マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

キスも知らない愛人

キスも知らない愛人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 アニー・ウエスト(Annie West)
 家族全員が本好きの家庭に生まれ育つ。家族はまた、彼女に旅の楽しさも教えてくれたが、旅行のときも本を忘れずに持参する少女だった。現在は彼女自身のヒーローである夫と二人の子とともにオーストラリア東部、シドニーの北に広がる景勝地、マッコーリー湖畔に暮らす。

解説

あなたにだけは知られたくなかった。私がどんなに醜いかを。

ラファエル・ペトリが私を雇いたいというの? ニューヨークのホテル王からの突然の指名に、リリーは驚いた。自宅で企業調査を請け負う彼女にとっては名誉なことだが、一つだけ気がかりなことがあった。人目に触れるのが怖いのだ。14年前、リリーはある事故で頬に火傷を負い、それ以来、恋愛を遠ざけて世間から隠れるように生きてきた。その美貌で女性を虜にできるラファエルには理解できないだろう。リリーは地味なだぶだぶの服に身を包み、髪で片頬を覆うと、傲慢な雇い主のもとへ向かった──愛人になる運命とも知らずに。

■純粋で愛らしいヒロインを描くのを得意とするアニー・ウエストらしい、シンデレラ・ロマンスです。美貌のイタリア人大富豪に見出された、容姿に自信のないヒロイン。二人の愛のゆくえは……?

抄録

 物音はまったくしなかった。集中力も妨げられなかった。だが突然、リリーは自分が一人でないとわかった。
 背筋がちくちくして、肌がぴんと張りつめる。全身が凍りつき、キーボードの上で指が止まった。リリーはゆっくり顔を上げた。
 やはり彼だ。肩の一方をドアの側柱にもたせかけて、足首を交差させている。リリーは、この男性の存在だけは間違いなく気づいた。
 いつも。彼がリリーに視線を向ける前に。
 たとえ視線を向けられなくても。
 第六感か、原始的な何か、説明のつかない動物的な本能のようなものかもしれない。だが、リリーはいつも真っ先に彼に気づいた。
 今、彼は半ば閉じた目で彼女を見つめている。そのせいでリリーの血は騒いだ。
 オフィスで見かけるカジュアルなズボンとジャケット姿でも、ラファエルは目を見張るほどだ。でも、フォーマルな格好だと……。リリーは目を大きく見開いた。タキシード姿で、けだるげな笑みを浮かべた彼は、罪深いほど魅惑的な堕天使のようだ。襟元に垂らしたボウタイが退廃的な雰囲気を加えている。
「また残業か?」
 リリーはうなずき、咳払いをした。ここへ来て一カ月以上たつのに、彼をこんなに意識してしまうのが奇妙だった。けれど、胸が高鳴り、急に息が苦しくなるのは間違いない。
 多くのほかの女性たちと同じ反応をしただけよ、と言い聞かせても無駄だった。できることはただ一つ。誰にも――目の前の男性には特に、決して悟られないようにすることだ。
「ところが、明らかに、ボスにいいところを見せたいからではない」彼は腕を組んだが、リリーは彼の顔に視線を据え、広い肩や、しなやかなヒップは見ないようにした。
「そう思います?」なんとか声に出して言う。
 仕事の邪魔をしないで! 最近、ほかのスタッフは彼女のオフィスに定期的に出入りしていた。驚いたことに、プロジェクトチームの一員として彼女を迎えた最初のショックが過ぎたあと、ここの人たちは、ほかの職場とまったく対応が違った。
「そうでないのはわかっている」ラファは体を伸ばし、彼女のオフィスに入ってきた。
「今度は読心術ですか?」
「今度は、なんだって?」彼がデスクの数歩前で立ち止まると、オフィスが急に息苦しくなった。「いや、言わなくていい。どういう意味か解き明かすのが楽しみだから」
 リリーは椅子の背に体を引き、両手を膝に落とした。彼の言葉は明るかった。まるで二人のやりとりをゲームみたいに思っている。
 だが、リリーはゲームはしない。
「私が仕事に励んでいるのは、あなたにいいところを見せたいからではないと、どうしてわかるの?」
 ラファは肩をすくめた。その流れるような身のこなしはまさにイタリア人だった。
「君は僕を称賛の目で見ない。僕のオフィスにやってきて質問したり、ブラッドショーの秘密を探り当てたとひけらかしたりしない」
 リリーの口元がひくついた。彼に評価されていたことに思わず笑みがこぼれそうになった。だが、そのまま口角を上げるのは思いとどまった。もしこの男性に気を許してしまえば、防御の壁は二度と築けない気がした。
 どんなに魅力的でも、ラファエル・ペトリは危険な男。彼はリリーを無理にここに連れてきて、彼女の内の性的な欲求を目覚めさせた。リリーはそれが怖かった。昼も夜も、彼は彼女の心の中に忍びこんできて悩ませる。
「とにかく、最終結果でご報告します」リリーは慎重に両手を組み、落ち着きを装った。「あなたのオフィスをうろついて、ささいな成果をひけらかす気はありません」
 形のよい唇が片方上がって笑みが浮かぶと、日焼けした頬にセクシーなしわが刻まれた。
 熱気がリリーの胸から下へと渦を巻き、下腹部が引きつって、まぎれもない性的な興奮を呼び起こした。
 だから油断は禁物なのだ。ラファエル・ペトリはただリリーに何かをさせたり、彼女の何かを壊す力を持っているだけではない。彼は、不可能だったことをリリーに渇望させる。
「あなたは最高の仕事をさせるためにお金を払っている。よい仕事をするたびに頭を撫でてくれと要求するほど称賛に飢えてないわ」
 彼の注意をそらすために言ったのなら、間違いだった。ラファエルは身を引くどころか、険しく細めた目で彼女を見つめた。
「ときには、頭を撫でてもらうのではなく」彼はささやいた。「注意を引きたいだけのときもある」
 リリーは思惑ありげにきらめくまなざしを見上げ、彼の言葉を慎重に‘ふるい’にかけた。
 注意を引く――彼の。
 なぜ? 疑問を感じたとたん、答えが出た。皆、彼に惹かれるからだ。彼に気づいてもらいたいからだ。リリーの心の一部でさえ、どうしようもなく、ひょっとしたら彼はと思い描いてしまう……。
 リリーがふいに動くと、椅子がデスクから後ろに滑って壁にぶつかった。
 リリーはいつの間にか立ち上がっていた。胃が締めつけられて苦い味がこみ上げる。彼に自分のひそかな欲望を見抜かれた気がして、ひどく惨めだった。惹かれる気持ちが抑えられないのを、彼に見破られたのだろうか。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。