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富豪伯爵と秘密の妻 メイド物語 I

富豪伯爵と秘密の妻 メイド物語 I


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュメイド物語
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

身を落とした悲運のメイドの前に、疎遠だった伯爵の夫が現れた!

父が莫大な負債を残して急逝したため、エマは夢をあきらめ、メイドとして働きながらこつこつ返済している。ロンドンの高級住宅街にある屋敷でのパーティに派遣された夜、ずっと音信不通だった最愛の男性の姿を目にし、彼女は息をのんだ――ああ、あれはレッドミンスター伯爵ジャック・ウエストウッド! 6年前に渡米し、今や世界的企業の社長となった彼が、なぜここに? 激しく動揺したエマは派手な失態を演じてしまい、烈火のごとく怒った屋敷の主人に乱暴されそうになる。すると、突然ジャックが現れ、威嚇するように言い放った。「僕の妻に、手を出さないでくれないか」

■〈メイド物語〉は、富裕な顧客向けにメイドを派遣する会社で働く4人の女性たちのロマンスを作家競作で描く華麗なミニシリーズ! 1話目は『獅子と醜いあひるの子』で颯爽と日本デビューを果たしたクリスティ・マッケランが愛の復活の物語をお届けします。

抄録

 冷たいシャワーを浴びたあとも、エマは神経が高ぶり、体がひりひりしていた。
 ジャックと一つ屋根の下で過ごしているせいで、平常心はもうぼろぼろだ。
 頭では、今日一日ここにいなければいけない理由が十分にわかっていた。それでも、長い時間をここで過ごせば、あとで悔やむような何かをするか言うかしてしまいそうで怖かった。ついさっき、クレアと疎遠になった理由を口走ってしまったように。
 いつまでも失言をくよくよ考えるのはいやだったので、エマはさっさと体を拭き、ジャックが持ってきてくれた服を着た。シャワーを浴びている間に、彼がベッドの上に置いていってくれたクレアの服だ。
 自分が一糸まとわぬ姿でバスルームにいる間に、ドア一枚を隔てた部屋の中にジャックがいたと思うと冷静ではいられなかった。ジャックは簡単にバスルームに入ってくることができた。そして一緒にシャワーを浴びることができたのだ。もし彼がそうしたければ。
 だが、明らかにジャックはそうしたいとは思わなかったらしい。そう、それが一番いい。
 よりを戻せるかもしれないなど考えるだけでもばかげている。
 この六年の間にますます広がった亀裂をなかったことにできるはずがない。ジャックもわたしも六年前の二人ではない。二人とも年齢を重ねてより賢明になり、おそらくはより頑固になって、自分の生き方にこだわりを持っている。結婚した直後の、夢と希望にあふれた楽天的な若者ではないことは確かだ。
 エマは、結婚指輪をチェーンに通したネックレスをまさぐり、ぐいと引っ張った。ジャックと離れ離れだった間も、一度としてはずしたことのないネックレスだ。うなじにチェーンが食いこみ、二人をかつて結んでいた絆が失われたことを、あらためて感じずにはいられなかった。
 ジャックと離婚すれば、それですべて終わりだ。二人は別々の人生を歩むことになる。
 そう思うと胸が締めつけられるように痛かった。けれどエマは痛みを無視するようにくるりと向きを変え、ジャックが作ってくれる朝食を摂るためにキッチンへ向かった。
 玄関ホールを通るとき、電話の受話器がはずされたままになっているのに気づいた。マスコミの電話攻撃が始まったらしい。
 どうやらジャックは、できるだけ長くマスコミを無視する作戦を取ったようだ。
 エマがそう思ったとたん、呼び鈴が鳴った。応答があるまで押し続けるつもりなのか、呼び鈴は鳴り続けた。
 いまいましいレポーターたち。父が亡くなったときも、毒々しい記事に使えるおいしいネタや写真を求めて、母やわたしを何週間も追い回したものだ。
 あわてて玄関ホールを抜けキッチンへ急ぐと、ジャックが鋳鉄のフライパンでおいしそうなベーコンを炒めているところだった。
 なんだか異次元の光景に見えて、エマの心臓がどきりとした。
 この六年、ジャックのことを思い出す贅沢を自分に許した数少ない機会に、思い描いたジャックの姿とはまったく違う。
 二人とも若くて愛し合っていたとき、エマはジャックのことしか考えていなかった。彼に抱きしめてもらう感触。彼に愛され、賛美される喜び。彼とともに暮らす生活――ともに笑い合い、ともに年を重ねていく日々への期待。
 ジャックは結婚したときに負けず劣らず、それどころか、いっそうハンサムになっていた。大人っぽくなった顔立ちは以前よりシャープになり、体つきも以前よりがっしりと筋肉質になっている。
 きっとアメリカで精力的にビジネスに取り組む一方で、ジムで精力的に鍛えてきたにちがいない。最近のエリートビジネスマンはみな、そうするのではないだろうか。強靱な肉体に強靱な精神というやつだ。
「とってもいい匂いがするわね」エマは、フライパンに卵を割り入れているジャックに近づいた。
「それは僕の持って生まれたカリスマの香りさ」ジャックは、隣に来たエマに向かって眉をぴくぴく動かしてみせた。
 ジャックが冗談を言ったのに不意をつかれ、思わずエマはおどけて彼の腕を優しく叩いた。そのとたん過去に引き戻され、婚姻届を出しに行く朝、やはりこんなふうにジャックが冗談を言って笑わせてくれたことを思い出した。そのときエマはジャックのネクタイを直そうとしていたのだが、けんかのふりがエスカレートしたあげく、二人はキッチンテーブルの上で荒々しく愛し合うことになったのだった。
 よみがえった思い出に胸を突かれ、エマはショックで息ができなくなった。あわててジャックから離れ、椅子に腰を下ろす。脚が震えて力が入らない。
 いったい、わたしはどうしてしまったのだろう?
 朝食すら落ち着いて食べられないのだろうか。
 ジャックはエマの動揺には気づかぬ様子で、高価そうなボーンチャイナの皿にベーコンエッグをよそうと、その皿をテーブルに置き、彼女の向かいに腰を下ろした。
「ありがとう」エマはそう言うのが精いっぱいだった。
 彼はうなずき、さっそく旺盛に食べはじめた。
 エマの食欲はすっかり失せていたが、ジャックが気前よく作ってくれた料理を残すこともできず、必死で口に運ぶと、大きな塊がつかえているような喉に大量の紅茶とともに流しこんだ。
 二人とも黙ったままで食事は終わった。
 ジャックが椅子の背に身を預け、じっと見つめてきたので、エマはますますそわそわした。
 エマは大きく咳払いすると、テーブルのナイフとフォークを並べ直すことで気持ちを落ち着けた。
「リビングに行こう。そっちのほうが居心地がいい」
 ジャックの言葉にエマはありがたく立ち上がったものの、内心、緊張が高まるのを感じていた。


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