和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>白衣
著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
解説
美貌の臨床心理士・如月東栄は、事故で兄と友人を亡くした佐々木洸太のことを、今も弟のように気遣っている。一方、恋愛感情に疎い如月を長年想い続けていた佐々木は、二人の関係を進展させようと、就職を機に同居を持ちかけた。ストレートに注がれる佐々木の愛情に、少しずつ「恋」を理解していく如月。11年越しの恋は穏やかに進行していくように思えたが……。
抄録
「トイレに行きたいんだけど」
だが佐々木は、腕をどけようとはしなかった。
「佐々木君、その…手をどけて」
「トイレに何しに行くの?」
佐々木の方がすでに上体を起こしかけている。如月は焦った。
「生理現象だよ。決まってるだろ」
「どんな生理現象?」
いつになく佐々木の態度は強気だ。わざと如月を行かせまいとしているかのようだ。
「手を…どけてくれないか」
「……」
どける代わりに、佐々木はいきなり如月の上に覆いかぶさり、唇を重ねてきた。
「んっ!」
恐れていた通りになっていた。
如月にもこんな事態になりそうだと、心の片隅に予感はあったはずだ。
歯ブラシを見ながら考えたことは、こうなりそうだと思っていたから浮かんだのだろう。
人の家に同居するのに、布団の一組も持参しないのはおかしい。いや、同居を願った時点で、佐々木の行動は予想がついていたのではなかったか。
いつもは他人が自分に寄せる想いなど、ほとんど気が付かない如月が、変に佐々木を意識していたのもそのせいだ。
佐々木の全身から、如月を好きだという想いが溢れていて、鈍い感性をも刺激したのだ。
「んんっ!」
必死で如月は抵抗した。
恥ずかしいことに如月は、三十二にもなってキスすら初体験だった。
なのに佐々木は荒々しく、如月の口の中に舌までねじ入れようとする。閉ざした唇を無理にこじあけさせようと焦る動きに、必死の想いが感じられた。
「んっ…佐々木君、落ち着けっ!」
無理矢理顔をずらすと、如月は叫んでいた。
「勘違いするなっ。君の相手は私じゃないっ」
「じゃ誰なんだよ。教えてくれよ」
佐々木の声は震えている。
「私じゃないことだけは確かだ」
答える如月の声も震えていた。
「何で…何で俺じゃ駄目なんだよ。先生…俺がどんな想いでいたか分かってる? 何も分かってないだろ」
「誤解してるんだ。よくあることだよ。神父、医者、教師、話をよく聞いてくれる相手に、恋愛感情に近い想いを抱く。でもそれは勘違いだ」
「先生…俺はもう先生の患者じゃないんだぜ。一人の男として、俺を見てよ」
「だ、だったら冷静になってくれ。私は男で、君より十歳も年上で…」
「それが何だよ。そんなのとうに分かり切ってるさ。俺だってね。何度も諦めようと思った。先生は医者の立場で、俺に優しくしてくれるだけなんだって」
強く抱かれて、如月はついに逃げ場を失った。
驚きと脅えから下半身の興奮は収まったけれど、今度は別の意味で肉体が危機を迎えていた。佐々木の手が、如月のパジャマの中に差し込まれようとしている。はだけた胸元を触られて、慌てて如月はその手を掴んでいた。
「落ち着きなさい。いいか、落ち着いて」
*この続きは製品版でお楽しみください。
だが佐々木は、腕をどけようとはしなかった。
「佐々木君、その…手をどけて」
「トイレに何しに行くの?」
佐々木の方がすでに上体を起こしかけている。如月は焦った。
「生理現象だよ。決まってるだろ」
「どんな生理現象?」
いつになく佐々木の態度は強気だ。わざと如月を行かせまいとしているかのようだ。
「手を…どけてくれないか」
「……」
どける代わりに、佐々木はいきなり如月の上に覆いかぶさり、唇を重ねてきた。
「んっ!」
恐れていた通りになっていた。
如月にもこんな事態になりそうだと、心の片隅に予感はあったはずだ。
歯ブラシを見ながら考えたことは、こうなりそうだと思っていたから浮かんだのだろう。
人の家に同居するのに、布団の一組も持参しないのはおかしい。いや、同居を願った時点で、佐々木の行動は予想がついていたのではなかったか。
いつもは他人が自分に寄せる想いなど、ほとんど気が付かない如月が、変に佐々木を意識していたのもそのせいだ。
佐々木の全身から、如月を好きだという想いが溢れていて、鈍い感性をも刺激したのだ。
「んんっ!」
必死で如月は抵抗した。
恥ずかしいことに如月は、三十二にもなってキスすら初体験だった。
なのに佐々木は荒々しく、如月の口の中に舌までねじ入れようとする。閉ざした唇を無理にこじあけさせようと焦る動きに、必死の想いが感じられた。
「んっ…佐々木君、落ち着けっ!」
無理矢理顔をずらすと、如月は叫んでいた。
「勘違いするなっ。君の相手は私じゃないっ」
「じゃ誰なんだよ。教えてくれよ」
佐々木の声は震えている。
「私じゃないことだけは確かだ」
答える如月の声も震えていた。
「何で…何で俺じゃ駄目なんだよ。先生…俺がどんな想いでいたか分かってる? 何も分かってないだろ」
「誤解してるんだ。よくあることだよ。神父、医者、教師、話をよく聞いてくれる相手に、恋愛感情に近い想いを抱く。でもそれは勘違いだ」
「先生…俺はもう先生の患者じゃないんだぜ。一人の男として、俺を見てよ」
「だ、だったら冷静になってくれ。私は男で、君より十歳も年上で…」
「それが何だよ。そんなのとうに分かり切ってるさ。俺だってね。何度も諦めようと思った。先生は医者の立場で、俺に優しくしてくれるだけなんだって」
強く抱かれて、如月はついに逃げ場を失った。
驚きと脅えから下半身の興奮は収まったけれど、今度は別の意味で肉体が危機を迎えていた。佐々木の手が、如月のパジャマの中に差し込まれようとしている。はだけた胸元を触られて、慌てて如月はその手を掴んでいた。
「落ち着きなさい。いいか、落ち着いて」
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