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アテネで永遠に

アテネで永遠に


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェシカ・スティール(Jessica Steele)
 イングランド中部に、七人兄妹の六番目に生まれた。現在はウースターシャーの風光明媚で文化財に富んだ村に夫とともに住んでいる。公務員として働きながら夜の時間を執筆にあてていたが、夫の励ましを得てフルタイムの作家となった。一番の趣味は旅行で、メキシコ、中国、香港……と、取材をかねてさまざまな国を訪れている。

解説

財産目当てで、年の離れた大富豪の後妻となったいとこのために、ケンドラはギリシアを訪れていた。アテネ空港で出迎えたのは、ハンサムだが傲慢なデーモン。大富豪の親戚筋にあたる、彼自身も億万長者の会社経営者だ。ケンドラは彼のことが気になるのに、いとこと同類と決めつけて、皮肉っぽい目つきでじろじろと見つめてくる。ある日、大富豪の息子と出かけたケンドラは、車の燃料切れで帰宅が深夜になってしまう。するとデーモンはここぞとばかりに、「君は金持ちなら誰でもいいのか」と辛辣な言葉を放った。

抄録

「これならどう……」そこに立つ男性の後ろ姿に向かって言いかけて、はっと口をつぐんだ。その声を聞いてふり返った男性は、コスタスより背が高い。そして髪は全然縮れていない。ケンドラの心臓が奇妙に高鳴り始めた。
「これならどうって――何が?」デーモン・ニアルコスが冷ややかにきいた。グリーンの瞳を真ん丸くしたケンドラをじっと見つめている。
「時間のことだったの」ケンドラは答えてから少し落ち着きを取り戻した。「あなたがコスタスかと思ったのよ。彼はお仕事を済ませて、うちへ帰ってきているの」
「訂正するよ」デーモンが言った。「彼の仕事はまだ済んでいない。そして彼はここにはいないよ」
「ここに……いないですって?」
「コスタスは、仕事の結果をコンピューター部に渡すのを忘れたことを思い出したんだ。週日はターミナルが混雑するので、今日中に届けることにしたんだよ。今日はコンピューター係が二、三人出勤しているからね」
「それじゃ、彼は……オフィスへ行ったわけね?」ケンドラが言うと、デーモンはうなずいた。「そう……」楽しみにしていた観光が、手の届かないところへ遠のき始めた。「かなり時間がかかるんでしょうね」
「五分やそこらで片づくような仕事じゃないね」デーモンが答えた。
「それは当然だわ」ケンドラはつぶやきながら部屋を出ていこうとしたが、彼に突然手をかけられて足を止めた。
「コスタスは、君がアクロポリスへ行き損ねることを非常に心配していたよ」
「また別の日にするわ」
「そんな必要はないさ」デーモンはそう言ってからケンドラを唖然とさせた。「ぼくが連れていってあげるから」
 しかしケンドラは、この暴君に義務感でつき合ってもらう気などまったくなかった。「そんな必要はないわ」と言い返した。
 ところが彼があとに引こうとしないので、ケンドラはまたいっそう驚いた。
「コスタスはぼくが言いつけた用事のせいで、君との約束を守れなくなったんだ。だから彼の面目をつぶさないために、ぼくが代わりに約束を果たさせてもらうよ」
「そんなことをする必要はないのよ!」ケンドラは急いで言ったが、自分がギリシア人の体裁を重んじる考え方と対抗しているのだということに気づいた。デーモン・ニアルコスの面目なら喜んでつぶしたいところだが、そんなことをしたら、この家族みんなの体面も汚すことになるかもしれない。ユージーンに恥をかかせることだけはしたくないと思って、しぶしぶ態度を改めた。「あなたにご迷惑はかけたくないので、ミスター・ニアルコス」と堅苦しい口調で言っているところへ、ユージーンが現れた。
「ケンドラとぼくは、これから観光に行くんだ」デーモンは、既にはっきり決まったような言い方をしている。
「構わないかしら?」ケンドラが心もとなげにきいた。
「もちろん構わないさ」ユージーンはにっこりした。「楽しんできたまえ。ぼくはフェイと静かに過ごすよ」妻を心から愛している彼は、訪問中の客をおろそかにしてはいけないと思ったからこそ、無理して妻のそばを離れてきたらしい。それを見たケンドラは、彼をフェイといっしょに過ごさせるためなら、悪魔とでも出かけようと思った。
 しかし驚いたことにデーモン・ニアルコスには、悪魔らしいところなど全然なかった。彼の車に乗せられてアテネの郊外の広い並木道を通り、一時間もたたないうちにケンドラは感嘆しながらアテネの神殿を眺めていた。
 デーモンに肘を取られて階段を上がり、木の足場を渡ると、胸をどきどきさせながらパルテノンを凝視した。
「一生忘れられないような眺めだわ」かすれた声で言った。この感動的な経験をだれかと分かち合いたいと思ったので、横に立っているデーモンの方へ向いた。
「君の……気に入ったようだな」彼は目をきらめかせているケンドラを見下ろし、顔をほころばせた。
 彼がこんな純粋な微笑を浮かべるのを初めて見たケンドラは、突然鼓動が高鳴るのを感じた。穏やかな優しい微笑だ。コスタスとでなく、デーモンといっしょにアクロポリスへ来てよかったと思った。
 彼の顔から目をそらすと、心臓の高鳴りは収まり始めた。パルテノンの紀元前五世紀のドーリア式円柱をいつまでもうっとりと見つめる。デーモンといっしょに眺めては少し歩き、歩いてはまた足を止めて眺めた。
 再びこの感動を分かち合いたいと思ってデーモンの方を見上げると、彼はほかのものには目もくれずにケンドラをじっと見ていた。「すばらしいわ」ケンドラはささやいた。
「女神アテーナの神殿にそれほど魅力を感じるのなら、ぼくは君にデルフィを見せてあげるべきだな」
 ケンドラは喉に息が詰まるような感じを味わった。デルフィはここから何キロも離れているはずだ。わたしがここに滞在している間に、彼はわざわざデルフィまで連れていってくれるつもりなのだろうか?
 突然なんとも言えない感情に取りつかれたケンドラは、自分がひどく無防備な状態に陥ったような気がした。すっかり魅せられているのを敏感な彼に見て取られたに違いないと思って、顔をそむけた。
 パルテノンに背を向けて女人像柱のあるエレクティオン神殿を見ていると、突然デーモンが耳元で言った。「ぼくが聞いた話によると、その左側に見えるオリーブの木は、アテーナがポセイドンと議論中に出現させたオリーブの木とまったく同じものだそうだよ」
 ケンドラはからかうように目をきらめかせている彼を見ているうちに、急に彼と自分のムードがぴったり合ったように思った。


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