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和書>小説・ノンフィクション>歴史・時代小説>一覧
著者プロフィール
松岡弘一(まつおか・こういち)
1947〜
埼玉県川島町生まれ。各種の職業を経た後、1991年、黒豹小説賞、小説CLUB新人賞、新鷹会の池内祥三文学奨励賞を授賞してデビュー。1997年、日本文芸家クラブ短編賞を受賞。現在までにハードアクション、ミステリー、ホラー、時代ものなど著書多数。特技は各種格闘技の研究。年齢も省みず、実践しては半殺しにされ、その体験を小説 に生かす。
1947〜
埼玉県川島町生まれ。各種の職業を経た後、1991年、黒豹小説賞、小説CLUB新人賞、新鷹会の池内祥三文学奨励賞を授賞してデビュー。1997年、日本文芸家クラブ短編賞を受賞。現在までにハードアクション、ミステリー、ホラー、時代ものなど著書多数。特技は各種格闘技の研究。年齢も省みず、実践しては半殺しにされ、その体験を小説 に生かす。
解説
命を賭ける賭博場の秘密、吸血獣との対決、はたまた、大店の主毒殺の狂乱騒ぎ。「お化け相談所」を営む二人=二匹の化け猫が繰り広げる大立ち回り! 鏡四郎とお駒の色恋や江戸の生活風俗を見事に盛り込んだ、愉快痛快妖し時代小説、シリーズ第一幕、上巻!
目次
暗殺密書
命もらいます
命もらいます
抄録
「シロ、シロ、どこにいるの?」
鈴を転がすような声で、お鈴が呼んでいる。
色白な美少女、お鈴は神田下白壁町中央通り沿いで太物を扱う大黒屋の次女である。上に兄と姉がいて、どちらも活発な働き者だが、お鈴だけが病弱なので、遊ばせている。
というよりは、父の幸右衛門が遅く作った子なので、かわいくて仕方がないのである。
お鈴は部屋から部屋へと探して歩く。
居間の襖《ふすま》を開けて、お鈴の顔がほころんだ。大きな白猫が部屋の真ん中で寝そべっていた。猫は長いというが、奔放な姿で寝転んでいる姿は、ほんとうに長い。
「シロったら」
お鈴は目を細め、そっと近づいていくと、横向きに寝ているシロのかたわらにしゃがみこみ、愛しそうに背を撫でる。
いつもお鈴が香油を付けてくしけずっているので、シロの毛は雪よりも白く、やわらかい。てのひらを返して、今度は甲で撫でさする。このふんわりした感触がなんともいえない。
すぐにシロが、グニャリと身をひねってあおむけになった。
「うふふ」
お鈴は腹を撫でてやる。
するとシロが、お鈴の手を前脚で抱え込むようにした。鋭い爪ではあるが、今はひっこめているので傷つけるようなことはない。
「かわいい」
喉を撫でると、ゴロゴロと音を立て、くすぐったそうに身をひねり、最後は四肢をちぢめてうつぶせになった。
秋の日はつるべ落としだ。たちまち日が移ろい、宵闇が迫ってきた。
お鈴は、クシャンとおしとやかなくさめを一つして、身をふるわせた。すぐに羽織を取りに行く。風邪をひきやすいので、人一倍身体には気を使っているのだ。
羽織をひっかけ、鰹節をふりかけた飯を持って戻ると、シロの姿が見えなかった。
「シロ、シロ」
呼んだが返事がない。
庭に目をやると、シロの後ろ姿が見えた。シロは素早い動作で土塀を駆け上り、宵闇の中に姿を消した。
いつものとおりだった。シロは夕方になると、いずこへともなく消えていき、朝になると、体を汚して帰ってくる。一年前ほど前から家に居ついているが、その間、ずっと変わらぬ習慣だった。
お鈴は立て続けにくさめをして、寒そうに首をすくめた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
鈴を転がすような声で、お鈴が呼んでいる。
色白な美少女、お鈴は神田下白壁町中央通り沿いで太物を扱う大黒屋の次女である。上に兄と姉がいて、どちらも活発な働き者だが、お鈴だけが病弱なので、遊ばせている。
というよりは、父の幸右衛門が遅く作った子なので、かわいくて仕方がないのである。
お鈴は部屋から部屋へと探して歩く。
居間の襖《ふすま》を開けて、お鈴の顔がほころんだ。大きな白猫が部屋の真ん中で寝そべっていた。猫は長いというが、奔放な姿で寝転んでいる姿は、ほんとうに長い。
「シロったら」
お鈴は目を細め、そっと近づいていくと、横向きに寝ているシロのかたわらにしゃがみこみ、愛しそうに背を撫でる。
いつもお鈴が香油を付けてくしけずっているので、シロの毛は雪よりも白く、やわらかい。てのひらを返して、今度は甲で撫でさする。このふんわりした感触がなんともいえない。
すぐにシロが、グニャリと身をひねってあおむけになった。
「うふふ」
お鈴は腹を撫でてやる。
するとシロが、お鈴の手を前脚で抱え込むようにした。鋭い爪ではあるが、今はひっこめているので傷つけるようなことはない。
「かわいい」
喉を撫でると、ゴロゴロと音を立て、くすぐったそうに身をひねり、最後は四肢をちぢめてうつぶせになった。
秋の日はつるべ落としだ。たちまち日が移ろい、宵闇が迫ってきた。
お鈴は、クシャンとおしとやかなくさめを一つして、身をふるわせた。すぐに羽織を取りに行く。風邪をひきやすいので、人一倍身体には気を使っているのだ。
羽織をひっかけ、鰹節をふりかけた飯を持って戻ると、シロの姿が見えなかった。
「シロ、シロ」
呼んだが返事がない。
庭に目をやると、シロの後ろ姿が見えた。シロは素早い動作で土塀を駆け上り、宵闇の中に姿を消した。
いつものとおりだった。シロは夕方になると、いずこへともなく消えていき、朝になると、体を汚して帰ってくる。一年前ほど前から家に居ついているが、その間、ずっと変わらぬ習慣だった。
お鈴は立て続けにくさめをして、寒そうに首をすくめた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
形式
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