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初恋のゆくえ

初恋のゆくえ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

婚約間近のステファニーは、海辺の町で静かに暮らしていた。しかし、その平穏な日常もジェラードが現れたことで一変する。18歳。大人になりかけていた清純なステファニーは、洗練された美貌のジェラードと恋に落ちた。だが悪夢のような出来事によって、地獄に突き落とされ――ジェラードは彼女の愛と純潔を疑って、去ったのだ。永遠に。5年の月日が流れ、再会した彼の瞳には凶暴な光が眩いていた。「綺麗で汚れていないと思っていたのに。君はまた人を欺くのか」君の真実の姿を君の恋人に暴くとでも言いたげに。

抄録

 ステファニーはぬれた目を手でぬぐった。あの時も彼の前で涙は見せなかった。今も泣いてはいけない……。
 ジェラードは思いもよらないほど近くにいた。「涙はぼくには通用しないぞ、ステファニー」
「泣いてなんかいないわ」彼女はかすれ声で言った。ジェラードが手を差し出して、指先でステファニーのぬれたまつげをぬぐった。ステファニーはぎょっとした。
「本物の涙らしいな」
「あなたはどこまでも私を侮辱するのね……次は何なの? 私をどんな目にあわせたいの?」
「挑発するな」ジェラードはおかしみのない、ぞっとするような低い笑い声をたてた。「ぼくは君のことを、とても清らかな乙女だとばかり思い込んでいたんだ。十八歳、まだキスの経験もない、赤子のようなつぶらな青い瞳で桃のようになめらかな肌をした……ああ、とても優しくてすばらしい娘だと思い込んでいた。ぼくは君に指一本、触れようとはしなかった。君を怖がらせてはいけない、君に夢中になって自制心をなくしてはいけないと思ったからだ。ぼくは君がとても欲しかった。君が欲しくてたまらなかったんだよ、ステファニー。でも、君をおびえさせたくなかったから、ぼくは自分を抑えて君を大切に、宝物のように扱った……それなのに、君のほうはその間ずっと、あのはげ頭の老いぼれに身を……」
 声がふいにとぎれてうめき声に変わった。
「ちくしょう、ぼくは君にだまされたんだ!」口元をひきつらせ、灰色の目でステファニーを上から下まで見回した。
 ステファニーは真っ青になった。ブルーの瞳が驚きと感動で暗くかげる。
「ジェラード、もしあなたが私をそんなに好いていてくださったのなら、どうか今、こんな目にあわせないで。私のために兄を傷つけないで。兄のためなら私、何でもしますから」
 ジェラードはステファニーの手を取って、てのひらを奇妙なほどしげしげと見つめた。
「今のは交換条件の申し出かい?」彼は低いかすれ声できいた。
 ステファニーはぎょっとして手を引き抜こうとした。が、彼は放そうとはしなかった。自分のてのひらで彼女の手の甲をしっかりつかみ、まだ見入っている。
「ぼくは喜んで取り引きに応じるよ」
 ステファニーはあっと息をのんだ。
「何の……何の話をしているの?」
「何の話かわかっているはずだ」ジェラードはゆっくりと頭を下げてきた。ステファニーは興奮と恐怖が入りまじった感情に襲われてぶるぶる震えていた。口はからからで、肌はさっと冷たくなったと思うと再び熱くなった。
 ジェラードの唇がてのひらに触れた瞬間、ステファニーは目を閉じた。体が震えたままぐらりと揺れた。これほど不可思議なキスを受けたことがあっただろうか。彼の唇は奇妙な熱を帯びていた。ふいにステファニーの脳裏に、五年前のある瞬間がよみがえった。バージェス家のパーティーで一緒に踊った夜のことが……。
 あの夜ジェラードは、もやのかかったオーストラリアの広い空に上る赤銅色の月を見せようと、ステファニーを庭に連れ出した。とても暑い夜だった。ステファニーは、しだの葉であおぎながら、夜空の星を指さしては星座の名前を教えてくれるジェラードの声に聞きほれ、彼の端整な横顔と絹のような金髪にうっとり見とれていた。心臓がどきどきして頭がくらくらした。ジェラードは彼女を優しく見下ろして、ちょうど今と同じように彼女のてのひらにキスをした。ゆっくりと、情熱的でぞくぞくするようなキスを……。
 ジェラードが頭を起こし、二人の目と目が合った。その瞬間、ステファニーは現実に引き戻された。そして、たった今彼がしたキスは、あのときのキスとは似ても似つかないものだという苦い思いをかみ締めた。今しがたのキスには侮蔑が――あの最初のキスにはなかった何かがあった。
「だれにも話さないよ、ステファニー」ジェラードは低い声で言った。「ただし、一つ条件がある」
 ステファニーは体を硬直させたまま、その先を聞こうともしなかった。灰色の目が雄弁に語っている。何を言おうとしているか、聞かなくてもわかった。ステファニーの全身は、拒否と嫌悪と憎悪で硬くなった。
「ぼくは今でも君が欲しい」彼は微笑した。
 微笑というものがこれほど人を傷つけるものだとは、思いもよらなかった。ジェラードはそれをまるで短剣のように使って私を刺し、私が血を流すのを平然と見ている。
「たぶん、今のほうがもっと、だろう」青い瞳に浮かんでいる無力な拒絶の表情を楽しみながら、ジェラードはつけ加えた。「皮肉なものだな、実際……ぼくは君を崇拝していた。君が通る道にばらの花びらを敷きつめたかったほどだ。ぼくはちょうど、君のような、とても若くてとても清純な娘にひかれる年ごろだったんだよ。君とのロマンティックな夢にすっかり夢中になっていた。思えば、ぼくの最後の恋だったようだ。あのときぼくは三十二歳、遊びにも飽きて、そろそろ身を固めようと考えていたんだ。遊び慣れた女にはもううんざりしていた。だから結婚するなら、まだ男を知らない無垢な娘をと考えていた」
「まあ、なんて勝手な……」ステファニーは震えながらも、内心かっとした。「ずいぶん矛盾しているのね。ひどいわ……自分と女性を別々のものさしで計るなんて」
「別々のものさし……そうだな。でもとにかく、そんな気持だったんだ。ぼくは君を……」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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