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閉ざされた記憶【ハーレクイン文庫版】

閉ざされた記憶【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

5年前、アニーは交通事故に遭い、身も心も大きな傷を負った。それ以来、他人を避け、孤独に生きてきたが、ある日、“夢の恋人”とそっくりな男性とすれ違う。毎晩彼女の夢に現れては抱きすくめる、逞しい体、長い手足……。直感の赴くまま車を走らせると、見覚えのある屋敷に辿り着く。中から出てきたのは――“夢の恋人”だった。威圧的でありながら魅力を湛える彼に、目を奪われ、陶然となる。だが、夢では美しい“恋人”の顏は、苦悶の形に歪んでいた。「君は僕の妻だ。なぜ平然と戻ってきた」
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 太陽の下でこうして間近に見ると、男性はやはり夢の恋人にそっくりだった。ここに導いた運命の力を感じ、アニーはわきあがってくる喜びに震えて、その場に立っていた。
 そうよ。私の考えていたとおり。これには何か、運命的な力が働いているんだわ。
 相手を食い入るように見つめたアニーは、心に刻まれている夢の恋人と、頭の中で比べていた。目は同じ深いブルー。肌も同じくきれいに日焼けしている。髪も同じ、インクのようなブルーブラックだ。何もかもがそっくりだった。彼の口元もまったく同じだ。
 彼の唇。男性的な上唇と、ふっくらしたセクシーな下唇。アニーは官能的な喜びでかすかに身を震わせた。目を閉じれば、彼と唇を重ねたときの興奮がよみがえってくるだろう。
「来たのか」
 彼の声はアニーの頭の中でこだまするようだった。口調は思いがけなく厳しかったが、それでも耳になじんだ声だ。
 ようやく出会えたという感激で、アニーは全身に鳥肌が立つのを感じた。このときを待っていた。このときにたどり着くまでに、長い道のりを旅してきたのだ。
「ええ」アニーはささやいた。「あなたは……私が来るのを知っていたの?」彼女の神経は高ぶっていた。
 彼の背後では家のドアが開けっ放しになっていた。ドアの向こうには、大きな玄関ホールがあり、そこにあるテーブルには男性のブロンズ像が置いてある。さらにらせん状の階段があり、その手すりにはさまざまな海の生き物、はねる‘いるか’、優美な鯨、たこ、たつのおとしご、人魚などが細かく彫りこまれている。なぜか、アニーには手に取るように、それがわかった。
「僕は……」彼の声は、目の前の事態の重大性を意識しているかのように緊張していた。
 彼を見あげていたアニーは、彼がこれ以上耐えられないというように目をそらしたとき、突然、この人を守ってあげたいという愛情がどっと胸に押し寄せるのを感じた。
 本能的に相手に近づいたアニーは、片手を彼の腕にのせ、やさしくささやいた。「大丈夫。何も心配はないわ。私はここにいる。私たちは……」
 手の下で彼の筋肉がこわばるのを感じ、アニーが目を上げると、彼は口を固く真一文字に結んでいた。そして、彼の体が大きく震えるのを感じた。
「あの……中に入ってもいいかしら?」アニーはためらいがちに尋ねた。
 その家はアニーを呼んでいた。中に入らずにはいられなかった。あたかも、すでにその家を、間取りや内装や歴史や匂いまで知っているかのようだった。まるで、彼を前から知っていたと思えるように。
 今度はアニーのほうが体をこわばらせ、身震いする番だった。彼女はすでに玄関ホールに足を踏み入れていた。彼がすぐ背後にいるので、ドアから入る日差しはさえぎられている。
「こんなことが起きるなんて思ってもいなかったわ」夢見るような瞳で彼をまじまじと見ながら、アニーはつぶやいた。
 彼はアニーよりはるかに背が高く、肩幅もあった。だが、それは夢の中ですでに知っていることだ。彼女は、チェックのシャツと色あせたジーンズを脱いだ彼がどんなふうに見えるかまで知っていた。右腿の内側には、少年時代にあった事故の名残の小さな傷跡が残っている。そこに彼女が唇を押し当てると、彼は……。
 感情も欲望もコントロールできなくなったアニーは、激しく震えていた。彼を見ていると、官能的なうずきが体中に広がっていく。それほど、彼を愛していた。このときを待ち望んでいた。
「二階に行く?」アニーはかすれ声で尋ねた。目は片時も彼の顔から離さなかった。
 彼が返事をするまで、百年もの時が流れたような気がした。
 口元も口調もこわばったまま、彼は答えた。「君がそうしたいなら」
「ええ。そうしたいの」アニーは大胆に答えた。私はあなたがほしい。あなたを愛しているの。彼女はそう打ち明けたくてたまらなかったが、事があまりにも速く展開しすぎて、そんな感情を口にする余裕がまるでなかった。
 階段の方に向き直った彼女は衝動的に爪先立ち、彼の顔に触れた。指先で、彼の肌のぬくもりと、夢の中の人物ではなく実在する男性の肌の感触を味わった。
 ひげはきれいに剃ってあったが、ひげ剃り跡のざらっとした感触にショックを受け、アニーはまるで火傷でもしたみたいに手を引いた。目を大きく見開き、何かに取りつかれているかのように、彼を見あげた。
「君は僕をほしがっている」彼はあけすけに言った。
 それでも、アニーはぼんやりとうなずいた。ついに、二人の間に何があるのかわかるときがやってきたのだ。
 子鹿のように不安げな瞳でアニーは彼を見つめた。彼の青い瞳は熱を帯びているようだ。彼の頬骨、彼の唇……。
 自分の欲望の激しさに、アニーはめまいを感じていた。二人の間の沈黙と緊張は、深くて冷たい池に張った薄い氷のように張りつめている。その上を渡るのは命がけだ。
「おいで」彼は静かな命令口調で言った。
 すぐにその言葉に従ったアニーは、彼に歩み寄った。彼の体の熱さに焼きつくされそうだ。そして、彼の腕の中に抱き寄せられたとき、彼女は大きく喜びの吐息をもらした。彼女の唇はかすかに開いている。
「ああ……君は僕がほしいんだな」
 アニーは彼が満足げにつぶやくのを聞いた。彼がたくましい腕に急に力をこめたので、彼女はのけぞった。
 彼の唇が重ねられたとき、その荒々しさと強引さに、アニーは衝撃を受けた。思わず、私には知識も経験もないのだから、もっとやさしくしてほしいと訴えようとしたのだが、なぜか、いつのまにか彼の要求に応えていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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