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和書>小説・ノンフィクションボーイズラブ小説オレ様

専属契約

専属契約

著: 橘紅緒
発行: 大洋図書
レーベル: SHY NOVELS
価格:893円(税込)
10ポイント還元
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★29
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解説

 常磐彗、16歳。性別、男。ある朝、女優であり母である各務子夜子に呼び出され、少女のふりをしてCMモデルを引き受けることになる。本当は引き受けるつもりはなかった。けれど、傲慢なカメラマン・静竜之介との出会いが彗の闘争心に火を付けた。才能溢れる静に惹かれる彗。静は少年である彗を抱き、モデルの「彗」が実は男であるという秘密を守ることを条件に彗と専属契約を結ぶ。自分以外に写真を撮らせるな!と。恋を知り成長していく彗。それは別れが近くなることも意味していた……!?

抄録

 口角をやや持ち上げた静の顔を、彗はわけもわからずにただただ見つめていた。
 端正な容貌がふっと近づき、影を落としてくる。そのまま、なにも見えなくなった。
 ―――…え、
 唇に重なってきた感触に驚き、発そうとした声が口の中でくぐもる。噛みあわない歯の隙間からするりと入ってきた舌先に、背筋がびくりと震えた。
 胸を圧迫されたような息苦しさに、静のバスローブを無意識に握る。
 腰を抱かれ、躰の向きを変えられたような気がしたけれど、よくはわからなかった。脹脛《ふくらはぎ》になにかが当たり、履き慣れないハイヒールの足下がバランスを崩す。上から覆い被さってこられる負荷に背中が傾き、倒れる躰を、柔らかいベッドのマットレスが迎え入れた。
「――ン、……は…」
 合わさったままでいた唇がゆっくりと離れ、暗闇に、静の顔がだんだんと浮きあがる。そこでようやく、自分が目を開けたままでいたことに彗は気づいた。
 細く息を吸い込む途端に、心臓が早鐘を打ち始める。
 ―――……うそ…、
 唇が薄く開いたままで力が入らない。
 比喩ではない、声を失うという体験は初めてだった。
 ―――なんで…?
 問いかけの意をこめ、小刻みに揺らぐ視線でじっと静を見上げる。
「……ややこしくなんのヤだからさ。先に言っとくけど、」
 瞼が重そうに目を細めて、静が口を開いた。
「俺、つきあってる女いるから」
 酷薄に動いた唇を、呆然と凝視する。
 なんだろう―――、胃の底がチリッと痛んで、体温が少し下がったような気がした。
「なんて顔してんだよ」
 どこかが痛そうに眉間《みけん》に皺を刻み、静が低く困惑した声をもらす。
「知らない…」
 彗は小さく首をふった。
 どんな表情でいるかなんて、自分ではよくわからない。ただ、なんだかとても、つらかった。
 きっと、ふざけただけなのだろう。この手の冗談には、相手をちゃんと選んでほしかった。
 べつにファーストキスを特別視していたわけではないけれど、こんなのはあまりに予想外だ。
 どいて―――、と、彗が頼むより早く、静の顔が再び近くなる。
「―――な…、っ」
 膝の上を掌が直に這い上がってきたことに、彗は大きく目を瞠った。
「――、なんで、!」
 両腕を静の胸元に突っ張らせて抗う。
 叫んだ声が喉にひっかかった。
「なんでって」
 静が躰を少し上に退いて、唇を歪める。
「これもおまえの仕事なんじゃねぇの?」
 静から思ってもみない言葉が返ってきて、彗は酸欠をおこしたように唇を震わせた。
「……なに…? それ、」
「頼んでもねぇのにヨケーなオプションまでつけてくんのはそっちだろ」
 毎度のことのように、淡々と静は話す。
 ―――そんな…それじゃあ、
「仕事するモデル全員と、こんなこと、すんの…?」
「だから、頼んでもねぇのに勝手にお膳立てしてくんのはそっちだろっつってんの。耳ついてねぇのかよ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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