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ナニーと聖夜の贈り物

ナニーと聖夜の贈り物


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アリスン・ロバーツ(Alison Roberts)
 ニュージーランド生まれの彼女は父親の仕事の関係で5歳のときから海外生活を経験した。帰国ののち小学校教師となり、医師の夫と結婚。クライストチャーチに移住後は医療関係の仕事に携わる。夫とスコットランドに滞在していたとき、小説を書き始めた。現在は救急隊員の資格を取るべく訓練中で、執筆の合間には、可能な限り現場に出ているという。

解説

私にはもう、限られた時間しかない。だから、最後で最高のクリスマスを。

「ここで子供たちのお世話をするのが本当に楽しみです」青白い顔のエマがほほえむと、医師のアダムは冷ややかにうなずいた。3年前の12月に妻に先立たれて以来、この時季はいつも不機嫌らしい。おかげで幼い双子は家族でクリスマスを祝ったことがないという。そんな彼らの屋敷に住み込みのナニーとして雇われたエマは、実は難病の治療が一段落したところで、密かに死を覚悟していた。全力で双子を愛し、懸命に楽しいクリスマスを贈ろうとするエマに怒りを見せるアダムだったが、やがて彼女の優しさに癒やされていく。これが私の人生最後のクリスマスなら、最高のものにしたい。そう強く心に願ったエマは、彼に無私の愛を捧げるが……。

■心を閉ざしたアダムにもう一度生きる喜びを感じてほしいというエマの思いが実り、一家は幸せに包まれます。しかしほどなくエマの病気の治療結果が明らかになり……。クリスマスの小さな奇跡を集めて美しい光を灯したような、可憐なシンデレラストーリーです。

抄録

 今必要なのは決断力だ。母が旅行をキャンセルせずにカナダへ出発できるようナニーを雇うなら、チャンスは今、この一回限り。しかし目の前の若い女性は、どう見ても……まともではない。アダムは目を閉じて大きく息を吸った。
 ギターとバックパックを抱えた姿は、六〇年代から抜け出てきたヒッピーのようだ。鼻のあたりにくっきりとそばかすの散った青白い顔。やせこけた体からは哀れな路上生活の子供のような雰囲気が漂い、たぶん実際の年齢よりかなり若く見えている。そして、あのだぶだぶの服。おばあちゃんのハイヒールをはき、長いドレスの裾を引きずり、足音高く家じゅうを歩きまわっていたポピーを思い起こさせる。
 実に残念だが、彼女がナニーに不向きなのは明らかだ。それでも面接は続けなくては。あとで母と話すとき、いちおう面接だけはしたと言えるように。何しろ母から小声で簡潔に命じられたのだ。
“感じのいい娘さんだわ。雇いなさい”と。
 この音楽好きらしい子供のような娘は、ほんの短い間に、なぜそこまで母に気に入られたのだろう。
「さて、君は動物が好きなんだね?」アダムはなんとか笑みを作って尋ねた。
「はい」彼女は笑みを返した。目はブルー。茶色の巻き毛が明かりの下で赤みを帯びてきらめいている。
「子供は好きかい?」
「ええ、好きです」彼女は熱心にうなずいた。
「子供と関わる仕事をしたことは?」
「学校で音楽を教えていました。それから……それから、クリスマスのイベントで子供たちの相手をしたこともあります。楽しかったわ」
 彼女自身、大人になりきっていないから楽しめたのでは? “きもい”などという言葉をあんなに楽しそうに口に出す大人がどこにいる?
「だがナニーの経験はないわけだ。弟か妹はいるかい? 友達に、幼い子供のいる人は?」
「い、いません」彼女の笑みは消えかけている。
「車の運転はできる?」
「ええ、バイクの免許も持っています」
 この子供のような女性がパワフルな大型バイクにまたがる姿を想像すると、なんだか落ち着かない。
「実は大型免許も持ってるんです。一度、バスの運転手をしたこともあって」
 それを想像すると、ますます心配になる。この女性には、バスの大きなハンドルをまわす力さえなさそうなのに。あるいは彼女の腕が華奢に見えるのは、大きすぎるセーターのせいだろうか。
「料理はできるかい?」
「ええっと……レストランで働いたことはあります。でも仕事は――」
 アダムはかぶりを振って話をさえぎった。「エマ、年はいくつだい?」
「二十八歳です」
 なんだって? 僕と二、三歳しか違わないのか? アダムは唖然としたが、肝心な質問は忘れなかった。「今までに経験した仕事の数は?」
「さあ、わかりません。かなりの数です。パートタイムや短期の仕事が好きなので。この仕事も、そこに惹かれました。ほんの二、三週間でしょう?」
「ああ」だが短期間だからといって、責任感のない人間や信頼できない人間を雇いたくはない。
 急場しのぎの臨時雇いではなくて、永続的な雇用を考えるべきだったかもしれない。だがクリスマス直前に新天地へ引っ越して新たな職に就きたがる人がどれくらいいるだろう。しかも、スコットランド奥地の小さな村に引っ越したがる人が。
 母は明日早朝の飛行機に乗るために、今夜エジンバラへ車で行く予定だ。もし思いきってエマを雇わなければ、母は旅行をキャンセルし、新しい孫の誕生に立ち会えなくなる。母は惨めな気分に陥り、僕はやましさを覚えるだろう。子供たちは家庭内の張りつめた空気を感じとり、クリスマスが台なしになる。どうせここ数年、僕はクリスマスに喜びを見いだせないが、今や自分より子供たちが大事だ。
 エマはばかげた言葉でポピーを笑わせた。楽しげにくすくす笑う娘の声が、頭のどこかでまだ心地よくこだましている。それだけで、エマがナニーに不向きだというアダムの失望感は和らいだ。
「そう、ほんの二、三週間だ」彼は声に出して言った。あきらめと苛立ちのこもった声だった。さほど悲惨なことにはならないさ。ナニーが必要なのは、僕が患者を診ている間だけだ。「よし、決めた。エマ、君に頼むことにするよ」
 エマは驚きに目を見開いた。「でも……ほかの応募者の方たちの面接はしなくていいんですか?」
「君が最後だったのさ」そして最初でもある。だがわざわざ知らせる必要はない。「さて、戸締まりをして出ようか。荷物はこれだけかい? それと、クリスマスの時季をここで過ごすことになるわけだが、君の不在を寂しがるご家族はいないんだね?」
「ええ」エマはうつむいて視線をそらした。
 彼女は気持ちを読みとられたくないのかもしれない。クリスマスには、つらい思い出がいろいろよみがえるのかもしれない。僕と同じように? 彼女も、家族の集まる善意に満ちたこの季節が来ると、悲しみと怒りがさらに深まるのだろうか。そう考えると、だぶだぶの服を着た青白い顔の見知らぬ女性に、一瞬、奇妙な親近感を覚えた。
 アダムはかぶりを振って、わきあがる迷惑な感情を振り払った。気遣わなければならない相手なら、すでに多すぎるほどいる。もう一人増やすのはまずい。エマを雇うのは、少しの間、僕の生活を楽にしてもらうためだ。さらに複雑にするためではない。
「遅くなってきた。家へ帰ろう」彼はてきぱきとパソコンの電源を落とし、明かりを消した。


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