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つらい別れ【ハーレクイン文庫版】

つらい別れ【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

やむにやまれぬ事情から別れたウィルこと、リンガード伯爵が住む屋敷へ、フランセスカは車を走らせていた。半年前から、正体不明の不気味なストーカーにつきまとわれて、怯えを感じた彼女が頼れる先は、元夫のウィルしかなかったのだ。5年ぶりに見る皮肉めいた彼の表情は、相変わらず魅力的で、胸に封印していた恋心をたやすく揺さぶり起こす。だが、恋愛絡みの相談と誤解され、突き放されたうえに、ウィルには既に再婚話まで持ちあがっているという。彼の幸せを祈り、フランセスカは気持ちを押し隠して去るが……。
*本書は、ハーレクイン・クラシックスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 彼が戸口から下がると、フランセスカはほっとした様子で居間へ入っていった。ヒステリーを起こしかけているようにも見えた。だが、ウィルは知っていた。彼女はそれほどやわではない。つねに自分の感情をコントロールできる人間なのだ。
 ウィルはためらった。話し合いは避けられないとしても、今夜は彼女の相手をしたくない。だが、話し合いを明日に延ばせば、彼女を追い出すのも遅れる。十一時にはメリット一家を迎えに行かなくてはならないし、明日の朝は忙しいのだ。
 両手を上着のポケットに突っ込み、ウィルは渋々、彼女の後に続いた。ただし、居間のドアは開けたままにしておいた。彼には隠しだてをしなければならない事情はない。もしフランセスカのほうにあっても、それは彼の知ったことではなかった。
 フランセスカは暖炉に一番近いソファの端に腰かけた。暖かい夜なのに。ウィルは面食らった。確かに居間の中はひんやりとしているが、スーツを着ていれば寒くはないはずだ。だが事実、彼女は寒そうに見えた。丸めた背中がそれを物語っている。彼女は紅茶のカップを手に取ったが、サンドイッチには目もくれなかった。
 居間はアビーの基準に照らせば広い部屋ではなかった。暖炉の熱に我慢できなくなり、ウィルはネクタイの結び目を緩め、シャツの襟を開けた。本当は上着も脱ぎたいところだ。だが、この状況を受け入れているとフランセスカに思われたくはない。だから彼は上着を着たまま、暖炉を間に挟んだ向かいのソファの背後に突っ立っていた。
「座らないの?」フランセスカは両肘をスカートの膝にのせ、手のひらにティーカップを包み込んだ姿勢でちらと視線を上げた。顔に生気がなく、瞳には不安の色が浮かんでいる。彼は心ならずも同情を覚え、ソファの前へ回って肘かけ部分に腰を据えた。
「座ったぞ」彼は冷ややかに告げた。「さあ、説明してもらおうか。警告しておくが、僕はゲームをやる気分じゃない。言いたいことがあるなら、さっさと言えよ」
 容赦のない言葉に、彼女の表情が曇った。ウィルは再び同情心にとらわれた。どういう事情でアビーに来たにせよ、よほど切り出しにくい話なのだろう。彼女は皮肉な言葉ではなく、助けを求めているのだ。
「私、ロンドンから車で来たんだけど」フランセスカは思い切って口を開いた。
「そうだろうな」ウィルはつぶやいた。「前庭に止まっていたのは君の車だろう?」
「正確には友達の車よ」フランセスカの返事に、彼は唇をゆがめた。友達? 男だろうか? フランセスカには昔から男友達が多かった。大学時代にルームメイトだった女友達二人とも、ずっと付き合っていたが。「そのほうが気づかれずにすむと思って。彼は……私の車のナンバーを知ってるから」
 ウィルの眉間にしわが寄った。「誰の話をしてるんだ? その……友達のことか?」
「友達? ああ、車の持ち主ってことね」フランセスカは紅茶を飲んだ。「いいえ、あれはクレアの車よ。職場の同僚の」
 ウィルはいらだちを我慢した。「君の車は? 壊れたのか?」灰色の瞳が険しく細められた。「ひょっとしてそれが目的で……」
「冗談でしょう!」フランセスカはうんざりした表情で見返した。「まさかあなた、私が新しい車欲しさにここまで来たと本気で思ってるの?」
「僕に何がわかるというんだ?」ウィルの目つきが険しくなった。「肝心なのは、僕には君の力になる気がないということだ。もし男絡みの相談なら、ほかを当たってくれ」
 磁器のカップが受け皿にぶつかり、褐色の水滴が白いクロスに散った。一瞬、ウィルはフランセスカが唇を火傷したのかと思った。だが、そうではなかった。彼女は泣いていた。細い肩を震わせ、苦痛を訴える子供のように膝を抱き、体を前後に揺すりながら。
 ウィルは愕然とした。知り合って何年にもなるが、フランセスカがこんなふうに泣く姿は見たことがなかった。二人の仲がこじれた時でさえ、彼女は弱音を吐いたりしなかった。たまに彼女のまぶたが腫れている時もあったが、ウィルはそれを寝不足のせいだと思っていた。
 だが、今度ばかりは様子が違った。事情はわからないが、彼女が一人では処理しきれない問題を抱えているのは明らかだ。まさか、不治の病にでもかかっているのだろうか? ふとそんな考えがよぎり、ウィルは突き刺すような痛みを感じた。
 とにかく、この場をなんとかしなければ。彼女の気持を静めなければ。冷静さを取り戻した時、彼女は弱みをさらしたことを後悔するだろう。これは演技じゃない。フランセスカは芝居がかった態度で同情を買うような人間じゃない。
 少なくとも、以前はそうじゃなかった。ウィルは顔をしかめた。彼女と最後に会ったのが五年前。この五年間に何があったとしてもおかしくはない。でも、人の性格まで変わるだろうか? 確かに見た目はだいぶ変化したが、彼女が自尊心をなくしたとは思えない。
「フラン」ウィルは無意識のうちにかつての愛称を使った。「そんなに深刻な話じゃないんだろう。元気を出すんだ。さっきの言葉は本気で言ったわけじゃない」
「本当?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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