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億万長者の花嫁【ハーレクイン文庫版】

億万長者の花嫁【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キム・ローレンス(Kim Lawrence)
 イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。

解説

サマンサは巨大企業の受付ロビーに立ち尽くしていた。チェーザレに、この体に新しい命が宿っていることを伝えるために来たのだが、いざ口を開こうとすると心が揺らぐ。彼はサマンサが生涯かけて稼ぐお金を1分で稼ぐほどの実業家だ。なによりも、チェーザレは彼女の名前すら知らない。それどころか目や髪の色、顔がそばかすだらけだということも。会えばきっと幻滅して、すべてが終わる。あの夜、一時的に視力を失っていた彼に絶望から求められ、思いを止められないサマンサは、おずおずと身を任せたのだから。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 サムは拳を握りしめ、短く言った。「スコットランド風のアクセントがある人なんて山ほどいるわ」
 けれど、あの声の持ち主は一人しかいない。
 スコットランドで一夜を過ごしたのはこの女性だ。絶対に間違いない。「それに、その香りだ……」
 深く息を吸った拍子に褐色の喉が収縮し、波打った。鼻孔が広がり、花のような女性の香りに体が反応する。
「香水はつけていないわ」サムはかすれた声で言い返した。
 チェーザレはとても近くに立っているので、手を伸ばせば届きそうだ。そうしたいという気持ちはあらがえないほど強かった。
 どうかしているわ! ここへ来たのは、また自分を見失うためじゃない。サムは唾をのみこみ、チェーザレの美しい顔から視線をそらそうとしたが、できなかった。この男性は魅力的すぎる。
「謎の女性にも名前があったわけだ……」眉間のしわが深くなる。「サム?」
 名前を呼ばれ、サムの背筋はぞくっとした。
「本当はサマンサよ。でも、みんなサムと呼ぶわ」
「サマンサのほうがいい」
 チェーザレがふいに手を伸ばし、サムはどうしていいかわからなかった。目を閉じると、長い褐色の指にゆっくりと頬をなぞられて、体がふらついた。
「本当にいたんだな。僕の背中に引っかき傷がなければ、想像の産物だったんじゃないかと思っていたよ」
 恥ずかしさでサムは頬を真っ赤にし、目を伏せた。見えないとはいえ、彼とこれ以上目を合わせていられない。
「ねえ、私がなぜここにいるのだろうと思っているでしょう」自分でも不思議に思いはじめていた。離れていてもできたことなのに。
 でも、そうしたら彼と会えないわ。頭の中で狡猾な声がした。会うのを望んでいたんじゃないの?
 チェーザレはかぶりを振った。「君はなにか欲しいものがあるんだろう。僕の体と思うほど、うぬぼれてはいないが……」
「仮にも紳士なら、そんな話を持ち出さないで」
「僕は紳士じゃない」
 サムは頭を振った。「じゃあ、なんなの?」
 ゆっくりと肉食獣のような笑みを浮かべるチェーザレを見て、サムのみぞおちはこわばった。「言葉どおりの意味での紳士ではないが、僕のふるまいがすばらしかったからこそ、君はベッドに飛びこんできたんじゃなかったのか?」
「あなたのことを気の毒に思った自分が信じられないわ!」サムはあえぐように言ってチェーザレをにらみつけた。
 チェーザレが、ぶたれたかのように頭をのけぞらせた。鼻孔が広がり、蒼白になるまで唇が引き結ばれると、氷のような声が答える。「じゃあ君は、僕を気の毒に思って寝たのか?」
 サムは額にしわを寄せ、自分でもすっかりは納得していない謎に答えた。「どうしてあんなことをしたのか、今でもわからないの。分別を失ったことなんてなかったのに」とまどったように頭を振り、ため息をもらす。「自分がしていることはわかっていたわ。どうかしていると。でもまるで……」
 つかえながらの返事を聞くうちに、チェーザレの顔から敵意は消えていた。「呼吸をするように自然なことだったと言うのか」
 サムは驚いて顔を上げた。私の考えをこんなにも簡潔にずばりと言いあてられるなんて。「そのとおりよ」それから自分が誰になにを認めたかに気づいて、髪の根元まで真っ赤になり、言い訳をするように続けた。「二度とあなたのことを気の毒だなんて思わないわ」
「ところで君は礼儀を忘れていたようだな、サマンサ」彼はその名を舌で転がすように発音してから、黒髪の頭を傾け、正式に名乗った。「僕はチェーザレ・ブルネッリ。だが、それはもう知っているだろう……ここへ来たのだから。残る疑問はただ一つだ。なぜここに来た?」
 それは今も考えあぐねているところだ。「あなたの名前は知らなかったわ……あのときは……」
「君が哀れみに駆られて僕とベッドをともにしたときには、ということか。うまく隠したものだな」
 あざけるような言葉に、サムの頬は熱くなった。「あのときはそんなふうに思っていなかったわ。新聞記事であなたの写真を見るまでは」当代一の金融界の天才と書かれている人物が、一夜を過ごした男性と同一人物だとは信じられなかった。短い記事には彼が事故のせいで視力を失い、有名女優との結婚も白紙になったと書かれていた。
「それで今は違う感情を持ったというわけか?」
 皮肉な言葉にとまどいながら、サムはかぶりを振った。「私は……」
「僕が寝ている間に姿を消したことを、深く後悔しているとか?」
 サムは後ろめたそうに頬を染めた。「それは……私が……」その場にいられないほどきまりが悪かったと説明するには、どう言えばいいのだろう? これまで男性の隣で目覚めたことなどなく、それであわててしまったのだと。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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