和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>白衣
著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
解説
児童専門の臨床心理士・如月東栄は10歳年下の恋人・佐々木洸太と暮らしている。同居して1ヶ月、初めての恋に戸惑う如月は、佐々木の求愛に応えるのが精一杯で、自分から求めることが出来ずにいた。些細なすれ違いが、甘いはずの蜜月に小さな亀裂を生じさせるが……。悩みながらも熟していく二人の関係。「水の記憶」の続編登場!!
抄録
「そういえばおなか空いたなぁ。佐々木君。今夜の御飯は何かな」
そして無邪気な如月は、今夜の献立を子供のように楽しみにしていた。
佐々木は無心な如月の笑顔を見ているだけで、苛立ったことや腹を立てていたことを忘れて、つい甘い顔をしてしまう。
「今夜はね。東栄の好きな海老グラタン」
「いいなぁ、海老グラタンかっ」
ぱぁーっと如月の顔が輝いた。
「喜ぶのは早い。買い物してる暇がなくってさ。冷蔵庫の残り物かき集めて作れる物っていったら、それしかないの。誰かさんが火事になってうろたえてるんじゃないかと思って、必死で走ってきたからさ」
そろそろ寒くなってきた。部屋に戻る佐々木の後について入ってきた如月は、やっと佐々木の帰宅がいつもより早いことに気がついて、申し訳なさそうにしていた。
「悪かった。そんなことまで気が回らなくて」
「いいよ。いつものことだろ」
仕事に夢中になると、周りのことが目に入らなくなる。それでも如月だから許せるんだと考えた佐々木は、キッチンに向かおうとして思わず足を止めた。
ぼうっと火を見ていた高校生のことを、突然思い出してしまったのだ。
彼のことを如月に言ったらどう答えるだろう。
けれど佐々木は思いとどまった。海老グラタンと聞いて嬉しそうにしている如月の気持ちを、また仕事モードに引き戻したくはない。
「じゃ、東栄。手伝って」
「私が? 料理なんてしたことないのに、手伝えることあるのかな」
料理を作るのも、掃除をするのも洗濯も買い物も、すべて佐々木がやっている。今ではすっかり主夫になってしまった佐々木だが、それすら楽しめなければ如月とは暮らしていけそうもない。
「何を手伝えばいいのかな」
さっきまで電話で真剣に話していた如月の顔は、臨床心理士のものだった。それがすっかり今では佐々木にとって愛しい人の顔になっている。
「袖、めくって」
佐々木はワークシャツの上にトレーナーという格好の両手を差し出した。
「ははは、これなら私でも手伝えるな」
如月は本当に楽しそうだ。美しい顔に笑みを浮かべて、佐々木の服の袖を丁寧にたくし上げていた。
「それから…お帰りのキスくらいしてよ」
心持ち背を屈め、顔を前に突き出すようにして佐々木はキスをせがむ。途端に如月の顔は真っ赤になった。
「またそういうことを…」
十年かけて手に入れた恋人は、いつまでたっても大胆にはならない。キス一つを手に入れるのに、佐々木は毎回苦労させられるのだ。
「キスしてくれないと、グラタンは作れないんだぜ」
わざと意地悪く佐々木は言ってみる。
すると如月は、叱られた子供のようにうろたえた。
「そんなこといきなり言われても…」
「帰ったら、普通にお帰りってキスすればいいだけじゃん。新婚ならどこもやってるだろ。いや、新婚じゃなくてもやってるよ」
最近の佐々木はあくまでも強引だ。これくらい強気で攻めないと、如月はいつまでたっても年上の優しいお兄さんから恋人へと進化していきそうにない。
「キスくらいしてよ」
如月は覚悟を決めたのか、子供にするような優しいキスをしてあげた。
すると佐々木はお返しをしてくる。それは情熱的なキスで、子供騙しの如月のキスとはまるで違ったものだった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
そして無邪気な如月は、今夜の献立を子供のように楽しみにしていた。
佐々木は無心な如月の笑顔を見ているだけで、苛立ったことや腹を立てていたことを忘れて、つい甘い顔をしてしまう。
「今夜はね。東栄の好きな海老グラタン」
「いいなぁ、海老グラタンかっ」
ぱぁーっと如月の顔が輝いた。
「喜ぶのは早い。買い物してる暇がなくってさ。冷蔵庫の残り物かき集めて作れる物っていったら、それしかないの。誰かさんが火事になってうろたえてるんじゃないかと思って、必死で走ってきたからさ」
そろそろ寒くなってきた。部屋に戻る佐々木の後について入ってきた如月は、やっと佐々木の帰宅がいつもより早いことに気がついて、申し訳なさそうにしていた。
「悪かった。そんなことまで気が回らなくて」
「いいよ。いつものことだろ」
仕事に夢中になると、周りのことが目に入らなくなる。それでも如月だから許せるんだと考えた佐々木は、キッチンに向かおうとして思わず足を止めた。
ぼうっと火を見ていた高校生のことを、突然思い出してしまったのだ。
彼のことを如月に言ったらどう答えるだろう。
けれど佐々木は思いとどまった。海老グラタンと聞いて嬉しそうにしている如月の気持ちを、また仕事モードに引き戻したくはない。
「じゃ、東栄。手伝って」
「私が? 料理なんてしたことないのに、手伝えることあるのかな」
料理を作るのも、掃除をするのも洗濯も買い物も、すべて佐々木がやっている。今ではすっかり主夫になってしまった佐々木だが、それすら楽しめなければ如月とは暮らしていけそうもない。
「何を手伝えばいいのかな」
さっきまで電話で真剣に話していた如月の顔は、臨床心理士のものだった。それがすっかり今では佐々木にとって愛しい人の顔になっている。
「袖、めくって」
佐々木はワークシャツの上にトレーナーという格好の両手を差し出した。
「ははは、これなら私でも手伝えるな」
如月は本当に楽しそうだ。美しい顔に笑みを浮かべて、佐々木の服の袖を丁寧にたくし上げていた。
「それから…お帰りのキスくらいしてよ」
心持ち背を屈め、顔を前に突き出すようにして佐々木はキスをせがむ。途端に如月の顔は真っ赤になった。
「またそういうことを…」
十年かけて手に入れた恋人は、いつまでたっても大胆にはならない。キス一つを手に入れるのに、佐々木は毎回苦労させられるのだ。
「キスしてくれないと、グラタンは作れないんだぜ」
わざと意地悪く佐々木は言ってみる。
すると如月は、叱られた子供のようにうろたえた。
「そんなこといきなり言われても…」
「帰ったら、普通にお帰りってキスすればいいだけじゃん。新婚ならどこもやってるだろ。いや、新婚じゃなくてもやってるよ」
最近の佐々木はあくまでも強引だ。これくらい強気で攻めないと、如月はいつまでたっても年上の優しいお兄さんから恋人へと進化していきそうにない。
「キスくらいしてよ」
如月は覚悟を決めたのか、子供にするような優しいキスをしてあげた。
すると佐々木はお返しをしてくる。それは情熱的なキスで、子供騙しの如月のキスとはまるで違ったものだった。
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