えば悲しみも薄れるって言うだろう?」
 ベネチアは教授のコートに顔を押しつけてすすり上げた。「私、いつもはこんなに泣き虫じゃないんです。だけど、あんまり突然だったから……」
「その上、君はひとりぼっちときてる」教授は優しく言って、ベネチアを放した。車を降り、助手席のドアを開ける。自分のキーで玄関を開け、彼女を中へ招き入れた。広々としたホールはクリスタルのシャンデリアがきらめき、階段が曲線を描いて上に続いている。ホールに通じるいくつかのドアの一つが開いて、小柄なぽっちゃりした女性が現れた。家政婦らしく白髪まじりの髪を高く束ねて、すっきりした黒のワンピースを着ている。
「おかえりなさいませ、教授」彼女は教授とベネチアに小走りに近づいた。「教授のお召しものは主人が用意いたしました。ほかに何か、お要りようのものは?」小さな輝く目が、まじまじとベネチアを見つめた。
「ミセス・トッド、こちらはミス・ベネチア・フォーブズだ。二晩ほどお泊まりになる。夕食の用意を頼むよ。二階の裏庭を見下ろす部屋がいいだろう。今からご案内してくれるかい?」
 ミセス・トッドは笑顔でうなずいた。「かしこまりました。それじゃ、ミス・フォーブズ、お二階へどうぞ……」


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