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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

なくした記憶と愛しい天使

なくした記憶と愛しい天使


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

独身主義を公言してはばからない彼には、あの奇跡の一夜で身ごもったことは秘密。

美術鑑定士のパイパーは父親の経済的苦境を救うため、家宝の宝石を売ろうと出張先のミラノの宝石店を訪れた。そのときたまたま応対したのが魅惑的な社長イェーガーだった。互いに一目惚れした二人は、食事を共にし、その夜結ばれる。パイパーは妊娠したが、その後なぜか彼には連絡がつかなくなった。1年半後、父の借金のかたに自宅を差し押さえられた彼女は、今度こそ家宝を売ろうとついにイェーガーのもとを訪れる。だが、彼は事故にあい、パイパーとの一夜の記憶を失っていたのだ。パイパーは打ちひしがれた。結婚も子供も望まないという彼に、どうやって最愛の息子のことを打ち明ければいいの?

■編集部大絶賛!ディザイアからのデビューを飾ったジョス・ウッド。大人気のシークレットベビーものに記憶喪失テーマも絡めた、ドラマチックな逸作を、どうぞお読み逃しなく!

抄録

 唇を合わせたくなるのを我慢しながらパイパーの手を取って居間に入り、ボトルに残っていた年代物のワインを彼女のグラスについだ。パイパーはグラスを持ってソファの隅に丸くなり、赤いペディキュアに彩られた足をヒップの下にしまった。体のほかの場所と同じように、その爪先もさっき味わった。爪先からふくらはぎ、柔らかい内腿へと唇を這わせ、熱く潤った体の芯までキスを重ねた。
 もう一度それを繰り返したくてたまらない。
 必ずそうしよう。夜はまだ終わりではない。
 ウイスキーが必要だ。イェーガーはグラスに指二本分ついで向かい側に座り、心の中で早く話をすませてくれと願った。
「お話ししたとおり、母方の先祖から受け継がれてきたサファイアがあるの」
「数は?」イェーガーは腿に腕をのせた。
「十個よ。もともと十二個あったけど、三十年前に母が二つ売って、父が事業を始める資金にしたの」
 考えてみれば、パイパーのことも、彼女の家族のことも、何も知らない。いや、知る必要はない。彼女にはもう二度と会わないのだから。
「ほとんどの石が二・五センチくらいで、それより大きいのも小さいのもあるわ」パイパーが続けた。
 二・五センチ以上のサファイア? そんなはずはない。「それはカットしてあるのかい?」
「小さい石はカットしてあるわ。一つ……目をみはるほどすばらしい石があるの」
 人は、特に宝石の話となると大げさに言いたがる。実際の石の大きさはたいてい半分くらいだ。パイパーのこの上なく満足げな表情を見て、イェーガーはため息をついた。相手がほかの誰かなら、その石はおそらく偽物だと率直に言っていただろう。そんな貴重なサファイアであれば、それを裏付ける十分な書類があるのが普通だ。王族とでもつながっていない限り、並はずれた貴重な宝石が先祖代々受け継がれることはめったにない。
 パイパーはイェーガーの疑念に気づいたようすもなく、夢見るような表情でワイングラスを胸に当てた。「本当に美しいの。深く濃いブルーで、穏やかな輝きをたたえていて、とにかくすばらしいのよ。触って、手に持って、見ていたくなるの」
「見たことのない石について意見を言うのはむずかしいが、ぼくがきみなら、あまり期待しすぎないようにするよ」当たり障りのない言い方を心がけた。
「写真があるわ。見る?」
 イェーガーはうなずき、かがんでバッグを取りあげるパイパーを見てもう一度ため息をついた。綿のローブがハート形のヒップの輪郭と腿の裏をあらわにしている。ボクサーショーツがきつくなってきた。彼女の熱くほてった部分に体を沈めたい。
 落ち着け。現実に返る前にもう一度抱けるはずだ。
 パイパーは戻ってきてイェーガーの椅子の肘掛けに座り、携帯電話の画面を見せた。黒いビロードの上に青い石が散らばっている。
 一瞬心臓が止まり、グラスを置く手が震えた。
 イェーガーは画像を拡大し、カットされた石の中でいちばん大きいものに目を凝らした。画質はあまりよくないが、色は息をのむほど鮮やかだ。
「産地はどこだと言ったかな?」もう一度カシミール産だと言ってくれ。きっとそうだ。
「イギリス陸軍の軍人だった母の大叔父から受け継いだの。石はカシミール産だと聞いているわ」
 やった!
 冷静になれ。話がうますぎると思ったときは、たいていそのとおりだ。だが、この色といい、代々言い伝えられてきた産地といい、本物の可能性がある。
「最初の持ち主についてほかに知っていることは?」
「今話したことしか知らないわ。それで、どう思う? 本物の可能性はあるかしら? 持っていったほかの宝石商には、本物じゃないって言われたの」
 当然そう言うだろう。若くてきれいな‘かも’なのだ。買いたたき、転売してぼろ儲けしようとするに違いない。「怪しい業者には近づかないほうがいい」
「これは価値があるものだと思う?」
 パイパーがバランタイン社に来たのは、それを売ろうと思っているからかもしれない。もし本物なら、ぜひとも買いたい。イェーガーはいつものようにそっけなさを装い、さりげなくほほえんだ。興奮すると価格をつりあげてしまう傾向があるからだ。「わからないな。写真だけで判断するのはむずかしい。アメリカに戻ったら、実物を見せてくれ。その写真を僕の携帯に送ってくれるかい?」
「いいわ」
 イェーガーが携帯電話の番号を教えると、二十秒で写真が届いたことを知らせる着信音が鳴った。
「本当は本物でないことを願っているの」パイパーが浮かない顔で言った。
 売却希望者の口からそんなせりふが出るのは聞いたことがない。「いったいなぜ? 莫大な価値がある宝石の持ち主になりたくないのかい?」
「そうしたらそれを売って……ある人を金銭的な窮地から救う義務に駆られるかもしれないからよ」
「数百万ドルの借金を抱えた身内がいるのか?」
 パイパーが鼻にしわを寄せた。「あれにそんなに価値があるの? まさか、冗談でしょう」
「もし本物のカシミール産サファイアなら、それくらいする。ただ、あまり当てにしないほうがいい」
「もしかしたら、最初に提示された金額で売るべきだったのかもしれないわ。一個千ドルだったの」
 全部で一万ドル? イェーガーは気分が悪くなった。冷静さを保ち、過剰に反応しないように努めながらも、一生に一度の大発見かもしれないと心のどこかで思った。もし本物なら、きわめて貴重だ。
「ほかの宝石商ではなく、ニューヨークのぼくのところに持ってくると約束してくれないか?」その石を逃すわけにはいかない。
 パイパーがうなずいた。「わかったわ」
「面会時間を設定して電話するよ」
 パイパーはイェーガーのむき出しの腿の上に片足をのせた。二人の視線が合い、火花が散る。


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