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プリンセスに変身【ハーレクイン・ディザイア傑作選】

プリンセスに変身【ハーレクイン・ディザイア傑作選】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアハーレクイン・ディザイア傑作選
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アレキサンドラ・セラーズ(Alexandra Sellers)
 ウォールデンブックスのベストセラーリストに登場歴を持つ人気作家。カナダに生まれ育ち、演劇を学ぶためにロンドンに留学。現在、夫ニックとともにハムステッド・ヒースの近くに住む。ある日窓から入ってきて居座りを宣言した美しい雄のとら猫が同居中。中央アジアと中東の人々、言葉、宗教、歴史を愛し、ヘブライ語とペルシア語を学び、現在はアラビア語に取り組む。二十五冊以上の小説と一冊の猫語の教科書を執筆。無人島に行ったら恋しくなるのは笑い声だろうと言う。

解説

少年に身をやつした彼女が恋した、黒い瞳の気高きシーク。

オーストラリアの難民収容所で、ハニは身を守るため少年のふりをしてつらい暮らしに耐えていた。ほんとうの名前も、自分が何者なのかもわからない。ある日、走ってきた車にあやうく轢かれかけ倒れたハニは、中から現れた黒い瞳の堂々たる体躯の男性を見て、息をのんだ。端整で誇り高い顔。この辺では見慣れない白い外衣とかぶりもの――きっと高貴な身分の人なのだろう。私には縁のない世界の。ハニは病院へ行こうという彼の言葉に返事もせず、その場を立ち去った。後日シャリフと名乗る彼が再び現れ、ハニに伝えたいことがあると言う。まさかこの人は……わたしが女性だと気づいているの?

■様々な時代の選りすぐりのディザイアの話題作をお贈りする“ハーレクイン・ディザイア傑作選”。今作は、シークがヒーローの物語で人気作家となった、アレキサンドラ・セラーズです。シャリフがハニに面会に来た、驚くべき理由とは?
*本書は、ハーレクイン・ディザイアから既に配信されている作品のハーレクイン・ディザイア傑作選となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「プリンセス!」
 全神経をとぎすましていなかったら、このささやき声は聞こえなかっただろう。シャキラは身を乗り出して、薄暗いシャリフのバルコニーをのぞいた。
「下を見て!」
 中庭にぼんやり人影が見えるが、声を聞かなくても、それが誰かはわかっただろう。
「シャリフ!」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「ええ。勤行時報係の声で目が覚めたわ。そこでなにをしているの? 待って!」
 シャキラはバルコニーの壁に飛び乗ると、石面に彫られた唐草模様につかまって、猿のように恐れを知らず、自信を持って壁を伝いおりた。
「あぶない、プリンセス!」シャリフは王女が下のバルコニーに下り、さらに手すりを越えて再度壁を伝いおりるのをただ見守るばかりだった。
 王女は一瞬宙を蹴ってから、足がタイル張りの柱に達すると、慣れた手つきでそれにつかまってすべりおり、今は素足でシャリフの横に立っていた。
「おはよう、ハニ」さりげなくシャリフが言うと、シャキラはその名前の絶妙な使い方に、頭をのけぞらせて大笑いした。シャリフはいつもわかっているのだ。
「明るくなる前の庭はいいわね」眠そうな庭師のあとを歩きながら、シャキラは言った。池に一枚、葉が舞い落ち、水面に映る柱とドームにさざなみが走る。素足で踏むタイルは冷たいが、微風が暑くなる昼間の香りを運んでくる。シャキラはかがんで、落ちたばかりの新鮮な花を拾うと、そのやわらかな葉に手を触れた。
 彼女はそれを顔に近づけ、香りとすべすべした感触を楽しんだ。
「あなたもかいで」シャキラはやさしく命じた。そこでシャリフがかがんで顔を近づけると、薔薇をはさんで、彼の唇がシャキラのてのひらにキスするような格好になった。ふたたびシャリフが体を起こしたとき、それが一瞬だったのか、あるいは永遠の時が過ぎたのか、二人ともわからなかった。
「お別れを言いに来た、プリンセス」シャリフが切り出した。
 その言葉にシャキラがショックを受けているのがわかり、シャリフは自分の愚直さをののしった。この女性には言葉が別の意味を持つことを、いつになったら僕は学ぶのだろう?
 いまだ周囲が落ちくぼんだ大きな黒い目が、信じるのを拒むように、じっとシャリフの顔を見た。
「お別れ? どこかへ行ってしまうの?」シャキラは叫んだ。声には出さなくても、“私を置いて”と言うのがシャリフには聞こえた。
「ほんの一、二週間だ。たぶん」シャリフはあわてて補った。「だが、もっとかかるかもしれない。たしかなことは言えないんだ」
 シャキラには聞こえていないようだ。「なぜ?」
 こうなることを予見すべきだっただろうか? 自分が彼女の人生におよぼした影響を、どうしてこうも過小評価したのだ? シャリフは“家族”と口にするときのシャキラの心からうれしそうな表情を思い出した。今、彼女は家族に囲まれているが……。
 気づくべきだった。他人との心のつながりに感動することなどめったにないシャリフだが、なぜかこの女性は彼の自我の奥底まで入りこみ、心をゆさぶってくる。それなら、彼女も絆を感じていることぐらい、容易に察せられるではないか?
「なぜ?」シャキラはふたたび叫んだ。
 シャリフはためらった。彼女には話さない方針だったが、今は……それが最善なのだろうか?
「それは……ともかく行かなければならないんだ、プリンセス」ようやくシャリフは言った。「スルタンの要請で――」
「断って! あなたでなくてもいいでしょう?」
「プリンセス、スルタンの要請には黙して従うものなんだ」シャリフはぎこちなく言った。
「だめよ!」シャキラは激怒した。なぜなら、傷つくのも懇願するのも弱さになるからだ。
 シャリフはますます自分に腹を立て、唇を引き結んだ。ほかにも言いようはあったのに。
「君は今、家族といっしょだよ、シャキラ。僕がいなくても寂しいことは――」
「よして」シャキラはどなりかけてから、ふいに感情が動きをとめた。寂しい? どうして私が寂しがらなければならないの? 今は家族がいるし、仮にいなくても、そんなものは必要ない! 今までずっとそうだったし、私は一人で生きられるもの。
 シャリフは間近にあるシャキラの顔を見て、胸が締めつけられた。その目にはまったく表情がない。シャキラは細い肩を耳のあたりまでぐいと上げた。
「行けばいいわ」その声は平板で、生気がない。「あなたなんて必要ない。今は家族がいるもの」
「シャキラ、出かける理由を君には言わないつもりだったが、やはり言ったほうがいいだろう。スルタンは――」
「どうでもいいわ!」それは本心だった。シャキラの心は知らぬ間に昔ながらの機能を果たし、喪失の苦痛への門を閉ざしたのだ。「とにかく、あなたがいなくても寂しくはないわ。今日、おばあ様が会いに来てくださるから」彼女はシャリフと過ごす喜びをどれほど大切にしてきたかも忘れ、傲慢に言った。今は彼に対しても鎧で身を固めていた。
 シャリフはシャキラが急に築いた壁を崩したい衝動に駆られたが、どうにかこらえた。任務には出かけなければならないし、理由を知れば、彼女も許してくれるだろう。だが、今は知らないほうがいい。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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