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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

秘密を抱えた家政婦

秘密を抱えた家政婦


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

私は彼を欺いている――この世でいちばん愛しい人を。

家政婦のセイディは雇い主の命令で、愛するザカリーの住む町を訪れた。罪なほどセクシーな町の英雄ザカリー・ガトリンと激しい恋に落ち、別れも告げずに姿を消して5年になるが、今も彼は夜ごと夢に現れる。本当はやりたくない。ザカリーの身辺を嗅ぎまわるなどという仕事は。でも、病気の妹の高額な治療費を稼ぐ方法はほかにない。だから、雇い主であるザカリーの異母弟に協力するしか道はないのだ――遺産相続を阻むためにザカリーの汚点を探れ、という卑劣なことでも。高鳴る鼓動を抑えこみ、勇気を振り絞ってザカリーを訪ねたセイディは、冷ややかな黒い瞳に一瞥された。「ここは君のいる場所じゃない」それでも愛の残り火は燃えあがり、セイディは思いがけず妊娠するが……。

■決死の思いで再会した初恋の人は、近寄りがたい成功者となっていて……。どこまでも不遇で健気なヒロインと、どこまでもゴージャスでセクシーなヒーロー。数奇な運命に弄ばれた二人のドラマチックなラブストーリーです! 『天使を抱いた氷の富豪』関連作。

抄録

 看護師は患者のもとに戻っていた。ちょうどそのとき、ベイトマンが足を引きずりながら部屋に入ってきた。そして大きな体を窮屈そうにかがめてセイディの横にひざまずいた。
 セイディは彼に声をかけた。安心させるように口もとに笑みを浮かべている。彼女が機転を利かせて天井から落ちてきた瓦礫からベイトマンを守ったのだ。とっさに突き飛ばしていなければ、ベイトマンは瓦礫の下敷きになっていただろう。その勇気ある行動は、五年前のセイディならばいかにもやりそうなことだとザカリーは思った。
 だが今のセイディはいつもけんか腰で、どことなく秘密めいている。そう、昔のようにやさしいだけの女性ではないのだ。だからそんな彼女には惹かれたくなかったが、理性と感情は一致しなかった。
 なぜあんなふうに変わってしまったのだろう? それでも彼女の心のどこかには昔と変わらないやさしさが残っているように思える。でもそれならどうしていちいち食ってかかるような態度を取るのだろう?
 顔を上げると、セイディがこちらを見ていた。見開かれたその緑色の目には不安そうな表情が浮かんでいる。看護師が今夜どうするのかを話したにちがいない。ザカリーは部屋から出ていった。それが臆病者のすることだとわかっていても。
 まだ仕事が残っているのだ。そのおかげであれこれ詮索されずにすむのが幸いだった。
 けれどもその二時間後、とうとうセイディと向きあわなくてはならなくなった。ザカリーは薬でぼんやりしている彼女をホテルまで送っていった。玄関に入っていくと、運のいいことに噂好きな女主人はいなかった。彼はセイディの肩に手をまわして抱きかかえるようにして階段を上がっていった。それが紳士のすることだと自分に言い聞かせながら。それでも彼女の髪から甘い香りが漂ってくると、欲望がこみあげてくるのを抑えられなかった。
 そういうことはもう二度と起こらないと何度自分に言い聞かせても、心のどこかでそれを期待しているのはまぎれもない事実だった。
「こんなことしなくていいのよ」セイディはかすれた声で言った。
「ぼくは自分の仕事をしているだけだ」彼はそう言いながら鍵を開け、部屋のなかへと入っていった。
「そうらしいわね」セイディは顔をしかめた。どうやらまだ痛みを感じているらしい。「あなたはいつも責任以上のことをしているから」
 ザカリーは否定しなかった。そういう性分なのだ。買い物のリストを作るときも、家族の面倒を見るときも、何から何まできっちりやらなければ気がすまなかった。
「でもわたしは自分の面倒は自分で見られるわ」彼女は足を引きずりながらドレッサーのほうに歩いていった。「これまでだってずっとそうだったんだから」
 でも今日は車の運転だってろくにできなかっただろうに。ザカリーはそう言いたかったが、ぐっと我慢して彼女がパジャマを持ってバスルームに入っていくのを黙って見ていた。
 それから車に置きっぱなしにしていた一泊分の荷物が入ったバッグを取りに行ってから、ソファーに腰かけた。そのとき小さなコーヒーテーブルに足がぶつかり、そこにあったノートパソコンがぱっとついた。
 画面に四枚の写真が映っていた。すべて彼の写真だった。それはいつも見ている仕事の資料用の写真とはちがっていた。それぞれ光と影のコントラストが写りこむように計算された芸術的な写真だ。そのうちの一枚がとりわけ彼の目を引いた。ザカリーは遠くを見つめているが、その顔にはつらく物悲しそうな表情が浮かんでいる。
 写真にはまちがいなく彼の気持ちだけでなく、それを撮った写真家の心情も表れていた。彼はふと思った。セイディもぼくのことを忘れられなかったのだろうか?
 バスルームのドアが開いた。ザカリーはなぜか写真を見ていたことを知られたくなくて、とっさにノートパソコンを閉じた。
 それから彼女のほうに顔を向けたが、すぐに目をそらした。セイディが体にぴったりしたパジャマを着ていたからだ。胸のふくらみが揺れているのさえ見えた。そういえば五年前もセイディはパジャマと下着は女性らしいデザインのものを好んでいた。
 だめだ。それ以上考えるな。
 セイディはベッドに横になると、枕に寄りかかって顔をしかめた。それでもこう言い張った。「だから言ったでしょう。わたしはひとりでも大丈夫だって」
 少しも大丈夫そうには見えない。ザカリーはそう思い、笑みを隠して返事をした。「そうらしいな」
 セイディはそれ以上何も言わず、ベッドの上で寝返りを打って彼に背中を向けた。
 ザカリーは部屋の真ん中に長いこと突っ立っていた。彼の目は彼女の女らしい体に吸い寄せられていた。あのやわらかな曲線を手と口で心ゆくまで味わいたい。五年前のように……。窓のほうに顔を向けると、外はすでにすっかり暗くなっていた。
 それから首をめぐらせ、ノートパソコンを再び見た。
 画面を開かなくても、そこに何があるのかわかっていた。頭に焼きついていたからだ。セイディは今もぼくを求めている。そうでなければ、あんな写真が撮れるはずがない。彼女もまたぼくのことが忘れられなかったのだ……。
 いつしか彼の心は決まっていた。服を脱ぐと、ベッドのセイディの隣にもぐりこんだ。身勝手かもしれないが、心をまどわすただひとりの女性を再び誘惑できるのなら、そのチャンスをなんとしても逃したくない。


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