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幻のフィアンセ ベティ・ニールズ選集 16

幻のフィアンセ ベティ・ニールズ選集 16


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュベティ・ニールズ選集
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ベティ・ニールズ(Betty Neels)
 イギリス南西部のデボン州で子供時代と青春時代を過ごした後、看護師および助産師としての教育を受けた。戦争中に従軍看護師として働いていたとき、オランダ人の男性と知り合って結婚。以後十四年間、夫の故郷オランダに住み、ベティは看護師、夫は病院事務と、ともに病院で働いた。イギリスに戻って看護師の仕事を退いた後、よいロマンス小説がないことを嘆く女性の声を地元の図書館で耳にし、自ら執筆を決意した。1969年、「赤毛のアデレイド」を発表して作家活動に入る。穏やかで静かなロマンス、その優しい作風が多くのファンを魅了した。2001年6月、惜しまれつつ永遠の眠りについた。彼女が生みだした作品は百三十以上にも及んでいる。好きな映画は『逢いびき』(英1945年)、尊敬する人物はウィンストン・チャーチルだったという。

解説

いつしか芽生えていた恋心は、突然の告白にはかなく散って……。

ロンドンの病院で看護師長をしているジュリアは、週2回、彼女のいる婦人内科へ回診にやってくるオランダ人医師、ファン・デル・ワーギマー教授と折り合いがよくなかった。女性看護師の大半が、有能でハンサムな彼に憧れているが、ジュリアには無愛想で、ときに意地悪とも言える言葉をかけてくるのだ。だが、教師である父が彼の息子の補習を引き受けたのを機に、彼女はファン・デル・ワーギマー教授の私生活を知るようになる。妻との死別、息子の寮生活、そして……近々、結婚予定があることを。予期していなかった事実を聞いて胸がちくりと痛み、ジュリアはいつのまにか彼に恋していた自分を戒めるのだった。

■読んだあとに心が癒されるベティ・ニールズ作品から名作をお届けします。仕事ではよそよそしいけれど、病院外では親しく振る舞う教授に、ジュリアは彼の本当の姿はどちらなのかと悩みます。先の読めない恋に振り回される彼女の運命やいかに?

抄録

 五時になると、パットにあとを任せて、ジュリアはオフィスを出た。この三十分ほどの間に空が急に暗くなり、嵐でも来そうな気配だ。階段を駆け下り、玄関のロビーまで来たとき、大粒の雨が降りだした。濡れてもいいから走って帰ろうか、それとも嵐が通りすぎるのを待とうか、と空を見上げる。空は真っ暗で、あと一時間は雨が上がりそうにない。駆けていこう、と決め、足を踏み出そうとしたとき、だれかにコートをつかまれ、引きもどされた。
「濡れねずみになる気かい?」教授だった。「ここで待ってなさい。今、車を取ってきて、うちまで送ってあげるから」
 教授はジュリアに返事をする間も与えないで、職員用の駐車場へと足早に歩いていき、まもなく玄関の前に車を横づけにした。激しい雨に加えて、遠くのほうから雷鳴も聞こえる。ジュリアは礼を言って、助手席に身をすべらした。
「近いんだね」ジュリアのアパートの場所を聞いて、教授はうなずいた。「住みこみよりまし、ってところかな」
 ジュリアもにっこり笑う。「近所におもしろいものはなにもありませんけど、けっこう静かなんですよ」
 たいして言葉も交わさないうちに、車はアパートの前に着いた。「そのままでちょっと待って」教授は有無を言わせない口調で言うと、車から降りて、助手席の側へ回り、ドアを開けた。「急いで走って」ジュリアがポーチのところまで来たとき、教授もすぐ後ろからついてきていた。扉を開け、中へ入るように、とジュリアを促す。と、その瞬間、ぴかっと稲妻が光り、耳をつんざくような音がとどろいた。ジュリアは思わず教授のコートのそでをつかみ、彼の胸に顔をうずめる。少したって我に返ったジュリアは顔を真っ赤にし、はじかれたように飛びすさった。「ごめんなさい……雷は苦手で……」
 教授はしばらく彼女の体に手をかけたまま、なにも言わなかった。「きみの部屋へ行こうか? その濡れたコートを脱がなくちゃ」
 ジュリアは先に立って階段を上り、ドアの鍵を開けた。扉が開くと同時に、おびえきったウエリントンがジュリアの足にしがみつく。教授は後ろ手にドアを閉め、片手で子猫を抱き上げて窓際のスタンドをつけた。
「へえ、ここで暮らしてるのか」部屋の中央に立ち、周囲を見回す。
 ジュリアはコートと帽子を脱いだ。「アパートとは言っても、給湯設備とレンジ台付きのワンルームよ。わたしはこれで満足してるけど」
「そうかな? きみは戸外が似合う女性だから、せめて庭付きの……」
「だって、永久にここで暮らすわけじゃないんですもの。コーヒーでもいかが?」
「うん。ありがたいな」教授はナイジェルがいつも使っているいすに腰を下ろした。ウエリントンをひざにのせ、くつろいで見える。ウエリントンは教授のベストに頭を突っこんで丸くなった。「この子も嵐がきらいらしい。一日じゅう、独りぼっちなのかい?」
 ジュリアはやかんに水を入れた。「そうよ。一、二週間前に前の通りで拾ったの。週末、田舎の家へ連れてったら、喜んでるようだったわ」
 子猫の頭をなでている教授は、病院にいるときと別人のようだ。奥さんが家で待ってらっしゃるんじゃないの? ジュリアはそうききたい衝動を抑え、頭をひねって、あたりさわりのない話題を捜した。「息子さんは学校生活が気に入ってらっしゃるの?」
「うん。二年生になったばかりなんだ。学校のある場所は知ってるよね?」教授は学校の名前を告げた。
「あら、父がラテン語を教えに行ってる学校だわ」
「へえ。そういえば、お父さんは学校の先生だと言ってたね。ラテン語とギリシア語と数学を教えてらっしゃるんだったかな?」
「そう」二つのカップにインスタントコーヒーをいれたとき、雷鳴ががとどろくと同時に青い光がさし、ジュリアは危うく瓶を落としそうになった。教授が彼女の震える手からコーヒーの瓶を取り上げる。
「危ない危ない。実害がなくてよかった」彼は瓶を棚にもどし、沸騰しているやかんに手を伸ばした。「座って、子猫を抱いててやりなさい。こっちはぼくがやるから」
 ジュリアは彼の言葉に従って、腰を下ろした。「いい年をして雷が怖いなんて、ばかみたいね」
「そんなことはないよ。でも、沈着冷静な仮面の下がのぞけて、ぼくとしてはおもしろかったな」
 ジュリアは目をぱちくりさせ、おうむ返しにつぶやいた。「沈着冷静……とんでもないわ」
「いや、沈着冷静そのものだよ。看護師の鑑だ。その下に隠されている素顔を見てみたい、とよく思ってたんだ」
「失礼な人」
 教授はジュリアにカップを手渡して、向かい側に座った。「いつもそう思ってたんだろう?」
 ジュリアは返事に困って、話をそらした。「嵐はだいぶおさまったみたいだわ」
 教授はくすくす笑った。「おあつらえ向きにね」コーヒーを飲み干して、立ち上がる。「帰らなくちゃ。マーサが心配してるといけない。いや、送らなくていいよ」
 ジュリアがなにか言おうとする前に、教授は部屋を出ていった。


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