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伯爵の想いびと

伯爵の想いびと


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

巧みなストーリー展開と知的なユーモアは唯一無二。MIRA文庫初登場のL・サンズが贈る、珠玉のヒストリカル!

シャーリーは男装し、双子の妹を連れて非情な後見人から逃げ出した。道中、二人は若き伯爵ラドクリフと出会う。彼はまだ幼さの残る“兄妹”に同情したらしく、ロンドンの屋敷に匿ってやると申し出てくれたが、彼との旅には予想もしない困難が待ち受けていた。そんなに軟弱では妹を守れない、と彼は手取り足取りシャーリーに射撃を教え、2部屋しかない宿では当然のように1部屋を妹に与えて「我々は相部屋だ」と言う。シャーリーはハンサムな伯爵を間近に感じるたびに心臓が飛び出しそうになり、彼の戸惑いには気づきもしなかった。

抄録

「服のせいか」
 ラドクリフ伯爵がつぶやき、白い裾飾りのついた地味なラベンダー色のドレスを見下ろしてきた。あっさりしたデザインだけれど、仕立てたばかりだし清潔なので気持ちがいい。黄色の綿モスリンの服を何日も着続けるしかなかったときとは、まるで違う。
「なるほど。きれいな服だ。しかし――」ラドクリフは絶句した。ふたたび視線を上げてエリザベスの顔を見たとたん、体の奥に小さな変化が生まれたからだ。この反応が起きるのを何日も待ち続けてきた。双子の妹がそばにいても生ぬるい感情しか沸いてこなかったのに、兄と一緒にいるだけで体がうずき、そのたびにぞっとしたのだ。だが今日は、何もかも変わった。朝から何時間もチャールズと一緒にいたにもかかわらず、意外にも気楽に過ごせた。肉親への愛情に近いものしか感じなかったせいだ。そして妹のエリザベスとふたりきりになったいま、まぎれもない体のうずきを生々しく実感している。呼吸が浅くなり、わずかながら心拍数も増加した。いままでこんな感覚に襲われたのは、双子の兄のそばにいたときと……風呂から出たばかりの妹を見てしまったときだけだ。
 これで先日の推測が裏づけられた。やはり自分は、妹のエリザベスのほうに心惹かれているのだろう。
 ああ、よかった。にわかに頬をゆるめたラドクリフは、新しいドレス姿のエリザベスをじっと見すえ、昨夜チャールズの部屋に踏みこんだときのことを思い返した。裸でバスタブのなかに立つエリザベスを見たときとまったく同じ反応が、いまも体の下のほうに生じている。
「わたしの服が一着しかないと知って、マダム・ドゥカールが店まで取りに行かせたものなんです」ラドクリフが服の下のなまめかしい体を隅々まで視線でさぐっていたところ、エリザベスがさらに言った。「わたしと同じサイズの公爵夫人か誰かのために仕立てていた服だそうです」
 とまどいや不安を感じているらしいエリザベスの表情に、ラドクリフは思わず笑いそうになるのをこらえた。入浴中のエリザベスを見てしまったことを思いだし、謝罪しようと口を開きかけた。「きみに謝らなくてはいけないことが――」
 そのときドアが開き、ベッシーが戻ってきたので、ラドクリフは口をつぐんだ。ベッシーが別のカップをトレーに置いてお茶を注ぐあいだ、伯爵は笑顔を絶やさないようにしながら辛抱づよく待った。ベッシーはふたりにほほえんでから静かに出ていった。
 エリザベスがお茶をひと口すすり、尋ねてきた。「あなたとお兄さまの今日のご予定は全部片づいたの?」
 ラドクリフは首を縦に振り、カップを取りあげた。「僕とチャールズは宝石商を訪ねて、いくつかの宝石を現金に換えた。それから仕立屋で手早く仮縫いをすませたあと、クラブに立ち寄った」彼はエリザベスに向かって一方の眉を上げた。「きみのほうの仮縫いはどうだった?」
 エリザベスが唇をとがらせた。「お兄さまとは違って手間取りました。マダム・ドゥカールは、あなたとお兄さまが出かけた直後から帰ってくる直前まで、ずっと仮縫いをしていたのですもの。わたしは一日じゅう針で刺されたり、つつかれたりしていました」
「それは大変だったな」伯爵が気の毒がるどころか愉快そうに笑ったので、シャーリーはむっとした。
 にっこりとほほえんでみせてから小首をかしげ、いかにも無邪気なようすで問いかける。「さっき、わたしに謝らなくてはいけないことがあるとか言いかけていらっしゃいませんでした?」
 ラドクリフ伯爵の楽しげな表情は、たちどころに消えた。「ああ、そうだった」伯爵は大きく息をついた。「昨日、いきなり部屋に入ってしまって悪かった。まさかきみが、ちょうど……」
 口ごもる伯爵に、シャーリーは一方の眉をつりあげた。けれども、入浴中の裸を見られてしまった記憶がよみがえり、火照りが首筋を這いあがってきた。
「その……ノックもせず部屋に入るなどという無礼なまねをして申しわけない。きみとチャールズが部屋を交換したとは知らなかったので、僕は……あんなふうに、いきなり飛びこんでしまった。きみの……ああいう格好を見てしまって本当にすまない」
「いいえ、もう……」シャーリーはとうとう話の腰を折り、テーブルにカップを置いた。こうして謝られるのは、裸を見られたのと同じくらい恥ずかしい。書斎から逃げたくてたまらなくなり、シャーリーは席を立って駆けだそうとした。伯爵も紳士らしく、すかさず立ちあがった。そしてシャーリーがテーブルの脚につまずいて転びかけたとき、とっさに進みでて抱きとめた。
 顔の火照りがひどくなり、ますますばかみたいに見えているに違いないと思いながら、シャーリーはあわてて彼の胸から顔を離した。視線を上げ、伯爵の表情を見たとたん、はっと息をのむ。胸元を見下ろしてくる瞳の奥には、生々しい飢えが浮かんでいた。しかも、コルセットで寄せて持ちあげた胸が、大きく開いた襟ぐりからあふれそうになっている。すっかり熟してバスケットからこぼれ落ちる寸前の、ふたつの大きなメロンのようだった。むきだしの胸元とうなじがひりひりとうずき、シャーリーは唾をのんで一歩あとずさった。けれども、いままで座っていた椅子の側面にぶつかり、また転びかけた。エリザベスを支えようと、ふたたび腕をつかんだ伯爵は、無意識に体を密着させた。そして、いつしか唇を重ねていた。


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