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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

小さな命と秘めた恋

小さな命と秘めた恋


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 テッサ・ラドリー(Tessa Radley)
 旅と読書を何よりも愛しているという。幼いころからファンタジーやミステリー、ロマンスを読みふけっては空想の旅をしていた。英文学と法律の学位取得後、法律事務所に勤務するも、オーストラリアへの家族旅行をきっかけに執筆活動に転向することを決意。旅がすべてのインスピレーションと語る。

解説

守ってきた純潔を捧げた夜に、授かった命。でも父親が誰かは言えない……絶対に!

不実な婚約者が事故死した2カ月後、妊娠がわかり、エイミーは激しく動揺した。いったいどうすればいいの?「大丈夫だ。ぼくがきみと兄さんの子を支えるよ。結婚しよう」友人でもある婚約者の弟、ヒースはそう言ってプロポーズしてくれた。2カ月前と同じように、優しく。謎めいた黒い瞳、危険な香りを漂わせる黒髪の大富豪、ヒース。あの夜、ふたりは一線を越えた。そして……。エイミーは心のなかで叫んだ。違うの!この子の父親は……。

■大好評を博したD−1358『シークと薔薇の宮殿』、D−1502『侯爵に盗まれたキス』の関連作です。妊娠がわかったヒロインは重大な秘密を告げぬまま、亡き婚約者の弟との結婚を承諾しますが……。

抄録

 ケイトリン・ロスは優秀で、化学ですばらしい成績をおさめて奨学金を獲得し、大学に進んだ。エイミーも高校で勉強を頑張ったが、学年末の表彰はいつも努力賞と学内貢献賞だった。“ミス・優等生”と呼ばれ、陰口をたたかれたことを思いだし、エイミーは胸が苦しくなった。
「ぼくはケイトリンの家庭教師だったから、彼女がすごく優秀だと知っていた。だから父に彼女を雇うよう話したんだ。父は珍しく反論しなかったよ」ヒースは一瞬、口もとをゆがめた。「大学が休みのあいだ、父さんはケイトリンに仕事をさせた。彼女があまりにも優秀だったので、父は彼女を手離さなかった」
「ケイトリンがお父さまのあとを継いだとき、あなたは傷つかなかったの? ケイトリンがここのワインメーカーになってしまったでしょう」エイミーは、そのことがずっと気になっていた。
「まったく。ぼくはここを辞めるときに、ケイトリンを後任として父に推薦したんだ」
「お父さまはあなたの助言に二度も耳を傾けたのね」ヒースは、父親のフィリップ・サクソンから信頼されていることに気づいていないのかもしれないとエイミーは思った。親子のあいだに溝があるのは悲しいことだ。
「父も愚かではないということだ」
 エイミーはちらりとヒースを見た。「あなたがいつもケイトリンのことを褒めるから、いずれ結婚するのだろうと思っていたわ」
 ヒースは一瞬肩を緊張させ、すぐにゆるめた。
 以前、ケイトリンはヒースを好きなのだとエイミーは確信していた。ケイトリンが愛を求める顔で彼を見つめていることがあったから。けれども、スペインからラファエロが来て、すべてがかわった。ケイトリンは彼と恋に落ちた。「そうね。ふたりは幸せになれるわね。結婚式はいつにするか決まったの?」
 ヒースがさっとエイミーを見た。「来年だ」
 結婚式。エイミーはうつむき、痛いほど唇を噛んだ。
「エイミー?」
 エイミーは顔を上げなかった。彼女はパソコンのキーボードをたたくふりをしたが、大粒の涙がこぼれ落ちるのを止められなかった。
「エイミー」
 エイミーはさらにうつむいた。ヒースに泣き顔を見られたくなかった。彼にも、ほかの誰にも。
 だが手遅れだった。ヒースはカウンターをまわってエイミーのそばに来た。彼の息づかいが聞こえ、彼女は肩を震わせた。体が熱くなり、張りつめて、いまにも爆発しそうだ。これ以上は抑えられない。押し殺してきた悲しみや、ほかの感情がすべて外にあふれそうだ。
「落ち着いて」
 ヒースが両手をエイミーの肩に置いた。エイミーは懸命に嗚咽をこらえた。胸が苦しくて息ができない。
 顔を上げると、苦しみが浮かぶヒースの目が見えた。エイミーはきつく目を閉じた。涙がとめどなく流れる。
 ヒースが体をかがめる気配がしたが、エイミーは目を開けることができなかった。体から力が抜けて椅子に座っていることも困難になる。椅子からすべり落ちる彼女の体をヒースが支え、床にひざまずいてかかとに腰をのせ、たくましい腿の上に彼女を座らせた。紺色のタイトスカートの裾が乱れ、エイミーは裾を整えようと手を伸ばした。だが、手が裾に届く前にヒースに抱きしめられた。あたたかな男性のにおいに包まれ、エイミーは彼の胸に顔をうずめた。彼は太陽と土埃と、レモンのにおいがした。
「きみはずっとローランドを愛してきた。いま、心にぽっかり穴があいているんだね」
 喉の奥が熱くなり、エイミーは嗚咽をもらした。これ以上、ヒースの声を聞きたくなかった。抱擁をといて、どこかへ消えてほしい。けれども、いまのエイミーには声を出す力さえなく、ただ涙を流し続けた。
「泣いていいんだよ。好きなだけ泣いていい」
 こんな姿をヒースに見られたくなかった。ヒースは落ち着いていて冷静だ。彼はもう衝動的なバッドボーイではなく、大人なのだ。一方、いつでも正しい行いをし、困っている人に手を差しのべる品行方正な“グッドガール”だった自分がこんなにもとり乱している。なんということだろう。
 エイミーはじきに、どうして自分が泣いているのかさえわからなくなった。激しい苦しみが体から出ていくように感じる。ヒースは黙ったまま動かず、ただエイミーを抱きしめていた。
 しばらくして嗚咽がおさまると、エイミーは顔を上げてヒースから少し体を離した。彼の黒いTシャツに涙の染みがついている。彼女が赤ん坊のように泣きじゃくったせいだ。
 エイミーははなをすすり、さらに体を離そうとした。「ごめんなさい。わたし、どうしたのかしら。涙が止まらないの」
 ヒースがふたたびエイミーを抱きしめようと腕を伸ばした。「きみがつらい思いをしているのはわかるよ。ぼくはきみを慰めたいんだ」
 エイミーはヒースの腕から逃れ、立ちあがろうとした。そのとき、部屋がぐらりと大きく揺れたように感じた。周囲が急に暗くなる。「ヒース、わたし、気分が悪い……」
 膝から力が抜け、体が傾く。かすむ視界に、彼女を支えようとするヒースが見えた。
 そしてすべてが闇に包まれた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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