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花言葉を君に【ハーレクイン文庫版】

花言葉を君に【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・ケンドリック(Sharon Kendrick)
 ウエストロンドン生まれ。写真家、看護師、オーストラリアの砂漠での救急車の運転手、改装した二階建てバスで料理をしながらのヨーロッパ巡りなど、多くの職業を経験する。それでも、作家がこれまでで最高の職業だと語る。医師の夫をモデルにすることもある小説のヒーロー作りの合間に、料理や読書、観劇、アメリカのウエストコースト・ミュージック、娘や息子との会話を楽しんでいる。

解説

ギリシアの美しい島でキャサリンは、旅行中の世界的な億万長者フィンと運命的な恋に落ちる。だがフィンとの関係を、キャサリンの上司が嗅ぎつけ、著名人の醜聞として暴露してしまう。その日、フィンは花を抱えて現れた。いつもと変わらぬ熱心さで彼女を求め――許されたと安堵したのも束の間、フィンの顔が変貌し、辛辣な言葉で別れを告げたのだった。キャサリンは泣きながら、花をバラバラにした。予期せぬ妊娠に気づいたのは何もかも終わったあと……。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 海が彼女を招いている。キャサリンは日よけ帽を脱ぎ捨て、海に向かって走った。波打ち際に近づくと砂が湿っている。彼女はそのまま海に駆け込み、足が立たなくなるまで進んでから泳ぎ始めた。
 海の水は温かく、少しもさっぱりしないものの、火照った体を洗う波はシルクのように心地いい。キャサリンは海岸線に沿って気分よく泳いでいたが、そろそろ戻ろうと思ったとき、片脚がこむら返りを起こし、驚きと痛みに思わず声をあげた。
 泳ぎ続けようとしたが、脚が動かない。助けを呼ぼうと口を開けた拍子に、海水を飲んでむせた。
 慌てちゃだめよ、と自分に言い聞かせても、体は言うことをきいてくれない。脚の硬直がひどくなるにつれて、塩水が口から入ってくる。キャサリンは理性を失い、両腕をばたばた動かした。
 グリーンの瞳と黒い髪の人魚が住む、感覚の海を漂っていたフィンは、何かの音に夢を破られ、はっと目を開けた。キャサリンがいない。
 本能的に危険を察してフィンは立ち上がり、海を見渡した。不自然に波立っているところがあり、人の手が見える。彼女は海にいる。
 しかも、溺れかかっている!
 フィンは全速力で走った。海に入ると力強いストロークで泳ぎ始め、見る見る二人の距離を縮めた。
「キャサリン!」フィンは叫んだ。「じっとしてるんだ――すぐに助けるから!」
 その声はかろうじてキャサリンの耳に届いたが、いくら無意識に自分に言い聞かせても、体は言うことをきかない。だんだん体が沈んでいく……どんどん深く……塩水が口に入って苦しい。
「キャサリン!」フィンは沈みかけている彼女の腕をつかみ、自分の肩の上に担ぎ上げた。てのひらで強く背中をたたいて飲み込んだ海水を吐かせると、安心したキャサリンはすすり泣きながらフィンにしがみついた。「もう大丈夫だ」彼女の体をチェックしていたフィンの手が、硬直した脚に触れた。
「痛い!」
「岸まで泳いで戻るから、しっかり僕につかまってるんだよ」
「む、無理よ!」キャサリンは震える声で言った。
「黙って」フィンは彼女の体を仰向けにし、ウエストに腕をまわした。
 どうやってビーチまで戻り、そのあとどうしたのか、キャサリンはほとんど記憶がない。覚えているのはフィンにそっと砂の上に横たえられたときからだ。恥ずかしいことに、彼女は残っていた海水を吐き出した。フィンが両手で脚を強くさすってくれたので、こむら返りはしだいにおさまってきた。
 しばらくうとうとしたらしい。気がつくと砂の上でフィンの胸によりかかっていた。
「大丈夫かい?」
 キャサリンはせきをしながらうなずいた。助けられたのは運がよかったのだと思うと、涙がこみ上げた。
 彼女が肩を震わせるのをフィンは感じた。「泣かないで。君は助かったんだよ」
 体が動かない。手足に鉛の重りがくくりつけられているようだ。「だって……あんなばかなことをしてしまって」キャサリンは喉を詰まらせた。
「ちょっと不注意だっただけさ。食べてすぐ泳ぐなんて。どうしてそんなことをしたんだい?」
 キャサリンは目を閉じた。彼の裸を見ているうちに気持ちが高ぶり、頭を冷やしたかったからだとはとても言えない。彼女はただ首を横に振った。
「ビーチチェアまで運んであげようか?」
「あ、歩けるわ」
「無理だよ。さあ」フィンは立ち上がり、軽々と彼女を抱き上げた。
 キャサリンは男性に抱きかかえられることを期待するようなタイプではない――実際、こんなたくましい男性に抱き上げられたこともない。私のまわりの男性は、そんなことをするのは性的差別だと考えているもの! 本当にそうかしら?
 違うわ。絶対に。
 キャサリンはどうしようもなく無力だった。そんな状態でも、男性に抱き上げられることはうれしく感じる。二人の肌が触れ合うたびに、その喜びはさらに広がっていく。まるで電流のように。
「フィン?」キャサリンは弱々しい声で言った。
 フィンは彼女を見下ろした。大きなグリーンの瞳に溺れてしまいそうだ。溺れる。その言葉にフィンは思わずたじろいだ。彼女は溺れるところだった。そう思うと、体に鋭い痛みが走る。「なんだい?」彼女をビーチチェアにそっと寝かせながらきく。
 キャサリンはやっとの思いで顔に張りついた髪をかき上げた。今、体に力が入らないのは、溺れかけたからではない。フィンのブルーの瞳に優しい光が宿ったからだ。
「ありがとう」命を助けてくれたことを考えると、こんな言葉では気持ちを言い表せない。
 少し緊張のほぐれたフィンの唇に笑みが浮かんだ。
「もういいんだよ」彼は滑らかなアイルランドなまりで言った。そんな顔で見ないでくれ。弱々しさをたたえた大きな瞳。砂のついた肌。その砂のひと粒ひと粒を払ってやりたい。キスされるのを待っているようにかすかに開いた唇。「しばらく休んだほうがいい。そのあとでホテルまで送っていくよ」
 キャサリンは奇妙な物足りなさを感じながらうなずいた。荷造りをし、心の準備をしなくては。冷静で恐れを知らないキャサリン・ウォーカーに――『ピザズ!』で長く仕事をしているキャリアウーマンに気持ちを切り替えなくてはならない。でも今は、命の恩人のハンサムな顔を見上げている弱々しいキャサリンでいたい。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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