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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

育てられた花嫁

育てられた花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

誕生日プレゼントはプロポーズ……。すべては大富豪の冷酷な計画だった。

誕生日の夜、リリアナはイサルにバージンを捧げた。10年間恋い焦がれた後見人の彼に、一瞬でも振り向いてほしくて。けれどその行動は、大きな過ちでしかなかった。どうしてイサルが、両親を亡くした12歳の彼女を引き取り、家から遠く離れた山奥の寄宿学校に閉じこめたのか?今も厳しい監視の目を光らせ、生活を制限するのか?なにもかもが、私を花嫁にするための計画だったなんて!今後は夫に従順に尽くし、子供を産み育てるだけ。イサルが求める、億万長者の愛されぬ完璧な妻として……。

■両親の死後、自分を引き取ってくれた後見人のヒーローに、10年間あこがれてきたヒロイン。二度目に会ったとき、二人は情熱的に求め合い、ヒーローはヒロインに結婚を申しこみます。しかし、それは平手打ちにも等しい、あまりに屈辱的なプロポーズでした。

抄録

 イサルとのキスは、摩天楼のてっぺんから氷でおおわれた北極海へ飛びこむのに似ていた。めくるめく興奮と冷たい衝撃の中で、リリアナは残酷なことばかり言う唇と、熱が伝わってくる分厚い胸板の感触を味わっていた。
 酔っていたのはさっきまでの話だったのだ。なぜなら今のリリアナは、少しも酔っていなかった。少し前の自分がなにを考えていたのか、想像もつかない。
 つかのま、二人は石になったようにじっと動かなかった。リリアナの心臓が壊れそうなほど強く、一度だけどくんと打つ。
 リリアナの脳裏には、今日までの人生が走馬灯のように映し出されていた。そのほとんどに今、肩をつかんでいる腹立たしい男性は存在していた。彼の手は大きく力強く、清潔な匂いには妖しく刺激的ななにかがまじっている。唇はタブロイド紙で見たとおり、簡単にかたちが変わらないくらい硬い。
 彼女の心臓がまたどくんと打った。
 今夜、彼に放った言葉の一つ一つが頭の中で再生される。いったい私はなにを考えていたのだろう? イサルをからかうなんて、頭が変になっていたのだろうか? これでまた私は狭く暗いどこかへ放りこまれ、今度こそ二度と出してはもらえなくなる……。
 でも暴言よりもなによりも、まずなんとかしたほうがいいのは、イサルに体を押しあてている事実だ。十年も顔も合わせていなかったのに、その相手に触れ、寝室で唇を重ねている。いったいどう言い訳しよう? この先、どんな顔をして生きていけばいい?
 もう一度リリアナの心臓がどくんと打った。
 とにかく、体を離さなければ。願わくはそのまま消えてなくなるか、息絶えられますように。
 しかしそのとき、イサルの口から低いうなり声がもれた。聞いたこともない響きはリリアナの全身を駆け抜け、煙のようにまとわりついて自由を奪った。
 そしてイサルは顔の角度を変え、リリアナを抱き寄せて主導権を奪った。
 その瞬間、すべてがはじけた。くるおしい閃光が生まれ、二人のまわりの世界が消えてなくなる。あるのはただ支配者たるイサルの、炎のように熱い唇のみだった。
 さらに強く抱きしめられて胸がイサルの硬い胸板に押しあてられたとき、リリアナは自分でも自分がわからなくなっていた。なぜなら、キスに応えずにはいられなかったからだ。イサルの首に手をまわし、少しでも彼に近づきたくてたまらなかった。
 無意識のうちに短い黒髪に指を通すと、その感触さえも稲妻のように体を焦がし、リリアナは思った。永遠に彼とこうしていられるなら、いっそ焼け死んでもかまわない。
 イサルがキスを深め、リリアナはたまらず身をのけぞらせた。自分がなにに腰を押しつけているのかは、はっきりとわかっていた。それでも、彼女はもっと先へ進みたかった。彼が、すべてが欲しかった。
 ようやく意味がわかった。私の人生や、イサルの写真を検索して過ごした長い夜、距離を隔ててもなお痛いほど張りつめていた二人の関係、いつも長く暗い影を落としてきた彼からたまにくる手紙の意味が。すべてはここに、この歓喜の瞬間につながっていたのだ。イサルのざらついた顎を体じゅうで感じなければ、私は死んでしまう。
 別の道があるとも知らず、ずっと暗闇の中を歩いていた気分だ。そんな私の心の扉を、イサルはキスで開いた。暗闇を照らし、あふれんばかりの光で満たしてくれたのだ。
 イサルが引きはがすように唇を離し、リリアナの体を押し戻した。漆黒の瞳はぎらつき、傲慢そうな唇は真一文字に結ばれている。彼もまた息が上がっていて、リリアナが呼吸を整えるあいだ、スペイン語でなにか低くつぶやいていた。意味はわからなくても、ののしり言葉なのは表情からわかった。
「こんなことがあってはならない」
「もうあったわ」
 リリアナの肩に置かれたイサルの手に力がこもり、そして離れた。
「許されないことだ」彼が髪をかきあげた。その唇は苦々しくゆがんでいたが、目はますますぎらついていた。その光の正体に、今のリリアナは気づいていた。同じものが体の奥の、これまで存在すら知らなかった場所を刺激していたからだ。「君は僕の被後見人だぞ」
「まあ、いけない人」小声で言ってから、リリアナはイサルをからかっている自分に気づいた。たった数行の手紙やメールでも恐れていた人なのに。「こんな不潔なことをして、これから恥ずかしいと思わずに鏡が見られる?」
 イサルがむっとして口をつぐんだ。「冗談ではないぞ」
「ええ、あなたが言うならそうでしょうね、おじさま」
 彼はうなり声をあげた。
 いったい今夜の私はどうしたのだろう? たしかに、最初はワインの魔法のせいだったかもしれない。でも、今はもう少しも酔っていなかった。少なくともワインには。だとしたら今の状態はなに? 答えはわからない。わかるのは全身に不思議ななにかが、完全には理解しきれない秘めた欲望が流れていることだ。そんな感覚は生まれてはじめてだった。
 イサルのせいだ。きっとはじめから、私の運命の相手はイサルと決められていたのだ。


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