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虹の裏側

虹の裏側

著: 眉村卓
発行: 出版芸術社
レーベル: ふしぎ文学館
価格:840円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 眉村 卓(まゆむら たく)
 1934〜
 大阪生まれ。大阪大学経済学部卒。サラリーマン生活のかたわら同人誌「宇宙塵」に参加し、61年『下級アイデアマン』でデビュー。63年には『燃える傾斜』を発表し、日本で二番めの長編SF作家となった。以後、『幻影の構成』『EXPO’87』といった長編と共に、ショートショート、『ねらわれた学園』などの学園SFも多数執筆している。『消滅の光輪』で第七回泉鏡花文学賞を受賞。

解説

 本書にはさまざまな「日本」が描かれている。会社勤務のサラリーマン。管理社会。日常生活にしのびこむ異物。あるいは異物の侵入によってねじまげられた日常生活。そして風俗。怪談。民話。日本史。アメリカで黄金期をむかえたSFは、日本に紹介されたあと眉村卓の手によってこのような変貌をとげた。これは草創期における日本SFの、原点ともいえる作品群である。「時代」を追うあまり無国籍化した感のある最近の日本SFが、失ってしまった懐かしさがここにある。 (谷 甲州)


 何もかも嫌になった私は、ある日叫んだ。「誰か来い! 早く来て、俺を助けろ!」「はい、ご主人様」――本気か冗談か、どこからともなく現れた男は、次次と私の命令を実行するが、やがて…… 恐怖SFの名作『仕事ください』
 編集部に押し入った暴漢と争って、守衛の伊藤さんが亡くなった。弔問に訪れたぼくに奥さんが見せてくれた伊藤さんの手記は、驚くべきものであった! タイムトラベルSFの会心作『名残の雪』など、あなたを異次元世界へ誘う異色の傑作・全15篇!

目次

仕事ください
ピーや
すべり込んだ男
サルがいる
風が吹きます

むかで

さむい
ネズミ

奥飛騨の女
砂丘の女
潮の匂い
名残の雪

初出一覧
あとがき
著作リスト

抄録

 「おや、進(しん)さん」同僚が腰を浮かした。
 「おまえ、人騒がせは止せ!」
 「ぼく?」
 むろんワイシャツの袖は薄黒く、背広はしわだらけだったが、それがなぜ、人騒がせなのかわからなかった。
 「おまえ、死んだんじゃねえのか」
 「よう!」またひとり寄って来た。
 「さっき大阪から電話があってな……おまえがきのう車にはねられたといってきたんだぜ」
 「車……?」
 「おまえが身分証明書を持っていたんで、警察は会社へ連絡してきたんだ」
 「おかしいな」
 「ひと違いだったのね」声に顔をむけた。
 美津子だった。二年前にぼくと結婚して退職した美津子だ。連絡を受けて会社へとんできたのだろう。
 安堵が、すぐ怒りに足をすくわれた。
 「どうしたんだ。きのう……どこへ行っていたんだ」
 「え?」
 「赤ん坊は置いてきたのか?」
 「赤ん坊?」
 美津子は口をあけて後退した。まわりを見て、
 「どうなってるのよ」
 「しっかりしろ、進さん」
 ぼくのまわりに人垣ができていた。
 ひとりが美津子の背中をどやしつけて、けたたましく笑いだした。
 「おい美津ちゃん、あんた、いつ進さんと結婚したんだ?」どっと笑声。
 「からかうつもりか?」
 「…………」みんな黙った。異様に白い目と目と……そして目。
 美津子の目……。
 他人の目だった。出張前に赤ん坊を抱いて送りだした妻の目ではなかった。 (「すべり込んだ男」より)


*この続きは製品版でお楽しみください。

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